86発目 誰もみんな消えてく夢を見た
「な、なんであんたらがここにいるのよ!?」
「なんでと言われると、わからないほどあなたはバカなのかと返したくなりますね。」
麻上会長の顔は学校での優しい表情ではなく、どこか見下すような表情をしている。
「やっぱり、か。」
沖川は悲しそうに見つめた。
「ねぇねぇ、殺しちゃおうよ。この銀髪メガネなんて僕の力なら1発だよ。」
「口のなっとらんガキじゃな。これが劣化版かの。」
大和たちもにらみ合ったまま動かない。
そして、一番気になるのは僕の目の前にいる高尚である。拳銃を構えていない。手を適当にぶらぶらさせているだけである。……なんか、前の空気と比べてやけにいやな空気だ。
パンッ!
「さて。」
突然、麻上会長が手をたたいた。
「私たちが今回受けている任務はグリーンクロスが失敗した場合の事態収束とグリーンクロスの回収、および証拠隠滅。ついでに、桧木さんの回収はあきらめるということを伝えることです。」
「え?」
桧木さんの回収をあきらめる?つまり、桧木さんのことをあきらめるってことか?
「どうしてかな?これまでのグリーンクロスの動きを考えると、桧木さんはものすごい重要な感じがしたんだけど?」
「確かに私たちとしても桧木さんの戦力、能力、技術はほしいものがあります。しかし、ここまで派手に動いてしまってはばれる可能性がありますし、なによりあなたたちと戦うことはこちらとしても避けたいところですから。」
どうにもその言葉の意味はわからないが、こっちと敵対関係は避けたいらしい。
「ということで、取引しましょう。」
「取引?」
「そうです。私たちはここであなたたちと戦うことはしません。その代わりに、ここで起こったことを誰にも言わない、さらにここから私たちが出て行くことを邪魔しない。これでどうでしょうか?」
「は!?何言ってんのよ!?」
「わかった。」
「それなら受け入れる価値はあるかの。」
「ちょっと!?」
茅海はいろいろ言いたいことはあるみたいだが、沖川も大和も受けるつもりらしい。
「なら、うけてもらいますね。」
「そうだね。」
「わかりました。では、超!行くわよ!」
「は、はい。わかりました。」
超も腑に落ちないみたいだが、沖川が拳銃の構えをおろしてそれに合わせて僕たちもおろした。高尚が影野を回収して階段を下りていくときに麻上会長がこっちを向いた。
「神宮寺 茅海さん。」
「……何よ?」
茅海は不機嫌そうに答えた。
「最後に会長らしいことを言ってあげる。……あなたは何でそこにいるの?」
「は?」
茅海はわけのわからない様子だったが、僕らはわかった。
「このメンバーの中で1人、銃を構えずにいて、その上、状況もわからないまま自分のしたい事だけを言っている。あなたは、授業の実戦で強いだけで本当の実戦ではただの足手まといよ。このメンバーには不釣合い。ふさわしくないわ。」
「なんですって!?」
そこまで言って麻上会長は階段を下りていこうとした。当然、茅海は撃とうとしたが……
「撃たないでね。撃ったら僕は君を撃たないといけなくなる。」
沖川がすでに構えていた。茅海が撃つ速度と沖川が撃つ速度。結果は見えている。
「っ!……くそっ!!」
誰もいなくなったところで茅海は叫んだ。
「なんでよ?何で逃がしたのよ!?」
沖川と大和のほうを見て茅海が叫んだ。大和の目はもういつもの色に戻っている。
「……」
そのまま大和は、倒れた。
「え?」
そして、僕の意識も闇に落ちていった。