80発目 全てがそう嘘なら、本当によかったのにね
意味はあるけど、ネタは続く。
……あれ?
現在時刻は午前2時。まだまだ暗いなか手探りでトイレに行って戻ろうとしたらおかしいことに気付いた。桧木さんがいない。
そこで今日の影野との遭遇を思い出した。……そんなことはないと思う。でも、ありえないわけじゃない。でも、もしかしたら眠れないから散歩に出かけただけかもしれないし、大和たちを起こすほどじゃ、ないよね。
僕は部屋をばれないようにそっと出た。
そして、出たのはいいけど、どこへ行ったんだ?散歩コース……僕は京都には来たことないんだよね。しょうがない。何となくで歩こうか。
それから30分後……
「よし、迷った!!」
超適当に進んだらわけのわからないところに出た。なんか坂を登った気がするし、降りた気もする。ただ、僕の後ろには下り坂があるんだから登ってきたんだろう。こういうのをなんていうんだろう?……ウサギがつかまされた?
カン!
「……なんか打たれたような気が?」
そんなことを考えている場合じゃない!これからどうするかだ!まさか、桧木さんを探してて道に迷いましたなんて言いたくはないけど背に頭は変えられない!!いでよ、携帯電話……真っ二つぅぅぅぅぅぅぅぅううう!!!!
僕の手には無残にも破壊された携帯電話。そういえば、茅海に破壊されていたのを忘れていた。あれ?もしかして僕って本格的に、冗談抜きで迷子?
「……上を向いてあるこーう。涙がこぼれーないよーーうに……」
うん、とりあえず歩こう。な、泣いてなんかないんだからな!!というわけで、上にあがって京都市内を一望してやることにした。そういうわけでなんか受付があったけど、思いっきり開いていたからそこから中に。
「ここは……」
『清水寺』
なるほど。ここが舞台から自殺者が多発したという清水寺か。ここなら僕でも知ってる。……あれ?でも、なんで開いてたんだろう?このごろのお寺ってこんなに不用心なのかな?
「よく来てくれました。」
「!!」
誰かの声がして反射的に柱に隠れてしまった。
「これで、ほかの人には手を出さないでくれますね。」
あれ?この声って、もしかして桧木さんの声?そして、さっきの声は……
「約束通り、あなたの件でのあの子たちのことはなかったことにしといてあげます。」
やっぱり、影野の声だ。まさか桧木さん、自分を売ったのか!?
「こうなったら……」
大和からもらったスタン弾を入れた拳銃を構えた。
3,2,1……今だ!
パンッ!
柱から出てすぐに射撃。狙いは正確にできなかったが、大筋は大丈夫なはず。
「おっと。」
こちらに気付いていたのかあっさりと後ろに避けてよけた。そして、僕も気付いた。もう1人ここにいたことを。
「ショウ!?」
「茅海!?」
向かいの柱に隠れていたのは茅海だった。ほぼ同じタイミングで撃ったらしい。銃弾が交錯したのがわかった。
僕らはすぐに桧木さんを守るように寄り添った。
「何であんたがここにいるのよ?」
「僕は桧木さんが見当たらなかったから適当にあるいてたらここについたんだよ。そういう茅海こそなんでここにいるのさ?」
「あたしは……どうでもいいでしょ。」
うん。これはおそらく僕と同じ、桧木さんを探しにきたのはいいけど道に迷って偶然ここにたどり着いたパターンだな。
「あんたとは違うのよ。」
「だったら説明してよ!!」
「そんな義務はないわ。」
……もういいです。
「さすがに私の放置時間が長いんじゃないですか?」
ああ。そういえば忘れてた。
「まったく。やっと仕事がおしまいになると思ったんですがそんなことはなかったみたいですね。本当にすべての物事が思い通りに行かないのだからむず痒い。」
「私たちをここに呼んだのはあんたなのに?」
「え?」
その茅海の言葉をきいたときに一瞬、影野の表情が揺らいだのがわかった。まさか本当に?
「何のことでしょうか?」
「とぼけるんじゃないわよ。ここに入ってくるときになんか視線を感じたわよ。どうせ部下でも配置してて、私たちが入った瞬間に封鎖でもするように指示してたんでしょ。」
「え!?ど、どういうことですか!?」
「……まったく、穏便に終わらせたかったのですがね。」