79発目 眠れないわけではない
タイトルはネタです。
大阪から京都まで本当に1時間くらい、いや、下手すると1時間かからなかったんじゃないだろうか。
「正確には48分だね。」
「沖川、何でお前はめんどくさがりなのにそんな時間だけは測ってるのさ?」
「もちろん、大阪まで逃げれる時間を調べたんじゃないか。」
こいつはどういう状況になったら京都から大阪まで逃げるんだろうか?
「宿は京都の中心部に近いところをとっておいた。観光は余裕があったら明日少しやってやるからすぐに宿に向かうぞ。」
それはもちろんなのだが、桧木さんの様子が気になる。もちろん、僕だってこんな状況にみんなを巻き込むことになったりしたら、罪悪感で暗くはなるかもしれない。しかし、それにしても様子がおかしい。移動中もボーっとしてるし、話しかけてもすぐに上の空になってしまう。
「大和……」
「わかってる。もしかしたら敵との接触があった可能性はあるだろうな。敵が危険を冒してまで侵入してきたんだ。なにかあってもおかしくないだろ。」
移動中、大和に細かい説明をした。しかし、大和はそれほど問題じゃないと言った。なんでも、あそこは外部からの侵入も当然難しいが、銃などの武器を持って入ることは実質不可能らしい。
たしかに、影野と会ったときに不気味な雰囲気はあったが、拳銃を構えてきたりすることはなかった。きっとあのときは丸腰で来てたんだろう。
それこそ何もせずに帰ったわけがない。
そして、僕が一番気になったのは大和の最後のセリフ。
「ま、それが人間を超えた何かだったらもしかしたら持って入れるかもしれないけどな。」
ただの比喩、大和なりの冗談だろう。しかし、ものすごい気になる。なぜかわからないが、ものすごい気になる。まさか、あそこにそんなレベルの人間が侵入した?……ありえない。ありえないよ。
「ついたぞ。」
そこは民宿。大通りに面しているが、趣があり、結構前から立っていたような建物。何となく京都っぽい建物である。
「ここ?」
「ああ。部屋はぎりぎりだったから大きめの部屋1部屋しか取れなかったが、その辺は勘弁してくれ。」
つまり男女同じ部屋か。まあ、こんな緊急事態なんだ。少々の問題は無視すべきだろう。
そして僕たちは宿に入った。入ったらすぐに風呂に入ったりして疲れていたのかみんな眠った。
そして午前2時、世界が急速に変わる。