77発目 主人公だからいいんだよ
「え?」
小さい声で疑問をつぶやいた。ここには僕以外隠れてないはず。そのはずだった。
「あんた、何者?」
「お初お目にかかります。私の名前は影野 衛です。この前は部下が世話になりました。」
この前?もしかして、前回の攻撃!?
「まさか、あんたがグリーンクロスのナンバー1!?」
「ご明察です。」
こんなところで!?そもそも、セキュリティはどうしたんだ!?
「さて、桧木さんは連れていかさせてもらいます。」
えっと、位置的に見ると僕の右側に茅海たちがいて、左側に敵がいるわけだから……。
「……」
「早く渡してください。私は穏便に……」
いまだ!!
バンッ!!
微妙に見えていたところに左側からの影が見えた瞬間に思いっきり蹴り開けた。思ったよりも重かったからたぶん誰かがいたんだろう。
「止まれ!」
「あ、あんた……」
「いいから!!」
影野はこれだけ近くにいるのに変な感じしかしない。なんだ、これは?本当に人間なのか?
「……まったく、そんなところに人がいるなんて思いませんでしたよ。気付かずには入れたからって警戒を怠ったのは私の職務怠慢ですね。部下に怒られてしまいそうです。」
ゆっくりと僕のほうを見た。その黒い瞳はどこまでも黒く見えた。
「君にはやられましたよ。この状況から立て直すのは厳しそうです。私はおとなしく引かせてもらいますよ。」
「帰れ帰れ!もう一生かかわるな!!」
「それは無理でしょうね。」
それだけ言って消えてしまった。
「まったく、なんてやつだ。」
「そうね。」
「それじゃあ、僕はこれで。」
「まあ、待ちなさいよ。」
茅海にがっしりと腕をつかまれた(たぶん肩をつかみたかったんだろうけど位置が高すぎてつかめなかったんだと思う)。
「まだあんたがここにいる理由を聞いてないわよ。」
「いえいえ、些細なことなので説明することなんて何1つありません。ですので僕は早々にかえらさせてもらいます。いや、僕は逃げ回ってるから、また逃げさせてもらいます。」
「だから……」
「じゃあね!!」
僕はダッシュで窓から脱出する。
「あ!待ちなさい!!」
「チーちゃん、その服装で外に出ていいの?」
「え……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
茅海はやっと気付いたらしい。そしてなんか言ってる。たぶん、あの服を見たから殺すみたいな内容だと思う。……女子寮には当分近づかない方針で行くべきかも。そして、何かを忘れているような……
「いたぞ!!」
……OK、今思い出しました。さて、何時まで逃げればいいかな……