73発目 いや、気にしろよ
「桧木さん!」
結構見つけるまで時間がかかった。だってグラウンドの端っこにいるんだもん。気付くわけないよ。
「あ、どうしたんですか?」
「えっと、どうしたの?」
「お墓を作っていたんです。」
「お墓?」
確かに桧木さんの前に木の十字架が立っている場所があった。
「……猫か何か?」
時々この学校には何も知らない野良猫が入ってきて、流れ弾が当たって死ぬことがある。もしかしたら、この辺にそんな猫がいたのかもしれない。
「いえ、違います。」
?だったら鳥かなにかな?
「今日使ってしまったグレネードのです。」
「……え?」
「私が今日使ったグレネードは1ヶ月くらい前から仲間になってくれたとても、とても勇敢な戦士でした。なのに私は、あの人を無駄死にさせてしまって……」
……えっと、ここは泣くところ?桧木さんの説明を受けたらそうかなって一瞬思ったけど、グレネードだよ?爆発するために生まれてきたものだよ?でも……この世に生を持って生まれてきたのに、敵を1人も倒せなかったのは無念で仕方ないかも……
「……安らかに眠ってください。」
僕も手を合わせた。
「ところで、都築君はどうして私を探していたんですか?」
「えっ?」
そういえば、反射的に探したけど、僕は特別桧木さんに用事があったわけではない。いや、元気付けたいっていうのはあったけど、それをわざわざ言うのはおかしいよね。
「えっと……学校を案内してあげようと思って。」
「え?本当ですか?」
「も、もちろんだよ!」
とにかく、どうやって元気付けるかは後回しにして一緒に話してみよう。
「なら、茅海さんを呼んでもいいですか?」
「え??」
まさかの茅海登場。これはぜんぜん予想してなかった。
「えっと……」
「もしかして茅海さんが殴ったり撃ってくるのが怖いんですか?」
「いや……」
「大丈夫ですよ。むしろ、呼ばなかったときのほうが怖いですよ。」
「いや……茅海は大和や沖川に任せればいいんじゃない?あいつらならうまくやるだろうし。」
正直、桧木さんを元気付けたいのに茅海を呼んだら、茅海に突っ込みを入れたりして、ぜんぜん桧木さんのことを気にできないような気がする。
「……(ジッ)」
「え?ひ、桧木さん?」
「……(ジッ)」
突然、僕の瞳を見つめだした。身長差はあるから距離はそこまで近くないが、まったくぶれないから結構きつい。桧木さんの黄色い瞳に飲み込まれそう……
そういえば、茅海ににらまれることはよくあるけど、それとはぜんぜん違う。何が違うかはよくわからないけど、違うのはわかる。
「……じゃあ、呼びましょうか。」
「何で!?」
僕の言葉を無視して電話をかけ始めた。桧木さん、だんだんこちら側に近づいてきてない?