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SHOT GUN!  作者: ヒッキー
修学旅行編
73/109

72発目 シリアスムードなんだけど

 「ねえ、大和。」


 どこかに行こうとする大和を捕まえた。ほかのみんなはすでに部屋から出ている。


 「どうした?」


 「さっきから桧木さんの様子がおかしかったんだけど。」


 ずっと大和の説明の間そわそわしてたし、時々発言しようとしたけどやめるみたいな動作があった。たぶんあんなことがあってどうしたらいいのかわからないんだろうけど……


 「当たり前だろ。グリーンクロスの襲撃はあの娘が原因なんだからな。」


 「……え?」


 今なんて言った?


 「まさか気付いてなかったのか?お前以外の全員は気付いていたと思うぞ。あれに追われていたのは俺たちじゃない。桧木1人だけだ。」


 「ちょ、ちょっと待って!何でそうなるの?もしかして何かの間違いじゃ……」


 「信じたくないのはわかるがこれは紛れもない事実、のはずだ。あいつらがあの場所で待ち伏せしていたこと、桧木が実戦で茅海と戦った後ずっと休んでいたこと、そして、視線に気付いたら警告をしてわかったらすぐに手榴弾。あんなに手際のいい人間が追われたことないなんて言ったらそれこそバカだ。」


 「で、でも……僕たちだって、茅海もいるし……」


 「言っただろ。あいつらだって、バカではないんだ。旅行先、しかも修学旅行みたいな場所で襲うことを考えるわけがない。しかし、桧木だけは違う。修学旅行から高校に編入するなんて普通じゃできないし、それを予想するはずもない。そして、俺たちという邪魔なものがついてきてしまった。しかし、あのおじの家というタイミングを逃せば、この後人目のつかないところに行かれない可能性もある。ゆえに、俺らもどうにかしつつ桧木を殺すなり捕まえるなりしようとしたんだろう。」


 そうなるとわかるけど、やっぱり不足してないか?茅海だって4月にはさらわれかけたわけだし。


 「それで正解です。」


 「え?」


 いつの間にか扉の前には桧木さん。


 「私はあなたたちに会う前から追われています。しかも、2ヶ月ぐらい前から。」


 「そうか。」


 「私をどうしますか?ここから出て行けというなら出て行きます。」


 「そ、そんなこと……」


 「わかっています。」


 さっきのようなおどおどした感じはない。今は凛としており、一本の芯が通っているようだ。


 「あなたたちならどこにも行かなくていいといってくれるでしょう。でも、それじゃあダメなんです。そんな感情に任せたようなものじゃダメなんです。だから滝川くんに聞きます。私にどうしてほしいですか?」


 「そうか……ならこの学校の観光でもしとけ。」


 「……え?」


 「俺はさっき言ったろ。この学校内にいるなら何をしといてもいいと。この学校のやつらもいきなりお前に勝負を挑むことはないはずだ。」


 「は、はあ。」


 なんか拍子抜けといった感じだ。


 「話はそれだけか?」


 「は、はい。失礼します。」


 桧木さんはそのまま出て行った。


 「……ここを選んだ理由だが、もう1つある。」


 「え?」


 「この学校は外から私闘を見られないように高めの塀を設置しているし、セキュリティレベルも高い。何より、出入り口が校門しかないのも重要だ。」


 そういえばここは知られたくない情報が多いから外からは簡単に入れないようになっていた(なぜか僕たちは普通に入れたけど)。大和は昔、ここをある単語で表現していた。要塞。外から攻めづらい、けど、中に入ってしまえば結構適当なこの学校をそう呼んでいた。


 「……ん?でも、何で入り口が1つなのはなんでいいの?」


 「簡単だ。入りにくいっていうのは出にくいと同意なんだ。つまり、ここなら桧木が逃げ出すこともない。」


 「逃げ出す?ちょっと待って!何で桧木さんが逃げ出す可能性を考えてるの!?僕たちに本当のことを言ってくれた桧木さんが僕たちをおいて逃げ出すわけないよ!!」


 「落ち着け!……俺はそっちのことも考えているが、もっとやばいことを考えている。」


 「やばいこと?」


 「……桧木が自分を売ることだ。」


 「……え?」


 一瞬、思考が停止した。


 「そんなことをするとは思えないが、もし敵から自分の身を差し出せば俺らだけは助けるといわれたらどうする?まだ知り合って2日しかたってない。だからこそ責任を感じる。……俺ならそう考えるということだがな。」


 大和の表情はいつもより暗かった。ゆっくりとグラウンドで暴れている茅海やそれを応援している逢瀬、戦っている一ノ瀬を見ていた。


 「なあ、桧木への対応はお前に任せていいか?」


 「え?」


 「俺がやるとどうしても打算的に接してしまいそうだ。ここまでわかっていて普通に接することができるのはお前くらいだろ。」


 「大和……」


 「頼む。」


 頭を下げることまではなかったが大和は真剣な声で言った。


 「大和に頼まれなくてもそうするよ。僕も桧木さんともっと仲良くなりたいしね。」


 「そうか。」


 大和はすでにパソコンに向かっていた。こいつは相手によってどれくらいプライドをさらけ出すかを決めているんじゃないだろうか。まあ、いいけど。


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