68発目 ストレス解消に最適ですよ、奥さん
「これってすごいね。」
電子ターゲットが1秒ごとに出ては消えている。かなり難しいからあまり当てれてはないけど、かなり面白い。
「最新技術だからな。ターゲットのホログラムを打ち抜いて当たったかも電子センサーがチェックしてくれる。本物の的を使うよりも何倍も効率はいいんだが、初期投資がでかすぎてなかなか手が出せないらしい。」
「……へえ。」
半分くらいしか理解できなかった。
パンッ!パンッ!パンッ!
そしておかしな点数の人もいた。
「やったー、100点!」
隣の逢瀬は最上級レベル(的が銃弾ぐらいの大きさしかない)で100点。ありえないとか通り越してありえるのかわからないレベルだ。いや、ここでありえてるんだけど。
「これの面白いところは何でもターゲットにできることだ。」
「え?そうなの?」
「ああ。写真とかのデータを用意して、そして中心点を設定すればどんなものでも的にできる。それが人だろうが、物だろうが、極端な話、現実世界に存在しないフィクションのキャラクターでも設定さえすれば問題なく撃てる。」
パンッ!パンッ!
「あんな感じにだ。」
「いや、茅海!!何で僕を撃ってるの!?」
「なんとなくイラついたから。」
「そういうのが昨今のいじめ問題につながるんだよ!!そうだよね、大和!?」
「お前らのじゃれあいといじめ問題を一緒にしてやるな。」
「ちょ、ちょっと!!じゃれあいって何よ!!」
「そのままの意味だ。」
「っ!!」
パンッ!パンッ
「ちょっと!!腹いせに僕を、いや、僕型の的を撃ちまくらないでよ!!」
そんな騒がしい感じで3時間ぐらい汗を流した。
「そろそろ終わりだ。」
大和の言葉でみんなが止まった。
「もうちょっといいじゃないの。」
やっぱり茅海はやり足りないようだ。まあ、すっごい楽しそうだったしなあ。
「この後の予定もあるからな。それにほかのやつらはだいぶ疲れてるぞ。」
そう言って僕たちを指した。確かに逢瀬も僕も練習をやめていた。沖川は……ずっと寝てた気がする。こんなうるさい中でよく寝れるな。
「シャワー浴びて13時にはここを出るぞ。この後の予定を遅らせすぎるとうるさいしな。」
うるさい?誰かが希望してやった予定なのだろうか?一応、みんなにアイコンタクトを送ってみたけど誰の反応もなし。この様子だと誰かが希望したわけじゃないみたいだ。だったら大和の希望かな。
僕らはすぐにシャワーを浴びた(男の時間×3=女の時間)。そんなわけで体のほてりが完全に抜けたってのに暇だ。
「はあー」
「ふふっ、大きなため息ですね。」
「……あれ!?」
横には桧木さんが笑って座っていた。
「あれ!?なんで!?」
「忘れたんですか?私はずっと上で休んでたんですよ。」
「……そういえばそうか。」
今更ながら桧木さんの姿を見てみるとかわいいな。ちょっと水色っぽい髪はきれいだし、それをおろしてるのが可愛い。どこかの誰かが小さい子にはロングヘアーは似合わないって言ってた気がするけどそんなことないと思う。
「どうしたんですか?」
茅海と比べても優しいし、おとなしいし、いきなり発砲してこない。こういうのが女の子っていうんじゃないだろうか?いや、それ以前に僕の周りには超人ばっかりでこういう普通の女の子のことが欠落してたんじゃないだろうか?
「あの……」
「あ、ごめん。何かな?」
「後ろ……」
「え?」
後ろを見るとそこには出てきた茅海。なんかシャワーを浴びたせいか、顔が心なしか赤いですよ。そしてなんか睨んでるように見えるんですけど。……気のせいですよね?
まあ、今回は(心の中とはいえ)茅海と桧木さんを比べた僕にも非はあるかもしれない。撃ちたいというならば甘んじて受けることにしよう。
「……ねえ。」
「何?」
「……なんでもない。」
「え?」
「なんでもないわよ!!」
なぜかそのまま去ってしまった。銃で風穴が空かなかったことはうれしかったけど、いつもの茅海っぽくない。僕の考えてることだってわかってただろうし。
「13時だ。そろそろ行くぞ。」
なんかモヤモヤした感じが残ったけど、大和に時間を教えられて僕は荷物を持った。
「ありがとうございました。」
「おう。またみんなでおいでな。」
「喜んで!!」
茅海なら来月には来ると言い出しそうだ。
「おじさん、じゃあね。」
「ああ。」
ん?なんか様子がおかしかったような?……気のせいだよね。
「さて、これから大通りに戻って飯でも食うぞ。お勧めの店があるからそこに行きたいな。」
大和が自分からお勧めするなんて珍しい。
「さて、じゃあさっきの道を……」
「「待って(ください)!!」」