67発目 茅海VS桧木。ちっちゃい戦い
「では、ルールはヒッティングバトル。ペイント弾のあたったほうが負けだ。」
大和が審判に入って試合の形式を進めている。
「どちらの拳銃にも問題はなかった。」
そこで茅海の表情が見えた。いつも通りの表情だ。いい集中をしてるんだと思う。そして、振り返った桧木さんを見てわかった。あの人は強い。拳銃を持って誰かに向かうことに慣れている。まるで襲われているのに慣れていて、それを防衛するための目だ。
「……ファイト!」
パンッ!
桧木さんの銃撃。しかも完璧に茅海をとらえている。あれだけの速攻で完璧にとらえるなんて。たぶん固定銃撃のほうが得意なタイプかな。
「あまい!」
しかし、そんな馬鹿正直な銃撃に捕まる茅海じゃない。横でよけると、いつもの機動力で桧木さんを混乱させにかかった。
「えっと……」
しかし、それをほとんど桧木さんは追いかけていない。完全に中央で止まったまんまだ。
パンッ!パンッ!パンッ!
そんな隙を茅海が逃すわけがない。3発撃ち込みにかかった。
「きゃっ!」
しかし、それは桧木さんの小さな悲鳴とともによけられた。こういう実践に慣れてる感じはないが、実に丁寧かつ確実に攻めてくる。そして、ブレが少ない。
「くっ!」
茅海はやりにくそうだ。タイプは会長と一緒なのに、ちょくちょく予想のできない動きが入ってくるせいで茅海は捉えきれないし、しかも隙が少ないせいで狙いにくい。そのせいで茅海は大分きつい状態になっていた。もともと、茅海はあのスピードで翻弄して隙を作らせるのが得意なスタイルだ。あれじゃあ、その得意なスタイルも出しにくい。
「ねえ、大和。あの状況の攻略法にはどんなのがあるの?」
「簡単なのはミスを待つパターンだろ。逢瀬ならともかく、あのスピードをそう何度もとらえられるはずがないからな。」
パンッ!
言ってるそばからミスが起こった。茅海に当たらないコースだ。この隙を待っていたように茅海は撃ちにかかった。
パンッ!
「くっ!」
しかし、実際に撃ったのは桧木さんのほうだった。わざとミスをして隙を誘ったらしい。茅海は間一髪のところでよけた。
「すごいな。あのスピード相手にミスする気は全くなしか。」
……今気付いたけど、大和は審判なのになんでバトルフィールドの中にいないんだろうか。
「がんばれー!!チーちゃーん!!」
逢瀬の声援もむなしく、茅海劣勢が続いた。
しかし、事態は一瞬で変わった。突然、桧木さんの動きが悪くなったのだ。
パンッ!
今度はわざととかじゃなかったらしい。ペイント弾が右肩で炸裂していた。
「勝負あり。勝者、神宮寺 茅海!」
「えへへ、負けちゃいました。」
「どうしたのよ?いきなり動きが悪くなったじゃない。」
「スタミナ切れか?」
「はい。どうにか耐えていたんですけど、さすがにもう無理でした。」
よく見たら桧木さんは汗びっしょりだった。
「私はシャワー浴びてきますね。皆さんも終わったら浴びてください。おじさんには私から許可をもらっておきます。」
そういうわけで練習許可をもらった。
……なんとなく当てられたことに不満(詳しくは感想へ)