65発目 やっぱりいつもの茅海のようです
「え?」
「いつも撃ったりしててどうにかなってたし、ちょっとストレスがたまってたから本気で殴っちゃったけど、わかってなかった。翔だって痛みを感じて、気絶もすることを。」
うん。それは僕を人間としてみてなかったってことかな?
「でも、わかったの。翔だって殴れば痛がるし、気絶もするって。」
なかなか感動しにくいけど、ついにわかってくれたんだね!
「これからは拳銃を使って無傷か一思いに殺すことにするわ!!」
「うれしくない!!そこは、これからは暴力はやめる、じゃないの!?」
「それを取り除いたらあんたの存在価値がなくなるでしょ!!」
「僕の価値はストレス発散のみですか!?」
「それのみだろ。」
「それのみだね。」
「そしてお前らはいつ帰ってきた!?」
扉の開いた音もしなかったのに入り口近くに大和と沖川がいた。
「堂々と入ったぞ。」
「dodoだと!?」
なんてこった!つまり僕はこの本拠地への侵入をあっさりと許してしまったわけか!?
「それよりもさっさと風呂に入って寝とけよ。」
「うん、わかったよ……って、違う!!」
思い出した!こいつらが僕にやってきた所業を!!
「ちっ!さすがに無理があったか。」
「いや、僕も何のフォローもしないで見てたのが悪かったよ。」
「どういうつもりだ!!」
「翔、考えてみろ。今日の神宮寺はあれだけつれまわされて、しかもあんなはずかしい格好をさせられていた。そのときは混乱していてどうにかなっていたが、もし正気に戻ってすべての記憶がはっきりしたらどうなると思う?もちろん、誰かに憂さ晴らしするしかないだろ。」
「なるほど。そして大和たちはそれを受けるのがいやだったから僕に任せたわけだ。」
「そういうことだ。」
「大和ぉぉぉぉおおお!!!」
結局はめようとしたわけか!!
「落ち着きなさい!」
メキッ!
「ふごっ!?」
顔に強烈な回し蹴りが飛んできた。ちなみに、今日の茅海はズボンだったので下着が見えることはなかったが、その分容赦なく蹴られた気がする。
「あ、ごめん。銃で撃つべきだったわね。」
「謝るところが違う!!」
「落ち着きなさい。そして、ちょっと携帯貸して。」
「え?はい。」
確か茅海は携帯電話を持っていなかったと思うが、誰かに電話するんだろうか?でも、ここならば電話ぐらいどこでも借りれる気がするんだけど。
「これがね。」
茅海は携帯をいろんな角度から確認して中を開いて待ち受け画面に出ているカレンダー時計をじっと見つめていた。そしてあきらめたように携帯を開いたまま腰の高さぐらいで地面と並行に構えて……
「えいっ!」
メキッ!
「って、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!???」
いきなり僕の携帯を真っ二つに叩き割った。
「な、な、な……」
完全に中央で割れた携帯。おそらく復活は不可能だろう。
「何で!!!??」
「あんたが私の、その、えっと……今日の写真を携帯電話のカメラで撮りまくってたでしょ!!!だから、それの消滅よ!!!」
「こんな強引な消滅ありですか!?」
「しょうがないわよ!消し方わからなかったんだもの。」
「だったら僕じゃなくてもいいから誰かに渡してやってもらってよ!!」
「あんな写真をこれ以上誰かに見せたくないわよ!!」
しかし、遊びで写真を撮っていた僕にも非がある。確かに本人が嫌がるなら残すなんてするべきではない。そうだ。これは僕に対しての神の裁きなんだ。そうだよね。あはははは……
「そんなんで納得できない!!」
携帯……僕の携帯……
「ねえ、どうにか復活させれない、大和?」
「そんな泣きそうな声で言うな。直そうと思えば不可能じゃないかもしれないが修学旅行中には無理だ。ここまでのものだと足りないパーツや専門の道具がないと無理だろうしな。」
「そ、そっか……」
僕はゾンビのように部屋を出て行った。早く寝よう。そして、すべてをなかったことにしよう……
「……お前の部屋はここだからな。」
「おやすみなさい。」
恥ずかしさも忘れるためにベッドに飛び込んだ。そして僕は夢の中に……
「「風呂に入れ。」」
「……はい。」
こうして僕は風呂に入ってやっと眠ることができた。ああ。明日も楽しみだけど、明日ってどこだっけ?