64発目 今宵の茅海は何か違う
「さすがに今日は疲れたね。」
「まあ、歩きっぱなしだったからな。」
僕たちはホテルに入ってそんな会話をしていた。初日から結構ハードスケジュールとなったから体ががちがちだ。
「それより茅海は大丈夫かな?」
「それは向こうに任せるしかないだろ。落ち着いたころにこっちに来るとは言っていたがな。」
キンコーン!
「うわさをすればなんとやらだな。ショウ、出てやってくれ。」
「あれ?僕?」
大和や沖川のほうが扉に近い位置にいるんだけど。
「俺らは飲み物とかの用意をしとくよ。お前にやらせたらぶちまけそうだしな。」
むぅ、確かに否定できないところはある。
「わかったよ。」
ここは納得して行っておこう。
キンコーン!
「はいはーい。」
扉を開け……
「グフォッ!?」
何かがみぞおちに……
「……よかった、ショウね。これで大和や望を殴るなんてへましたら大変なことになっていたわ。」
な、なぜ僕は問題なしと……
「俺らがそんなへまするわけないだろ。」
「や、大和、謀った……な……」
というわけで、僕の意識は闇に落ちていった。
「う、うーん?」
「あ、目を覚ましましたか?」
目の前には桧木さんの顔。そして僕はベッドの上。……何で僕はこんなところにいるんだっけ?えっと……たしか僕たちは修学旅行にやってきて(中略)そして茅海たちがやってきて、そして……
「あっ!!」
「えっ!?どうしたんですか!?」
「思い出した!大和は!?沖川は!?あいつら罠にはめやがって!!」
「えっと、もしかして5分近くそれについて考えていたんですか?」
ゆっくりと立ち上がり体をごきごき鳴らす。時計を見てみると1時間ぐらいは倒れていることがわかった。まだ腹が微妙に痛い。
「それにしてもすごいですね。滝川君が言うには明日ぐらいにならないと起きれないぐらいのダメージだったそうですよ。」
「僕はそれを与えてきた茅海に恐怖を覚えるよ。」
体がある程度動けるようになったところで周りをよく見てみる。……たぶん僕たちの部屋だ。でも、桧木さん以外はいない。
「そういえば茅海さんは大変だったんですよ。」
「え?何が?」
「自分で殴っちゃったのにものすごい慌てふためきようで、しかも生きてるか確認するためにもう1回殴るって言い出したぐらいなんですよ。みんなで止めましたけど。」
いや、さすがにもう1発殴られてたら昇天してたかも。それにしてもあの茅海が僕の気絶ぐらいであわてふためく……あんまり想像できないや。いっつも本気で撃ってくるし。
「えっと……ショウは起きた?」
おとなしそうな声で茅海が入ってきた。
「はい。そこでストレッチしてます。」
「どうしたの、茅海?」
「えっと、その……ごめん!」