55発目 相手の瞳に映る自分を見ることすら拒絶した
サブタイトルに大きな意味は存在してません。
「それでは、四十万高校、滝川 大和 対 乍瀬学園、六車 蓮矢。ファイット!!」
大和も相手も最初は距離を大きくあけた。どちらも様子見という感じなんだけど、大和はわからないからって理由っていうのが容易に想像がつく。でも、相手はわからない。そのせいかなんとなく不気味に感じる。
「……やりにくいな。」
大和がいやそうな目をしている。正直、攻めてきてもらって情報を手に入れたかったんだろうが、相手が攻めないのにいらだってる感じだ。でも、大和はそこできれない。それが大和のすごいところだ。
「なかなか攻めてこないな。」
「戦い方は自由です。」
「そうだな。」
パンッ!
大和が様子見といった様子で1発撃ってみた。しかし、それはあっさりとかわされてしまった。
「これならどうだ?」
パンッ!バンッ!
両方の銃から飛んだ銃弾が1つは相手の足元、もう1つは相手の体のすぐ近くへ向かって発射された。これはきわどいが、たぶん動かなければあたらない。
「……」
敵は動く気配はない。銃弾は相手の股下と右横を抜けていった。
「これでも駄目か。さすがに八方塞がりな感じがするな。」
「様子見なんて思って異常に狡い人なんだ。」
「てめえらが全然戦わないせいでこっちは戦力分析ができねかったんだよ。」
「それは運が悪かったですね。」
また大和たちの動きが止まった。それにしても敵はまったく攻めてこないし、かなり不気味だったりする。というか、何となく時間稼ぎなのかな?
「それなら、こっちも攻めます。」
相手は一気に大和と距離を詰めだした。どうやら距離を詰めて得意な距離に身を置きたいようだ。
「さすがにさせないぞ。」
大和は両手で3発の銃弾を撃った。今度は斜めに3発、ちゃんと当たるしうまくよけないとどれかにあたってしまうような弾道だ。
「ふ!」
しかしそれをちょっと高めの弾道で飛んでいた側に身をかがめながらよけた。たぶん1番正しい判断だろう。
「……すごい。」
さすが副将に選ばれただけある。
「って、さすがに大和やばくない!?」
実は大和は近距離戦があまり好きじゃなかったりする。
パンッ!
相手から撃たれた銃弾をこけることですんでのところで大和はよけた。
「遅い!」
「ちっ!」
相手の判断が早い!?
パンッ!
発砲音。もう駄目だと思ったらそこに映っていたのは相手の拳銃が空を飛んでいた。
「な……」
パンッ!パンッ!
ここぞとばかり大和の追撃。しかし相手はそれをギリギリでよけ、拳銃を拾いながら大きく後ろに下がった。
「な、なんで?」
「あいつが相手の拳銃を撃てる体勢だった気はしなかったんだけど。」
「あれは多分、地面に跳弾させて狙ったんだと思うよ。」
「「は!?」」
そんなのって逢瀬みたいなのじゃなくてもできるの?
「地面は結構平らだったし、多分何となくは狙えたと思うよ。でも一番驚いていたのはヤマくんじゃないかな?」
「まさかうまくいくとはな。」
確かに大和もちょっとは驚いているみたいだ。
「さて、さっき仕留められなかったのは残念だが、どうする?もう勝てないかもな。」
「……さい。」
「なんだ?」
「うるさいうるさい!!黙れ!!モノ言うな!!死ね!!」
突然相手が叫びだしたのが控室にも聞こえた。何事かと思って観客席も一気に静まり返ってるし、大和はあまりの豹変ぶりに警戒して構えをとっている。
「てめえなんか俺の本気で一瞬で殺してやる!!」
そう言って髪をかきあげた。そこに見えた片方の目は血のように赤く輝いていた。
「あれはまさか……」
「ショウ、あんた知ってるの!?」
「イノ○ーター!?」
「いや、写○眼だろ。」
「なによそれ!?」
「確かどっちも40年くらい前に流行ったアニメや漫画のネタだったと思います。」
「まぎらわしいのよ!!」
「グフォッ!」
茅海からのバックアタックは見事、後頭部に直撃した。
「さ、さっきのは効いた……」
「落ち着いて、チーちゃん!このままだとショウ君のこの後の試合に影響が出ちゃうよ!」
「ちっ!命拾いしたわね。」
僕もこんな冗談で死にたくありません。
「なんか思った?」
「思うことすら許されないの!?」
「落ち着きなよ。試合はまだ続いてるんだよ。」
おお!さすが沖川。ナイスフォr
「殺すならいつでも殺せるでしょ。」
「てめぇが死ね!!」
「あほ!」
「グフォッ!」
またヒット。
「落ち着いて試合を見るわよ。」
一番落ち着いてないのは茅海……
「なんか思った?」
「いえ、なにも。」
これ以上逆らうのはやめとこう。
それにしても大和の様子が気になる。相手の目をじっと見て動かない。もしかしたら大和はあの眼について心当たりがあるのかもしれない。博識の大和が知っていてもなにもおかしくない。
「……おまえはその眼をどこで手に入れた?」
「さあ。忘れた。」
大和の動きがない。それほどやばいのか、あの眼は?
「動かないの?」
「動いたって結果は一緒だ。そうだろ。」
「そうかもね。」
パンッ!
「な!」
それは一瞬、刹那、瞬きしていたら見逃してしまうようなほんの短い時間。相手は大和の視界から一気に外れて胸に銃弾を撃ち込んだ。
「勝者。乍瀬学園、六車 蓮矢!」
高らかと勝利宣言がされた。