51発目 もうちょっとはシリアスムードをお願いします
「よろしくね、真綾ちゃん。」
「よろしくです!」
2人の出会いはなんとなくいい感じのように見えるが、お互いになんともいえない空気をまとっていた。これが実戦1位同士の戦いだということだろう。
「できれば大和のほうがよかったかな?」
「いえ、倒すならあなたのほうがいいです!」
「本当に手厳しいね。」
「では、四十万高校、沖川 望 対 乍瀬学園、佐鳥 真綾。ファイット!」
今度はどちらの発砲もなく後ろに下がるところからスタートした。どちらも相手の戦い方を知っている。だからどちらも相手の出方を見ているっていったところかな?
パンッ!
佐鳥の発砲にも沖川は軽くよけた。
「ねえねえ、なんでノーくんと佐鳥ちゃんの相性は最悪なの?」
逢瀬の中ではすでに佐鳥ちゃんらしい。
「……沖川はそもそも目にも留まらぬ早撃ちを売りにしている。しかしどんなに撃つのを早くしても銃弾の速度は変えれない。佐鳥は相手が撃つのを見た後からよけれるような反射神経の持ち主だ。」
そうだ。要素だけを見て考えてみれば沖川の完全不利。
「しかもあいつはリボルバータイプだから弾数も少ない。近距離で長い間はいられない。」
でも沖川は負けないと思う。なんせそんな悪条件でも佐鳥に勝ったことがある。沖川が負けるはずなんて、ないんだ。
パンッ!
状況としてはどっちも距離をとっており、互いに1発ずつ撃ったがどちらもよけられている。どっちも大きな動きはなくほぼ完全に膠着状態である。こうなるとどちらかが大きなアクションを起こさない限りこのままである。
というわけで10分経過。
「どれだけあのままなのよ!!」
「落ちついて、茅海。」
「早く動きなさいよ!!」
茅海にそうは言っているもの、やっぱりつまらない。こういうのは戦いの技術やせめぎあいが面白いというのも事実ではたから見てるとこれほど面白くない物もない。
しかし、本人たちはかなり厳しい状態だと思う。なんせほぼ10分間、相手から目を離すこともできず緊張状態なんだ。いつもはおちゃらけている2人がこんな状態だというのは不思議だが、これが実戦のトップクラスの戦いなのかもしれない。
「……やっぱり疲れるよね。」
「そうだね。」
いきなり2人は緊張体勢を解いた。
「何となくさ、僕たちにこういう地味なのって見合わないよね。」
「そうだよ!どうせあなたが撃ちこめるほどの隙を出してくれるわけないんだし!」
パンッ!
そして今度は佐鳥の発砲を合図にしたように沖川が一気に佐鳥との距離を詰める体勢に入った。それに対して佐鳥も何発か打って対応しようとしたがスピードに乗った沖川は思った以上に速かったのかうまくとらえることができずにいる。
パンッ!
「いった!?」
「いや、あれくらいじゃ無理だろ。」
パンッ!
沖川は距離が近づいて言ってるのにうまくよけて言っている。佐鳥まで5m、4,3,2……
パンッ!
やっと1発撃った沖川。この距離ならいくら判断神経がいいとしてもよけられるはずが……
「きゃは!」
「……」
「……」
「な、何あれ?」
茅海がうろたえるのも無理ない。あの距離の攻撃を佐鳥はマト○ックスでよけた。
「えっと、確か50年くらい前の……」
「誰もあのよけ方の元ネタを聞いてるわけじゃないわよ!!」
……逢瀬のあれは素なんだろうか?もし確信ならよくこの場面で言えるなって感心するけど、天然なら、いや、あり得ないよね。
パンッ!
今度は佐鳥が撃ったがそれは近づききった沖川が拳銃をはじいて軌道を変えた。そして、そのまま銃口を佐鳥の胸に。
パンッ!
「さっきのは、やったよね?」
「あれでよけれたら人間じゃないわよ。」
しかし、映っている沖川の表情に笑みはない。そもそも勝ってもあまり喜ばないやつだがそれにしては表情が硬すぎる。
「……やられたよ。」
「さっきのは危なかったよ。」
離れた2人の互いの胸には弾の跡。
「「え!?」」
「どうやら沖川が撃つ瞬間とほぼ同時に反射で射撃をしたみたいだな。」
「「え!?」」
『えっと、上の実況も見とれてしまってたわけですが、あ!!これはビデオ判定になるようです!いろんな角度のカメラからどちらが先にあたったのかをチェックするようです!』
「大和、沖川なら大丈夫だよね。」
「それはわからない。あいつが銃を撃つ体勢に気づいて撃ったなら沖川のほうが早いが、もし少しでも遅れていたら反射的に撃ってても沖川のほうが遅いかもしれない。」
「そんな……」
「ビデオ判定の結果、勝者!乍瀬学園、佐鳥 真綾!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!
会場に歓声が聞こえた。