50発目 なんで口癖なんてつけちゃったんだろう、といまさら後悔している残念さ
突然空気が静かになった。観客席も中の会話が聞こえてないらしい。
「翔は乍瀬小のころも進学に必要な成績ぎりぎりしか取れてなく、決してすごい生徒じゃなかったじゃん。むしろいつもいっしょにいた望や大和ばっかり注目されてて、そのおまけという印象だったじゃん。中学ではこのままの成績だったら高校に進学するのは不可能だろうって言われてたじゃん。でも……」
あれは中3の10月ごろ。誰もが12月に行われる進学確定試験のために練習してたじゃん。しかし、そこに飛び込んできたのは翔が生徒10人くらいを気絶させたってニュースだったじゃん。そこに行ってみたらすごかったじゃん。さらに実力試しに挑んだ人間もいて30人ぐらいが倒れてたじゃん。
そこからまた20人ぐらいが挑んでやられたじゃん。さすがにやばいと感じて俺や真綾、聖華も翔を止めに入ったけど、歯が立たなかった。翔はありえない反射速度ですべての攻撃をよけると打撃でどんどん屍の山を築いていった。かくいう俺や真綾、聖華もやられてしまった。あの進学不可能といわれていた翔にじゃん。
そして目を覚ましたところにいたのは気絶した翔とひざをついて肩で息をしている望と大和。そして、乍瀬中の全3年生の屍だったじゃん。
「……」
「あの時以降で戦いを翔に挑んだやつはいたじゃん。でもそのときはいつもどおりの翔だったじゃん。そして翔は特例で乍瀬学園へ進学する権利をもらったがそれを捨てて望や大和と一緒に出て行ったじゃん。つまり今いる乍瀬中から乍瀬学園に進学した生徒は1度は翔に負けてるわけじゃん。」
「……なるほどね。」
「なのに翔をバカにするのは……」
「大丈夫。わかってるわよ。あいつが強いのなんて。でも……そこまでだったのね。」
あれ?何かを話した茅海が笑った?
「ショウ!!!」
「うえっ!?はい!?」
「これだけ大声なら聞こえるでしょ!!!これでこいつに勝ったらあんたをターゲットにしてあげるわ!!!絶対あんたに勝ってやるから!!!」
「ええっ!?」
何で大和や沖川じゃなくて僕?
「……お前は俺に勝つ気なのか?」
「当然よ!それに私はお前じゃないわ!神宮寺 茅海よ!」
「……わかった。もう終わりにするじゃん。」
一ノ瀬は一気に近づいた。茅海のよける気配はない。そして一ノ瀬がかなり近くで撃った弾は……
ガッ!
下の地面に当たった。
「な……」
パンッ!
一ノ瀬は茅海が何をしたのか確認するのが一瞬遅れてしまった。茅海がその一瞬を逃すはずもなく、一ノ瀬の胸には銃弾を撃ち込まれた。
「そこまで!勝者、四十万高校、神宮寺 茅海!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!
「……さっきはとっさにしゃがんだのか?」
「そうよ。あんたはよけれるはずなんてないとたかをくくってたみたいだからあえてぎりぎりまで見極めてよけさせてもらったわ。まさかそこであんたの判断が遅れるとは思わなかったけど。」
何かをしゃべっているみたいだがうまく聞こえない。
「ねえ、大和。さっきの茅海のって何なの?」
「ただスライディングで一ノ瀬の下にもぐりこんだだけだ。狙いを定めてた人間なら一瞬相手が消えたように見えてもおかしくない。一ノ瀬の油断とその要素があい合わさってうまくいったんだろ。」
「なるほど。」
やっぱり茅海はすごい。あの一ノ瀬に勝つのだから。
ガチャッ!
「茅海……」
「チーちゃーん!!」
「ぶはっ!?」
入ってきた茅海は僕が呼ぶのより早く逢瀬につかまった。
「ちょ、ちょっと!こっちはさっき戦い終わったばかりなのよ!その巨乳は凶器……」
「チーちゃーん。」
「さ、さすがに死ぬ……」
「そろそろやめてやれ。さすがに神宮寺が死ぬぞ。」
「……」
「逢瀬!まじで離れて!茅海の反応がない!」
「えっ!?」
逢瀬は離れたが茅海は半分死にかけていた。大和がとりあえず生存が確認したので問題なさそうだが試合終了直後の逢瀬のハグは純粋なる凶器だと思う。
「そろそろ僕はいってくるね。」
「大和!まじで息してない!」
「ええっ!?」
「こうなったら人工呼吸だ、ショウ。」
「何で僕!?」
「早く、ショウくん!」
「よ、よしこうなったら……」
「したら殺すわよ。」
「意識が回復しました!その代わり僕の意識がなくなりそうです!」
「別にいいだろ。」
「ははは……なんとなく前の翔の気持ちがよくわかったよ。」
沖川は苦笑いで出て行った。
「さて、沖川はどうなるかな?」
「あいつぐらいの実力ならどうにでもなるんじゃないの?」
「そうでもないだろ。」
「え?」
「あいつと佐鳥は相性最悪だからな。」
「えっ!?」