3発目 転校生はかわいい少女?
神宮寺のお嬢様?なんだそれ?
「……いつから気付いてたの?」
あ、口調が変わった。
「名前を見たときからそんな気はしてたが、まさか本物だとは思わなかったよ。」
「ねえ、大和。僕にもわかるように説明してよ。」
「そうだな……シャウトシリーズはわかるな?」
「うん。」
シャウトシリーズは2020年に拳銃所持の許可が出てからいち早く日本製の拳銃を作った会社のシリーズだ。値段は高いけど、反動の小ささと安定感は日本人向きとよく言われてて、最新シリーズは常に入荷困難とされている。
「それを作っているオメガグループ。そこのトップの娘がそれだ。」
「へ?」
思いっきりみてしまった。
「人を指差したり、じろじろ見たりして失礼ね。」
今さっきまでのおしとやかさはどこにも見られず、今はかなりきつめの口調で話している。
「で、でも、確かその子って絶世の美女って言ってなかった?」
「その整った顔を見ても絶世の美女と思わないのか?」
「これは美少女だよ。」
そこで頭を抱えて大和が止まった。そして後頭部には冷たい感触。
「誰が少女ですって?」
後ろを見なくてもさっきと声色からたいそうご立腹であることが分かる。僕は踏んではいけない地雷を踏んでしまったようだ。こ、ここは殺される前にフォローだ。
「いや、かわいいんだから大丈夫だよ。小さくても。」
その言葉を聞いて大和がアイコンタクトをしてきた。ええと、この感じは……
『死んだな』
えっ?何が?
「あんたは私のこと少女といっただけでは飽き足らずに美しいじゃなくてかわいいって言って、その上でち、ち、小さいって言ったわね!」
「あ……」
アイコンタクトで必死に大和に助けを求めるが帰ってきた答えは……
『安らかに逝け』
助かる見込みは0ですか。
「安らかに逝け。」
「いやいや!わざわざ口でも言わなくてもいいから!!」
「君たち、何をしているのだ?」
「この失礼なことを言ったやつに死をもって償わせるのよ!」
「そんなことはするべきではない。」
だ、誰だかはわからないが助けようとしてくれてるみたいだ。救世主様。どうか助けてください。
「彼は、いや、彼だからこそぽろりと本音が出てしまっただけかもしれないじゃないか。」
「やっぱり殺す!!」
こいつはわざわざ火に油を注ぎに来たのか!ん?この声とこの中途半端にぬか喜びさせる性格……
「沖川!おまえだろ!」
「気づいちゃった?」
後ろをちらっと見るとペロッと舌を出してる整った顔立ちと派手なオレンジの髪、とてつもなく人懐っこそうでいたずら好きのような大きな瞳が見えた。やっぱり、こいつは沖川 望。これでもこの学年で最強の男だ。
「多分大和君だけでもどうにかしてと思ったけど、面白そうだから首を突っ込んじゃったよ。」
何とも面倒なやつだ。
「それよりもそろそろ行くぞ。」
時間を確認すると次の授業まであと10分だった。
「ヤバッ!急ぐぞ!」
僕は神宮寺さんの手を握って演習場のほうに急いだ。
「あ、あんた!勝手に手を引いてんじゃないわよ!!」
「そんなことはいま重要じゃないよ!早く行かないと殺されるよ!」
「その前にあんたを殺してやる!」
騒ぎながら食堂を出た。
「……置いていかれちゃったよ。」
「友情ってそんなもんだろ。」