34発目 こんなに朝早くにやるのが悪いんです
「4校大会!!」
ついに当日。みんなコンディションもばっちりだ。
「眠いね。」
「まったく。前日は調整だと言ったのにあんなにするからだ。」
ばっちり……
「誰かコーヒー……」
「チーちゃん、はい。」
ばっちり……
「自業自得ということわざを覚えるべきね。」
「最悪じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「うるさい、翔。穴開けるわよ。」
「いやいやいやいやいやいや、穴とかいう問題じゃないでしょ!!なんで全員絶不調!?ピッチャーだったら変化球レベルが2も下がっちゃうよ!!」
「なぜここでそれだ。それに、試合は午後から。それまでに整えれば問題ないだろ。」
「そもそも、なんで昨日はあれだけやったのにあんたは元気なのよ?」
「寝たら回復した。」
昨日は日が変わるくらいまで練習したが、もともと毎日3時間睡眠のような生活をしていた僕にとってはいつもと何ら変わりがなかった。
「あんたは変人?」
「失礼な。昔からストレンジャーと呼ばれることはあっても変人はないんだよ。」
「それって同じ意味よ。」
「えっ!?」
つまり僕は変人と呼ばれ続けていたのか!!?
「そっちの話は終了だ。これから開会式だぞ。」
めんどくさいのでカット!!
「さて、昼飯の後に初戦、仁徳学園との試合だ。」
4校大会の開催校は今回、うちの学園でやることになった。ルールは4校によるリーグ戦で先鋒、次鋒、中堅、副将、大将と決めて3勝したほうの勝ち。
「俺は会長と仁徳学園との対戦メンバーを決めてくる。」
「僕もかわい子ちゃんでも探してくるよ。」
そう言って大和、沖川、会長はどこかへ行ってしまった。
「僕たちは食堂で何か食べようか?」
「私は今日はお弁当よ。」
そう言って茅海がとりだしたのは3段重ねの重箱。……それって何人前?
「これが2つ。」
「まだあるの!?」
相変わらず、あの小さな体のどこにこれだけの量の食べ物が入るのか全然わからない。しかも、こんなに食べてるのに身長は小さいし、発育してないし……
カチャ
「死にたい?」
「できれば天寿をまっとうさせていただきたい所存にございます。」
どうして僕の周りはこういう考えを当たり前のように読み取れる人間がいるんだろうか。
「私も今日は学食だよ。」
「あれ、逢瀬も?いつもは弁当持ってきてなかったっけ?」
「ちょっと寝坊しちゃってお弁当を作る時間がなかったんだよ。」
「へえ。」
いつも規則正しい生活をしている逢瀬にしては珍しいミスだ。まあ、昨日は日が変わるまで調整の域を超えた練習をしてたんだ。しょうがないと言えばしょうがないか。
「さて、今日はカレーにでもしようかな。」
「……あんたってカレーが好きよね。」
「そうだね。やっぱりおいしいし。正直インド人に生まれてもよかったと思ってるよ。」
「さすがショウくん。そんなことを言われたし、私はうどんにしようかな。」
「え?なんで?」
「朝から決めてたの。」
「僕の話関係なくない!?」
僕の目の前には空になった重箱が並んでいる。本当にあの量を一人でたいらげてしまうんだからすごい。ただ、茅海が言うには午後の試合用にこれでも抑えたほうらしい。
「チーちゃんはよく食べるね。」
「そういう奈々は食べなさすぎよ。」
確かに奈々はかけうどん1杯。それなのに茅海よりも大きくて、さらに発育がいいときているのだから神様はかなり不公平にしたもの……
「やっぱり死ぬ?」
「できればこの青春時代を駆け抜けたいです。」
僕の心にプライバシーの保護は存在しないみたいだ。
「お前ら、まだ食ってたのか。」
「あれ?大和に沖川に会長?」
この3人は別行動していたはずだが。
「俺と会長のほうが終わってお前らを探してたら沖川を見つけたんだ。」
「このごろはガードが堅くってね。」
「なにはともあれ、ここに全員集まってるのは都合がいい。初戦、仁徳学園との試合メンバーが決定した。」
そう言って大和は紙を取り出した。
先鋒 逢瀬 奈々
次鋒 神宮寺 茅海
中堅 沖川 望
副将 滝川 大和
大将 都築 翔
「あれ?僕が最後?」
「お前は安定感がないからな。できればお前に回るまでに試合を決めておきたいと思ってな。ということで通常、中央に行けばいくほど弱くなるようにするが、今回は逆でいかせてもらった。」
なるほど。だから実戦の成績が低い僕や逢瀬を最初と最後において、TOP3を真ん中に置いたのか。
「とにかく、各自で勝ちを狙っていって。手を抜くかどうかは各自の判断に任せるわ。ここまできたらあとは勝つのみ。みんなで頑張りましょう。」
「はい。」
「当然よ。」
「もちろんです。」
「約束忘れないでね、会長。」
「がんばろうね。」
各自が自分の気持ちを言った。