33発目 決意と思いと締まらない
「さあ!練習だよ!」
「わっ!や、やけにハイテンションね。何かあったの?」
「何でもないよ。」
茅海に不思議がられたが、そんな茅海と逢瀬を引っ張って会長を迎えにいった。
「ここが3年の教室のあたりか。」
「不思議な感じだね、チーちゃん。」
「私にとっては嫌な感じでしかないわね。」
本当に思ったことをストレートに言っちゃうよね。こんなんで茅海の未来は大丈夫なんだろうか。
「あんたに心配される筋合いはないわ。」
久しぶりの読心術ですか。
「あれ?あれって会長さんかな?」
前を見てみると男女4人に囲まれていて見えにくいがたしかに会長のようだ。
「さすが、人望があるんだね。」
「そんなふうには見えないわね。」
「え?」
「今回の4校大会は大丈夫なんだろうな?」
「最善を尽くしてます。」
「最善、じゃなくて勝ってもらわないと困るんだよ!」
「そうそう。会長様が去年先輩たちとあんな惨敗をしてくれちゃったおかげで私たちは進学までも危ういまで言われちゃってるんですよ。」
「私たちが進学できなかったら会長のせいだぞ。」
「……」
ひ、ひどい!明らかに言いがかりだ!しかもなんで会長は言い返さないんだ!
「あんたたち、言いがかりはよしなさい。」
「えっ!?」
いつの間に茅海はあそこまで行ったんだ?
「大丈夫ですか、会長さん?」
逢瀬も行っていた。
「あ?なんだよ、お前?関係ないやつがしゃしゃり出てくるんじゃねえよ!」
「あんたたちがさっきまで話していた4校大会に出るのよ!これでも関係ないって言える!?」
とりあえず、僕も茅海の近くまで行っておく。
「へぇ、あんたみたいなチビも代表なの?」
「なにも知らないみたいだけどね、あのひどい戦いがあったせいで俺らの上の学年は合格率が下がったんだ。その被害を受けるのが嫌だからこうやって聞くのは変なのかな?」
「そう思うなら自分たちが出なさいよ!!」
その通りだ。これさえいえば先輩たちもどうも言い返せないはず。そう思ったが、ただ先輩たちはくすくすと笑うだけだ。
「な、何がおかしいのよ?」
「わかってないなあ。」
「俺たちは会長様の選択に従ってるだけ。」
「そうそう。今ここで私たちが出ればいいとかは別問題。私たちは会長様を信じて、その選択にOKを出してるのよ。」
「私たちはそれについて聞いているだけ。」
「信じてるなら何も聞かずに待ちなさいよ!」
「それでもやっぱり僕たちにとっては未来を決める重要なことなんだ。心配するなって方が無理だと思うけど。」
こ、こいつら、ものすごい遠まわしで言ってるけどそれって会長が勝手にやったことで自分たちが被害受けるかもしれないって言ってるようなもんだぞ。
「お前ら!」
「あ?また何だ?」
「……」
しまった。何も考えずに叫んでしまった。
「もういいわよ。都築くん、神宮寺さん、逢瀬さん。」
「会長。」
みんなを制するように前に出た。
「これは私の問題なの。君たちがわざわざ関わらなくてもいいわ。」
「で、でも……」
「そうそう。来年もある2年が出しゃばるなよ。」
「っ!お前ら……」
パンパン!
「ストップだ。」
手をたたきながら集まっていた野次馬から大和と沖川が登場した。
「大和!?沖川!?」
「いつまでもこないから来てみたけど、面倒そうなことをしてるね。」
「また2年か?」
大和と沖川その質問を無視して先輩たちの横を通り僕らのほうに来た。
「まあ、これたちと同じ立場ですよ。」
「ついでに言わせてもらいますと、会長が来ないから練習開始できないんですよ。本当に俺たちのことを心配してるなら会長の足止めなんてしないでほしいですね。」
「俺らは心配だからこそ……」
「これ以上足止めするんなら負けた時の原因はあなたたちにもあることになりますよ。」
大和は不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「どういうことだ!?」
「あなたたちがここで足止めしたせいで調整がうまくいかなかった、ってことになるってことです。」
「そんなのそっちの実力不足じゃん!」
「実力不足だろうと何だろうとここであなたたちが足止めしているのは事実。ならばあなたちにも責任はあるってことですよ。」
「そんなの言いがかりだ!」
「その通り。あなたたちがさっきまでしていた、言いがかりですよ。」
「っ……」
そこまで言われると先輩たちは何も言わなくなった。
「ほら、さっさと行くぞ。」
大和は僕たちを促してこの場から立ち去らせた。
「あ、そうでした、先輩。」
「……なんだよ?」
「僕たちのことを注意する前に、自分のことを注意すべきですよ。」
そう言って沖川は拳銃を4丁、地面に置いて立ち去った。
「沖川。あれって……」
「あの先輩たちの銃だ。さっきこっそり抜いておいた。」
「さすが沖川。」
僕もそんな会話をしながら大和たちの後を追った。
「まったく、お前らはよくもあんな面倒なことに首を突っ込めたな。」
大和はあきれ顔で僕たち3人を見回した。
「あんなのほっとけるわけないでしょ!!」
「そうだよ。会長さんがかわいそうだよ。」
まあ、確かに軽率な行動だったかもしれないが、あそこまで言われてる人間をほっとけるほど僕たちはおかしい人間じゃない。
「あなたたちは私のことなんてほっといて……」
「「「できるわけありません!!!」」」
3人でハモった。
「そもそも、大和と沖川はいつからあそこにいたのよ!?」
「誰かさんが後先考えずに、お前ら!!って叫んだあたりからだ。」
「とにかく、さっきはうまく滝川くんが押さえてくれたけど、今後はこんな無茶を……」
「「「無理です!!!」」」
「いうこと聞いて!!」
「まあまあ、みんな落ち着きなよ。」
沖川が仲裁に入る珍しめの状況になった。
「そもそも、会長がちゃんと反論していればここまでにはならなかったんですよ。」
「まあ、沖川も落ち着け。去年の試合を見ればわかるだろ。あれを見たやつらならばかなり不安に思うのもしょうがない。誰かに責任を押しつけたくもなる。俺らのすべきことは勝って安心させること。それをわかってるからこそ会長は何も言わなかったんだ。」
「「「「……」」」」
全員何も言わない。頭では分かっているけど、それでも納得できない。みんなそう思っているんだろう。
「……会長。」
僕が口を開いた。
「何かしら?」
「勝ったら、すべて解決するんですね。」
「……ええ。」
「だったら単純な話だよ。勝とう。」
「……そうね。勝ってあいつらの鼻を明かしてやればいいのよ。」
「私もがんばるよ!」
「そして僕は会長ゲット!」
沖川のせいで締まらない!!
こうして僕らは4校大会を迎える。