29発目 今回はなんかシリアスムード
「もちろんやるわよ!!」
誰もいない教室に帰ってきて茅海は開口一番こういった。
「各校代表ってことはかなりの実力者でしょ!?断る理由がないわ!」
確かに茅海は強い人間と戦うことが趣味だ。いや、生きがいといってもいいくらいになっている。この頃はおさまっていたが、こんなことを聞いたら抑えられないだろう。
「チーちゃんが出るなら私も出ていいかな。」
「僕はめんどくさいな。他校の実力者ってことは疲れるだろうしね。」
逢瀬は乗り気だが沖川は相変わらずやる気がない。
「そう言えば、なんで3年生がいるのに僕たち2年生に代表の話が回ってきたのかな?」
「簡単だ。3年生が出たがらないだろうからだろ。」
「え?」
それはおかしい。代表に選ばれて嫌な気分になる人間ばっかりじゃないだろうし、何より大学進学を狙ってる人ならこれほどのアピールポイントはないはずだ。
「去年、乍瀬で行われた大会だが、2年生は全員参加、1年、3年は自由参加だった。これを見に行ったやつは俺以外いるか?」
全員が首を横に振った。
「本当は撮影禁止だったんだが、隠しカメラで撮った去年の試合風景がある。これを見れば理由がわかるさ。」
そう言ってパソコンを開きプロジェクターにつなげた。……こんなものどこに持ってたんだろう。
「スタートだ。」
カーテンまで閉め、スクリーンをおろしてきた。
パンッ!
「試合は5勝0敗で仁徳学園の勝利。」
「「「「……」」」」
大和の見せてくれたのは仁徳学園と四十万高校の試合。これがひどかった。どう考えてももう勝てるのにいたぶるように敵はしていた。結果、うちの学校の生徒のプライドはずたずたにされ、泥だらけになっただけであった。
「なんだよ、この試合。」
「こんなかんじの試合が3試合続いたと思ってくれ。うちの学園は10年間ぐらいずっと最下位だが、さすがにここまでひどいのは初めてだ。」
「ひどいとかいう話じゃないじゃない!!こんなのただのいじめよ!!」
「ひどい……」
「大和、この年はそんなにうちは弱い生徒しかいなかったのかい?」
沖川の疑問ももっともだ。
「いや、例年と変わらないぐらいの強さを誇っていた。布陣も万全で3年生の総合TOP4に、2年生の固定銃撃、実戦で1位をとっていた生徒が出ている。にもかかわらずこれだ。」
「いや、これはおかしすぎるでしょ。」
いくらなんでもこれは圧倒的すぎる。
「あれでもまだ余力はあったかもな。しかもほかの学校の布陣は乍瀬が1年生3人、2年生2人。仁徳が3年生1人、2年生4人。ヨハン桜河は3年生1人、2年生3人、1年生1人。つまり、このメンバーのほとんどが残っていることになる。」
僕だって目の前で自分の学園トップがここまでコテンパンにやられれば出たくもなくなる。
「そして、このときの四十万の2年生って……」
「ああ。麻上会長だ。」
「「「「……」」」」
また誰もが言葉を失った。
あの後、一応ほかの2校との試合も見せてもらったがやはり圧倒的にやられていた。
「私たちは先に帰るわね。」
「ああ。男は片づけをやってから帰る。」
「ショウくんもヤマくんもノーくんも遅くなっちゃだめだよ。」
ちなみにノーくんは沖川のことだ。
「ありがとう。僕の心配をしてくれるんだね。」
「茅海や逢瀬も気をつけて。」
こうして教室には男たちだけになった。
「……すざましかったね。」
「……そうだね。」
「……特に乍瀬学園。」
そこでまた沈黙が訪れた。片づけはもう終わってしまった。
「あいつらは相変わらずみたいだな。」
「喜ばしいことか喜ばしくないことか悩みところだね。」
「僕は変わっててほしかった。」
僕のその言葉でまた沈黙が訪れた。
「……帰るか。」
「そうだね。」
教室を施錠して3人で教室をあとにした。