26発目 残された謎の真実
私、神宮寺茅海はいつもより30分ほど早く学校に来ていた。昨日の誘拐騒動からまだ疲れが抜けきったとは言えないがやらなければならないことがある。
この時間の教室はまだ誰も来ていないし、開いてないのが普通だけど今日は開いている。なぜなら、私が1人の男を呼びつけたからである。
ガラッ!
「やっと来たか。」
中にいたのは見慣れたメガネをかけた男子。滝川 大和だ。
「悪いわね。こんな時間に呼び出して。」
「問題ない。いつもこの時間には起きている。苦でも何でもなかったさ。」
相変わらず望とはまた違う、本心を悟られないようなしゃべり方で話しかけてきた。
「さて、で、要件は何なんだ?」
「昨日の翔について。」
「……」
特にリアクションはない。さて、ここからが重要だ。大和ならのらりくらりとうまく逃げてくるかもしれない。
「昨日の翔はすごかった、いや、すごすぎよ。いくら反射神経がいいからってあそこまでになるとは思えないわ。一体翔は何者なの?」
「……」
さあ、どう来る!?
「……わかった。教えてやるよ。」
「え?」
あまりにもあっさりいった。
「そもそも、翔がいたら話しにくいかと思ってこの時間を選んだのかもしれないが、あいつがどうしてああなるかについてはあいつにも説明してるぞ。まあ、忘れてるだろうがな。」
「そ、そうなの?」
「ああ。」
なら昨日のうちに聞いとけばよかったのかも。
「あいつのすごいのは反射神経だけじゃない。それと動体視力だ。」
「動体視力……」
動くものを見極める力で実戦でもかなり重要視されるものだ。
「でも、それだけで超近距離の銃弾を見極めれるものなの?」
「……無理だな。しかし、あいつならあいつの持つある特性でそれができる。」
「それは何?」
「俺らはそれをゾーンと呼んでいる。」
「ゾーン?」
日本語では範囲とかいう意味だったはず。それがなぜ?
「お前は聞いたことないか。野球で『あの難しい球をよく打ちましたね。』というインタビューに『球が止まって見えたんです。』っていう野球選手がいたりするって。」
「あまり。」
「他のスポーツでも自分のイメージ通りに体が動いてくれるってことがある。それをスポーツの世界ではしばしばゾーンって呼ぶんだ。翔の場合は極集中状態ともいえるな。」
「つまりすごい集中してると?」
「そういうことだ。」
なうほど。それによって……ん?ちょっと待って。
「それが翔の特性?確かにそこに行ける人間は少ないかもしれないけど、それって特性って呼べるほどのものなの?」
「まあ待て。ここからが重要だ。あいつはゾーンの状態にちょっとしたきっかけでなる。主には感情の高ぶりだが、ふつうの人間では絶対にあり得ないくらいなりやすく、そしてそれの持続時間が長い。」
「それってすごいことじゃない!!」
あんな状態よくなるならかなりの強さになれる!
「そんな簡単なものじゃない。茅海、昨日、翔が本物の誘拐犯のリーダー格を倒した時にかなり疲れていなかったか?」
「そう言えば……」
あの時やけに翔は息を切らしてた。
「あれはすごい集中力に持って行って、自分の体の限界すらも超えさせるようなものだ。そんなのはすぐにスタミナを完全に削ってしまう。だから、あいつも連続1~2分も使えば身体が強引にゾーン状態を解く。」
「つまり諸刃の剣?」
「そういうことだ。」
やっぱりどんなものにも欠点はあるものなのね。
「そこでだ。お前に頼みたいことがある。」
大和の声が今まで以上に真剣な声に変わった。
「あいつが限界を超えそうな時、どんな手を使ってでもとめてやってほしい。」
「……もしとめなかったら?」
「わからん。ただ、体に異常な負荷をかけて活動しているものだからおそらく……」
なるほど。なんで話したと思ったらこういうわけがあったのね。
「……わかったわ。むしろ助けてもらったりもしているのに断れるわけないわ。」
「すまない。感謝する。」
それだけ言うと大和はパソコンを開いていじりだした。
ガラッ!
「一番乗り―!!」
「翔!?」
「あれっ!?茅海に大和!?まさかこんな時間にいるなんて。」
「そう言うお前こそ早いな。」
「うん!なんか目が早くに覚めたから早目に来てみました!!」
「……」
「ん?どうしたの、茅海?」
「なんでもないわよ。」
これからも私はきっとこいつとつるんでいく。でも、もしこいつが暴走したら、私は引き金を引けるのだろうか?
「ねえ、茅海、大丈夫?」
「うるさい!!」
やめた。今はこんなこと考える必要はないよね!
これにて1章は終了です。これからもずっと毎日更新していくかはわかりませんが出来る限りはするつもりです。
そんなわけ(←どんなわけだ!?)で、この1章終了を機に感想、質問をしてください!お願い!