1発目 妄想する少年 だます少年
2050年。治安の悪化などを理由に拳銃の所持を認めてから30年余りがたった。20年前からは学校の授業は体育が銃撃に、技術が造銃に変わった。そんな風に最初は反対も多かった一般人が銃を持つのは当たり前になっていた。
これはそんな世界に住む侍の物語……
「……朝っぱらから壮大な妄想だったぜ。」
そこまで言って僕はベッドから起き上がった。
わかってくれたと思うがこれは僕の壮大な妄想だ。え?どこまでが妄想だって?侍のあたりだな。え?前のはもうそうじゃないのかって?これは事実だ。ちなみに2050年も本当だ。そんなのを知らないのは……
「……これ以上してたら学校に遅れちまう!」
さっさとトーストを焼いて(この表現はおかしい)口に詰め込むとダッシュで家を出た。
僕は今日から高校2年生で現在、国立四十万高校{こくりつしじまこうこう}にかよってる。四十万は環境もいいし、しかも学費がタダ。しかし、学校が丘の上にあるのが解せない。これじゃあ歩いて10分のところでもかなりのスタミナに消費してしまう。
「よう、翔。」
後ろからいきなり男子が現れた。
「もう驚かないぞ、大和。」
こいつの名前は滝川{たきがわ} 大和{やまと}。1年のころから知り合いでこうして俺を驚かそうといろいろやってきた。しかし、1年たったんだ。驚きはもうしない。
こいつの顔をみると憎たらしいぐらいの笑顔と特徴的なメガネが……ない。というか目や鼻、口とかの顔のパーツがない。のっぺらぼうだ。
「な、な、な……」
「それだよ。俺が待っていたのはその反応だ。」
そう言いながらのっぺらぼうの顔を破ってメガネをかけるといつもの秀才っぽく、かなり背の高い大和が現れた。
「そう簡単に驚かれなくなったら楽しみがなくなるからな。」
「くそっ!今回はもう大丈夫だと思ったのに!」
「俺に勝とうなんて100年早いよ。」
わざわざ怪人二十面相やルパン3世みたいな手の込んだことやりやがって。こいつはこの変装術をもっとほかの方向で生かせないのかよ。
「そんなことより走るぞ。今日はクラスの発表もあるんだ。初日から遅刻の称号はもらいたくないだろ。」
「それもそうだね。」
走って坂を上っていった。
四十万高校{しじまこうこう}の生徒数は1学年120人で3クラスだ。そのため1年間でほとんどの生徒の顔は覚える。
「今回は何組?」
「ええとな、どっちも2組だな。」
「また同じか。」
「それとな、俺らと同じクラスで見たことない名前のやつがいたんだよな。」
大和の記憶力はむちゃくちゃでこの学校に在籍している生徒、教職員の名前をすべて覚えている。たぶん今年の新1年生もあってすらないのに半分ぐらいは記憶済みだと思う。
「それって誰?」
「神宮寺{じんぐうじ}……下の名前はよくわからんかった。たぶん女子だな。」
「まあ、仲間が増えることはうれしいよ。それよりも、教室に行かないと。」
「まったく。自分で聞いておきながらその程度か。」
そう言いつつも俺と来てくれるのはやっぱり大和だからだと思う。
教室に行っても見たことのない顔はいない。いつもの面子だ。
「今度アムアムでベレッタの限定モデルが出るらしいぜ。」
「やばいよ。ちょっと調子悪いな。」
「ここに拳銃置きっぱなしのやつ誰だよ?人の机にほっとくんじゃねえよ。」
みんな思い思いの会話をしている。転校生の存在にはだれも気付いてないようだ。
「さすがに気付いてないみたいだね。」
「時間の問題だろ。」
大和の言うとおりだった。突然1人の男子が勢い良く入ってきた。
「おい!うちのクラスに転校生がいるらしいぜ!」
『えっ!』
その瞬間、クラス中がその女の子の予想に話が変わった。僕たちもそんな流れに乗って話を始めた。
「やっぱり女の子ならかわいい子であってほしいよね。」
「それはわからないが、かなりのやり手だとは思うぞ。」
「どうして?」
「勘だ。」
こういうとたいていの人間がどうでもよさそうにするが、こいつの勘は何個かの情報をもとにしているが100%ではないというだけで結構信頼できる。
「お前ら、席に着けー!」1
始まりました、SHOT GUN!この先も見てくれたら嬉しいぜ!
予定では1ヶ月くらいは毎日更新を予定。忘れたらそこは笑って見逃してください。
ではでは、次回にはヒロイン登場……かも。