16発目 いつもとなりに死の危険
「ちょっと!!あれはどういうことなのよ!!」
「ちょっ、苦し……」
沖川が離れていくと同時に茅海が僕の首を締めながら聞いてきた。
「どうなってるのよ!!」
「……」
もう、苦しすぎて喋れません。あ、お花畑が……
「だめー!!」
「きゃっ!」
逢瀬がまたタックルをしてきた。
「そんなにしたらショウくんが死んじゃうよ!!」
何とか逢瀬に助けられ息が……息が…………できない!?何かが口に前にあって息もできない、しゃべれない。よーく確認してみると逢瀬が俺の上にのっかっている。そして、僕の顔の上にあるのは……柔らかいなー。
カチャ。
そして、額に現れたのはかたく冷たい感触。あ、知ってる?眉間とかにとがったものを近づけていくとものすごい変な感じがするんだよ。あはは……
「死にさらしなさい!!こんなところでそんなことを……」
わー!!ちょっと待て!!これは事故で、平和的解決……あれ?そうだ!僕の上には逢瀬のあれがあるんだ!!つまり、弁解もできないままに……男なんだし、女性の胸で圧死って夢だよね!!
「大丈夫。一瞬で殺してあげるから。」
そんな夢すらかなえてくれないようです。
「まあ、待て。」
こ、これはまさしく救世主の声!?
「そんなんじゃ生ぬるいよ。ちゃんと四肢が動かなくなっていく感触を味あわせながら死なせてあげないと。」
「沖川!!てめえは相変わらずぬか喜びをさせるなぁ!!」
どうにか逢瀬の下から抜け出して沖川にツッコミを入れた。
「そうよ!沖川!何をさっきやったの!?」
そう言えばそのことで僕は殺されかけていたんだっけ。
「そんなのは大和に聞いてよ。」
「ヤマくんなら銃の調整に行っちゃったよ。」
逢瀬がそう答えた。沖川は軽くため息をつくとゆっくりと空を見た。
「……めんどい。」
「しょうがないわね。翔、あんたが説明して。」
「ぼくもめんど(カチャ)……喜んで説明させていただきます。」
人権というものはかなりもろい物のようです。
「まず、沖川が使ってるのはトリンプルRシリーズなんだよ。」
「トリンプルR?それってあのトリンプルR?」
「あの、がなにかわからないけど。多分想像している通りのトリンプルRだよ。」
トリンプルRシリーズ。ストラクト社が作ったリボルバータイプの拳銃である。ストラクト社は一般人でも使いやすいオートマチック式の拳銃を作る中で、唯一のリボルバータイプの拳銃を作っていた会社でそのシリーズがこれ。会社は5年前にリボルバータイプの需要低迷を理由に拳銃業界から手を引いた。ゆえに、今やトリンプルシリーズは一部のマニアが持っているだけとなり、実際使っている奴などほとんどいなくなっている。
「そんなの使ってる人間がまだいたなんて。」
「おいおい、時代遅れなんて言わないでくれよ。僕はこれが気に入っているんだから。」
ちなみに、沖川の使っているのはトリンプルR15。トリンプルシリーズ最後の拳銃で、生産数が少なかったからかなりの高値で取引されている。
「ということで、わかったと思うけどさっきのはただの早撃ち。それが早すぎで見えなかっただけ。」
「……なんか、まともに説明している翔っておかしいわね。」
「人に説明させといて!?」
「あ、そろそろ大和の試合が始まるわよ。行きましょう。」
「僕の話はスルー!?」
こうして、人権が僕にはないと実感させられました。
……死にたくない。