15発目 ちょっとだけマジックショー
「うう、ひどい、ひどすぎる。」
「まだ言ってるの?過去のことをウジウジ言うやつはもてないわよ。」
「大きなお世話です!!それにしても、なんでダメとか言っちゃったのさ?茅海が言わなければ僕の勝ちだったかもしれないのに。」
「……ねえ、確かチームの勝利って成績に影響するのよね?」
「え?うん。まあ、個人の勝ち負けのほうが大きいけど。」
「そう……だったら別にあんたを反則負けにする必要もなかったか。」
「え!?ちょっと!それどういうこと!?」
それだけ言って茅海は見つめていた。大和と沖川が準備しているところを。
「よっ!」
しばらくして拳銃の微調整が終わった大和が戻ってきた。茅海は次にする沖川の戦いを見るためか、戦闘エリア外のぎりぎりで座っていた。
「あいつもよくここまでやるな。」
「?どういうこと?」
「あいつ、チームの勝ちが成績に考慮されるのを知ってたから、俺や沖川を本気にさせるためにお前をまけさせたのさ。」
「??どういうこと?」
なんで僕の負けが2人を本気にさせるのか?
「つまりだ、このチーム戦でこっちのチームはお前がもし勝ってれば2勝1敗。つまり、俺か沖川のどっちかが負けてもチームの勝利には問題ない。でも、今は1勝2敗。俺か沖川、どちらかが負ければそこでチームの負け=成績に影響、となるわけだ。」
つまり、あれか。僕は茅海に大和や沖川を本気にさせるためだけに負けさせられたのか。
「はあ、僕のポジションはそんなものなのかな。」
「そろそろ立ち直れよ。ほら、沖川のやつが始めるぞ。」
大和に言われて僕は沖川の試合を見に行くことにした。
沖川の相手は茅海ほどではないが小柄な女子だ。
「よろしくお願いします。」
「あー……棄権してくれないかな。僕は君みたいなかわいらしい女の子は傷つけたくないんだ。」
「それはできません。いくらあなたが前回の実戦1位で四天王と呼ばれていようとも私がやらなくちゃ私だけじゃなくてチームの成績にも影響しますから。」
「はぁ。」
沖川は少しため息をついた。相変わらずの調子だった。
「なによ!あんなこと言われて棄権するやつなんているはずないでしょ!」
「それでも沖川は戦いたくないんだよ。あれでフェミニストな部分があるしね。」
僕はそう答えたが茅海は不機嫌そうだった。それもそうだろう。茅海的には本気の沖川が見たいのにこんなのがあったんじゃ本気で戦わないかもしれないとか思ってるんだろう。
そんなことを思っているうちに2人ともが距離を取り出した。そろそろ始まる。
「……ファイト。」
パンッ!
その刹那、相手女子の胸は血で染まっていた。……いや、正確には赤色のペイント弾だけど。
「勝者、沖川。」
一瞬のことで相手の女子も呆けている。
「ごめんね。僕も君を大事にしたかったけど、本気で戦わなくちゃいけないみたいだったから。」
沖川はそれだけ言い残すとバトルエリアを離れた。