10発目 命…それはたった1つの儚いもの
「さすがにすごいな。」
「そうだね。もうすぐ40分だけど、どっちもかすってないよ。」
「そこだけじゃない。翔はほとんど紙一重で交わしている。体力は限界寸前なんだろうが、反射であのよけ方だ。普通に考えたらあり得ないな。」
何かを言ってる沖川と大和の声が聞こえてるけど、そんなものを聞きとる余裕はありません!もう反射しか機能してない。
「はぁはぁ、さ、さっさとやられなさい。」
あっちの攻撃が完全にやんだ。今しかない。
「な、なんで、そんなに、強いやつとの、戦いを、望むの、さ?」
「なんで?」
ぎりぎりの声で出したのだが、何とか届いたようだ。
「簡単よ。強くなりたいから。」
「なんで、強く、なり、たい、のさ?」
「強いほうが人生が楽しくなるからよ。」
「そんな!学校で普通に気の合う仲間たちと話してたって面白いじゃないか!」
「私はそんなんじゃ楽しいって思えないのよ!!」
声の大きさや姿勢よりも、声の真剣さからこれが本音だというのはよくわかった。でも、これまでの僕がすごしてきた生活がまるで無意味だとも言われたような気もした。
「だったら、僕が面白くする。」
「え?」
「そんな当たり前の生活が楽しすぎて、病気でも学校に行こうとするくらい楽しませてやる。さあ、僕たちみんなと青春を謳歌しよう。」
「最後のセリフはうざい。」
ええっ!?この決め台詞にはものすごい自信があったのに!
「でも、それもおもしろそうね。」
「えっ?」
「もしあんたの言う青春を謳歌することがつまらなかったら、速攻であんたの頭撃ちぬくから覚悟しときなさい!」
そういって戦いを放棄して神宮寺さんが出て行ってしまった。
「とりあえず成功じゃん。」
「まあ、翔にしてはがんばったほうだろ。」
後ろに沖川と大和がいた。
「うん。なんとか……」
「でも、これから大変だねー。あの神宮寺が面白くなかったら翔の人生はゲームオーバー、ってわけでしょ。気分はどんな感じ?レベル1でラスボスに挑んでる感じ?」
自分には関係ないからといって沖川は軽い口調だ。
「成功は成功だ。しかし、今は前を向く以外の選択肢は残ってないぞ。」
大和は大和で厳しいことを言ってくれる。
「これからどうするつもりなんだ?」
「うーん、わからない。でも……」
僕は満面の笑みを浮かべてこう言った。
「おもしろくするしかないでしょ!」
命をかけてまで神宮寺さんにこっちも向かせたんだ。失敗は許されない。というか、失敗はDEATH……
「やっぱり助け……」
「「自分で頑張れ。」」
ですよね。
これにて転校生騒動編(←今決めた)は終了です。一応、章で分けるならまだ1章ですけど。