106発目 騒ぐ in the 駅
先に言っておきます。ヒッキーはファッションなんて知らない。
「さて、僕が一番乗りかな?」
駅のどこにするかを決めていなかったや、とか思いながら適当に駅の中を歩いていた。駅の中は涼しいから、気持ちよかった。
「残念ね。私のほうが先よ」
駅の待合室に茅海がいた。
その姿はまぶしかった。着ている服は、上は白のシャツに青のジャケット。そして、下はジーンズを短くしたやつ(たぶんホットパンツってやつ)。そして、白色の帽子をかぶっている。その姿は見方によっては少年みたいに感じる。
「なんか失礼なこと思わなかった?」
「……そんなことないよ」
下手なことは思わないほうがいいかな。一応、拳銃は持ってきてるみたいだし。間違って撃たれちゃうかもしれないし。
「それにしても茅海だけ?」
「そうね。ほかのはまだ来てないわ」
「チーちゃーん!!」
後ろから誰かが駆け寄ってくる。……これは間違いなく逢瀬だろう。
後ろを見てみると、白色のワンピースと麦わら帽子という映画でしか見たことないようなファッションで来ている。たぶん、あれは修学旅行で買ったやつだ。
そして茅海はタイミングを見計らうかのように横によけた。
「べふっ!」
抱きつく対象がなくなった逢瀬は椅子に引っ掛かり、見事に頭からこけた。……その衝撃でピンクと白のしましまが見えてしまった気がするけど、僕は何も見て……
カチャッ!
「変態は死になさい」
「これは事故です!」
心の中の言い訳ですら無視される僕って……
「外が暑いんだから、あまりお熱い行動はしないほうがいいよ」
そう言って現れたのは水色のアウターとジーンズというカジュアルな格好で身を固めた沖川だ。
「誰がお熱よ! 撃つわよ!」
「なんで銃口を僕のほうに向けて言うの!?」
撃つなら沖川のほうを撃ってよ! お願いだから!
「お前ら、駅で何をやってるんだ?」
現れたのは大和たちだ。大和は白色のジャケットにジーンズという、僕らと遊ぶときにもよく着てくる格好だ。
しかし、後ろの面子はかなり独特だ。一ノ瀬はアロハシャツに短パン。お前はどこのキャラを意識してきたんだ?
佐鳥はとにかく派手だ。派手派手だ。フリフリのついたスカートに上。袖のないノースリーブだが、すべてがピンクでフリルつき。なぜか暑そうに見えてしまう。
小織はこちらも違う意味で目立っている。服のデザイン自体は佐鳥の服のフリルの量を減らした感じだ。しかし、色は白黒。ゴスロリだ。着てる本人が涼しい顔をしているから大きくは気にならないが、やっぱり暑そうだ。
「良くも悪くも個性的な軍団の出来上がり?」
「わお! ツッキーにほめられたよ!」
ツッキーって誰!? たぶん僕!!
「元々個性的な軍団なのに何言ってるじゃん」
それはそうだけど、なんか適当だ。
「すみません! 私が最後ですか!?」
そう言って走ってきたのは桧木さん。服装はノースリーブの服にデニムのスカート。
「……」
「あの、変ですか?」
じっと見ていたせいか、桧木さんが心配そうに自分の服装を聞いてきた。
「あ! いや、そうじゃなくて……うん、よく似合ってるよ」
「そうですか? よかったです」
なんていうか、桧木さんの服装って涼しそうだけど露出が多いんだよね。似合ってるから問題ないんだろうけど……
「撃つわよ」
「なんで!?」
心の中でちょっとエロい事考えたから!? 今日はかわいい恰好してるんだから、茅海も拳銃とかは抑え気味のほうがいいと思うんだけど。
「……」
「あれ?」
茅海はなぜか拳銃を下してくれた。
「どうしたの?」
「……なんでもないわよ」
なぜか茅海がこっちを見てくれない。でも、おろしてくれたからとりあえず安心なのかな?
「さっさと行くぞ。どうせ、のんびりとなんて行くはずがないんだからな」
大和の言葉で僕たちは電車に乗ることにした。
「な! ICOCAが反応しないじゃん!」
「いや、なんでICOCA!? あれって10年以上前に新しいカードに完全移行したよね!?」
いきなりのんびりといかなかった。