105発目 始まって早々逃げろ
更新を2ヶ月近く放置してすみませんでした。なんかスランプです。自分でも泣きたいくらいのスランプです。
「さて、終業式が終わったし、どうしようか?」
「当然、俺らに東京観光をさせてくれじゃん」
教室でHRが終わった直後に、一ノ瀬、佐鳥、小織は窓から当然のように入ってきた。とりあえず、最初はクラスの人間も驚いたみたいだったが、僕たちの関係者だということとこの前の乍瀬の代表だったことを思い出して、それならしょうがないみたいな感じになってすぐに別の話題に……は移らなかった。
「乍瀬の生徒でしょ!? 乍瀬ってどんなところなの!?」
「佐鳥ちゃん、今日もかわいいです!」
「小織さん、笑ってください!」
前の4校大会はほとんどの生徒が来ていた関係もあって、乍瀬の生徒だということはばれている。乍瀬はもともと学校の中がどうなっているかをほとんど公表しない(できない)から今の機会に聞いておこうというやつらが半分くらい。残り半分は、もともとこの3人は見た目がいいので、それ目当て。
とりあえず、見慣れている僕ら5人は蚊帳の外で見ていることにした。
「さすが、公表できない学校の生徒と話せる機会となるとみんな目の色が変わるね」
「このクラスは乍瀬に恐怖はないのかね?」
「ないでしょ。だって化け物という意味では僕らで見慣れちゃってるし、乍瀬への興味のほうが勝っちゃってるんでしょ」
質問攻めにされている3人を見ながら大和と沖川は他人事のように見ていた。
「お前ら! なんで俺たちのほうばっかりに聞かないであの3人にも聞け! あいつらも乍瀬出身じゃん」
『マジで!?』
やばい! ばれた!?
「大和、沖川、逃げ……」
……すでにその姿はなかった。
「速すぎでしょ!?」
とりあえず、僕も囲まれる前に窓から出て、2階から飛び降りて逃げだした。
『1時間ぐらい逃げれば落ち着くだろ。そのあと教室で』
そして、いつの間にか届いていたメールにそんな内容が書いてあった。つまり、30℃を超えるこの灼熱炎天下の中を1時間逃げまわらないといけない。
「死ぬでしょ!」
「いたわよ! 逃がすんじゃないわよ! 乍瀬から出た経緯とかを聞いてトップニュースにするのよ!」
新聞部が現れた。
「なんでここで初登場キャラ!? というか、うわさ流れるの速すぎるでしょ!?」
「逃がすな!」
「つかまってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
そんなわけで1時間後……
「に、逃げ切った……」
あの後、結局1時間中、ずっと追いかけまわされる羽目になった。あの新聞部、乍瀬のメンバー程しつこくはないけど、隠れてもすぐに見つけてくるし、ほとんど走りっぱなしだったよ。
「やあ、お疲れ」
「よく逃げ切ったな」
大和と沖川は涼しい顔で教室にいた。
「なんでそんなに余裕そうなの!?」
「新聞部は校内の至る所に隠しカメラをセットしてるんだよ。それのせいで場所が分かるから逃げられない。だから、死角を中心に逃げ回ったんだ。一応、たまに見つかってから追いかけられたぞ」
よく見ると、大和も沖川もうっすらだが汗をかいている。
「あれ? じゃあ、それってやばいんじゃないの?」
今日の事件が見事にその隠しカメラに写ってるんじゃないだろうか?
「その辺は俺が細工しといたよ」
……なら、新聞部の隠しカメラを無効化できたんじゃないだろうか?
「やっと帰ってきたわね」
クラスの人間も、ほとんどが帰っていた。
「さすがに汗かきすぎたよ。1回家に帰ってから着替えた後に街に出ない? このままは嫌だよ」
「それは同感だね。僕は汗をかいていても栄えるけど、汗臭いのは嫌だしね」
なんか違う気がするけど、沖川も同意見らしい。
「そういえば、3人ってどこに泊まってるの?」
一ノ瀬、佐鳥、小織は今日の朝ついたはずだからまだホテルには入れないだろうし、無理そうだったらだれかの家に行ったほうがいいだろう。
「その辺は心配なしじゃん。大和の家に泊めてもらうことになってるじゃん」
「呼んでおいて金を使えというわけにはいかないからな」
なるほど。だったら心配はないだろう。
「だったら2時間後に駅でどう?」
その意見にみんな賛同してくれて、僕たちはいったん帰ることにした。




