103発目 帰ってきたけど、いつも通り
桧木さんが帰ってきてくれた!
「あの、撃っちゃったけど大丈夫ですよね?」
そう言って桧木さんは心配そうに自分のぶっ壊した機械を確認している。
「大丈夫よ。それはどうせ大和が用意したやつだから」
え? 大和?
「これって大和が用意したの?」
「何言ってるのよ? この騒ぎだって大和やクラスの連中が起こしたことなんでしょ?」
「でも、放送でブラックポイントが占拠したとか言ってたし、僕が戦った相手もブラックポイントだとか言ってたよ」
たしかに大和ならこれくらいのことはできるだろうけど、学校全体を巻き込むなんてこと、さすがにしないと思う。やりすぎぐらいは理解できるだろうし。
「あの、国連警察にブラックポイントってあったと思います」
「へ?」
「私を追ってきたときに、そんなふうに名乗ってた黒タイツの集団がいたと思います」
たしかに、会った敵が全員、残念な黒タイツに身を包んでた。
「じゃあ、あれは大和の仕掛けたとかじゃなくて、本物?」
「おそらくは……」
桧木さんのを聞いて、茅海はポカーンという感じの表情をしていた。正直、僕もあまり信じられない。だってこいつら変だったし……他の国連警察のメンバーと比べると弱かったし。
「チーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「キャッ!」
ポカーン状態の茅海にどこからともなく現れた逢瀬の胸に埋もれた。
「チーちゃんチーちゃんチーちゃん!! 本物のチーちゃんだぁ!!」
「な、奈々、落ち着いて……」
「あれ、感動の再開?」
そして、校舎の曲がり角から沖川も現れた。
「そっちはどう?」
「いやぁ、とてつもなく残念なファッションだったから、思いっきり修正液で落書きとかしちゃったよ」
「いや、何やってんの!?」
沖川がここまで現れなかったのってそんなことしてたから!?
「あの、逢瀬さん。それぐらいにしないと、神宮寺さんが……」
そんな桧木さんの困った声に反応して見たら、茅海が完全に無反応になっている。
「茅海!? 逢瀬、離してあげて!! それ以上は茅海が死ぬ!!」
「え? ……あ、本当だ」
逢瀬が離すと茅海は大きく深呼吸をした。
「はぁはぁ……三途の川が見えるかと思ったわ」
「死んじゃやだよ、チーちゃん!」
「殺そうとした本人が言うの、それ?」
とりあえず茅海のほうは大丈夫みたいだ。
「それにしても、本当に弱かったわよね、あれ。本当に国連警察の組織?」
とりあえず逢瀬に言いたいことを言った茅海が思い出したように言った。
「はい。でも、前は大変だったんです。20人近くに一気に追いかけられて……」
20人? それは多いな。桧木さん1人にそれだけ動員できるんだから、結構な数がいるってことだよね……え?
「ねぇ、沖川」
「なんだい? あいつらのファッションセンスがいかに悪いかを説明してほしいのかい?」
「国連警察の中でもあまり強くない人間が集まった、数で押すようなチームってあると思う?」
そこで、全員が動きを止めてこっちを見た。
「……あるんじゃないかな? 人数はバカみたいにいるらしいし」
おそらく、こいつらはそれだ。人海戦術で攻める部隊。なのに、僕らが戦ったのは全員が1人ずつで4人。そして、校舎のほうはほとんど鎮圧されている。
「……やばいわね」
茅海もなんとなくわかったらしい。
「え? どうしたの?」
「急ごう! たぶん、敵のほとんどは体育館にいる!」
とにかく走り出した。狙いは校舎にいる生徒じゃない。教師たちだ!