102発目 これは久しぶり
しかし、そんな脅しでもこういう奴には効果てきめんだったらしい。見事に白目をむいて気絶してくれている。
ガシャン!
「茅海!!」
後ろを見たら、ショウが防弾ガラスを破って出てきていた。どんな荒業なのよ。
「大丈夫!? けがしてない!? あ!! さっきのマシンガンの攻撃は……」
「ちょ、ちょっと! ショウ!?」
こっちの制止なんか無視して体をいろいろ触ってくる。そして、容赦なく胸を……
「って、そこはやめなさい!!」
「ふげらっ!」
思わず回し蹴りをしてしまった。
「これだ……久しぶりに食らった……茅海の攻撃……」
「あんたって、マゾだったの……?」
こいつは私とはなれているうちに、ついに変な性癖に目覚めてしまったの? いや、そもそもそういうやつだった気がする。
それにしても、こいつは容赦なく私の胸を胸を胸を……
「死ねっ!」
「なんで二連ぶふぉれヴぁ!?」
これくらいのところでなんとなくスッキリしたからいいわ。
「さて……」
私は気絶している黒タイツを見た。正確には黒タイツのもっと奥、校舎裏とグラウンドをつなぐ曲がり角を。
「……ショウ」
「何? も、もう殴らないでよ、死ぬ……」
「私が何か言ったら右に跳んで」
「……了解」
不思議そうに私をショウは見たけど、ちゃんと頷いてくれた。
「…………今よ!」
ショウは右へ、私が左へ飛んだ瞬間、校舎の角を曲がってきた5台の自走兵器が撃ってきた。
「いきなり!?」
「容赦なしってとこでしょ!」
パンッ!
銃弾が飛んでくるのを、ショウが大きくよけた。その後ろには複数の銃弾の跡。
「……ねぇ、さっきってマシンガンの銃弾と本体の部分を落としたんだよね?」
「そうね」
「今回の敵はショットガンみたいだね」
「そうね」
……正直、こうなったらあの装甲をぶち抜く以外無理だ。
「逢瀬以外の銃でいけると思う?」
「無理ね」
パンッ! パンッ!
ショウと私はすぐに建物の物陰に隠れた。
「これどうするのさ!?」
「逃げるしかないでしょ!」
建物に隠れながらの撤退。できれば戦いたいけど、ダメージを与えられないやつに勝つなんて無理に決まってる。
とりあえず、ダッシュで物陰から物陰に移動して避けていく。しかし、直線で突っ込んでこれる向こうのほうが速い。どうにか曲がり角まで来れたのでそこからはダッシュ!
「どうする!? 逃げたって逃げ切るのは厳しいよね!?」
「そんなの私に聞かないでよ!」
そして、追いつかれた。しかも、都合の悪いことに隠れる場所はない。
「伏せなさい!」
「わかってるよ!」
2人してしゃがむように伏せた。
バンッ!
さすがにかわしきれない! そう思ったけど、銃弾は飛んでこなかった。代わりに後ろに感じたのは、ものすごい速度で自走兵器を撃つ射抜く銃弾、それにへちゃげる自走兵器。そして、見覚えのある影。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
4発の銃声ですべての自走兵器が行動不能になった。
「大丈夫ですか!?」
そんな自走兵器の奥から現れたのは、茶色のツインテールをなびかせ、右手に拳銃を持った少女。まだ数日しか過ごせていない、私たちの仲間。
「大丈夫ですか!?」
「抄華!」
「桧木さん!」
抄華が、帰ってきた。