100発目 毎度おなじみ
ついに本編100話到達!
「久しぶりに日の光を見た気がするわ」
次の日、私は大和と外に出ていた。地下空間は大和がある程度いい環境にしてくれてたみたいだが、外に出たら太陽の日差しと高い湿度が迎えてくれた。
しかし、なぜか地下よりはいい環境な気がしてしまうのだから不思議だ。
「外に出たってことは、地下の特訓はおしまい?」
「それもあるが、今日は終業式なんだ。ジャッキーからもこれには出席するように言われてな。だから、今日は久しぶりに登校して、放課後に最終試験を行うってわけだ」
そんな話を聞きながら、校舎のほうに向かった。その姿はたった2週間見なかっただけのはずなのに、ものすごく懐かしいものに見えた。
「……ちょっと待て」
突然、大和が制止をかけてきた。
「どうしたのよ?」
「校舎の様子がおかしい」
大和に言われて私も校舎をよく確認してみる。
そう言われてみれば、生徒があまり動いてない。時間を確認すると9時ぐらいで、朝のHRは終わって休憩や終業式への移動が始まってるはずなのに、そんな様子はない。
そして、もっとおかしいのは防火シャッターらしきものが閉まっている。しかし、火事が起きている様子はない。
「君たち!」
ゆっくりと校舎に歩いて行ってると、突然、前を塞がれた。誰かと思うと、警官だった。
「現在、四十万高校は緊急事態のため入ることができない!」
「緊急事態!? なにがあったのよ!?」
「それは言えない!」
つまり、様子がおかしかったのは中で何かがあったから。中にいるショウや奈々、望の様子が気になるが、この警官がどける様子も、事情を話す気もないらしい。
「神宮寺」
小声で大和が話しかけてきた。
「俺が合図をしたら警官の横を走りぬけろ」
「……わかったわ」
何か分からないけど、中に入る方法が浮かんだらしい。
「君たちも、早く……」
「今だ!」
私が警官の右を抜けるように走り出した。やはり、警官は止めるように私の前に回り込んできた。
パンッ!
そして、大和はそんな警官に発砲した。
「くっ!」
警官はなんとかその銃弾をよける。その間に私は学校に入った。
「どんだけ無茶なのよ!」
大和に何でこんなことをしたのか聞きたいが、今は中の様子の確認が先!
「警官に銃を向けるとは!」
「黙れ、偽警官。この事態にマスコミ、野次馬、その他の警官も来てないなんて不審すぎるだろ」
「……ばれていたのか」
「嘘が下手なんだよ。安心しろ。半殺しで済ませてやる」
こんな会話の約30分前……
「ぎりぎりセーフ!!」
僕はチャイムが鳴るのとほぼ同時に教室に飛び込んだ。
「なんだ、都築はセーフか」
「なんで残念そうなんですか!?」
こっちは補修で先生が容赦なく宿題を出してくるせいで寝不足だというのに!
「よし、ショートホームルーム始めるぞ」
そんなわけでショートホームルームなんだけど、今日は終業式ということもあって予定だけを言うとさっさと終わってしまった。
「おはよう、ショウくん」
机で座って体力回復をしてると逢瀬や沖川がやってきた。
「朝から君も大変だよね」
「先生が容赦なく宿題を出してくれるからいつも寝坊しそうになるよ」
僕の言葉に2人は「ご愁傷様」と手を合わせた。逢瀬は退院直後に試験を受けて、学力は問題ないと証明したし、沖川は1週間で問題なしと判断されたわけだからしょうがないけど、この2人はあの地獄がどれほどきついかを分かってない。
「でも、終わりなんだろ?」
「そうなんだよ!」
2週間の補習は昨日で終わって、今日の宿題を提出したらおしまいだ。
「というわけで、体力も回復できたし、さっさと宿題を提出してくるよ」
僕は2人に別れを告げて軽い足取りで職員室に向かった。
「失礼しまーす……あれ?」
職員室にはほとんどの先生がいなかった。
「終業式の準備かな?」
9時開始だというのに、行動が早い教師たちだ。
「ここに提出して、これでおしまい!」
やっと終わった宿題で晴れやかな気分だ。
『あーあー、マイクテスト、マイクテスト』
ん? いきなりスピーカーから放送が流れだした。
『……OKみたいだね。それではみなさん、おはようございます。みなさんには残念なお知らせがあります。この学校は、ブラックポイントが占拠いたしました』
「は!?」
突然、わけのわからない放送。そして、防火シャッターが閉まり始めた。
『みなさんは人質です。しかし、大丈夫です。目的を達成したらさっさと帰りますから』
防火シャッターで完全に遮られてしまった。しかし、防火シャッターなら普通、閉じ込められた時用に小さい扉が付いてるはず。
防火シャッターをチェックしてみたが、そんなものは付いていない。
「あ、あれ?」
細かく確認してみるが、間違いなく付いていない。
そんなときに大和が言ってたことを思い出した。この学校には防火シャッターのほかに、誰かが侵入してきたときに隔離するための防犯シャッターも付いている。これを全部閉じれば、この校舎の人間は絶対に逃げれなくなる、って。
「まさか、それ?」
「貴様、何者だ!?」
後ろから現れたのは黒タイツで全身を覆っている変人。
「お前こそ何者だ!? どこの変人だ!?」
「変人だと! 失礼なことを言うな! これはブラックポイントの由緒正しい制服なんだぞ!!」
ブラックポイント。よくわからないけど、国連警察のチームっぽい感じの名前ではある。しかし、桧木さんには手を出さないと……いや、そんな約束を守る理由は相手にはないわけだし、現在も桧木さんは軟禁中。もしかしたら他の狙いがあるのかも。
「姿を見られたからには殺さなければならないな」
「勝手に姿を現しといて!?」
とにかく、目的は何であろうとここの誰かが狙われているわけだ。だったら、僕はその誰かのために戦う。
「それに、死にたくないし」
僕もエアガンを取り出した。
一方の他……
「僕としたことがこんな物に巻き込まれてしまうとはね」
ちょっと暇だから適当に歩いて時間をつぶすつもりだったのに、まさか帰れなくされてしまうなんて。ああ! 神は僕に試練を与えるのか!
……そんな冗談を考えているわけじゃないね。この感じはおそらく、防犯シャッター。これを使われるとすべての鍵が自動的にロックされちゃうんだよね。廊下に出てたのはラッキーだったけど。
「こうなったら、僕も戦わないといけないのかな?」
パンッ!
突然の発砲。だけど、それくらい僕にはわかる。
軽く体をひねってよけながら、相手の方向を向いた。そこにいたのは全身黒タイツの変人。
「……」
「この発砲をよけるか!」
「……」
「こうなったら、これを見よ! 法律では禁止されているサブマシンガンだ! これで貴様をハチの巣にしてやるわ!」
「……」
「どうした!? あまりの恐怖で声も出ないか!?」
「……はっ! 驚いたよ。君たちのあまりのセンスの悪さに思考が完全停止していたよ」
「なんだと!?」
たとえ地球が恐怖の大魔王に壊されることがあろうとも、全身黒タイツはない。もし全身黒タイツを着ないと死ぬと言われても、僕は着ない。そんなの着るなら死んだほうがましだ。
「我が部隊の制服を侮辱するか!!」
「別に君たちの制服は侮辱していない。それを着ていられる君の神経を侮辱したんだ」
「殺す!」
何がいけなかったのかサブマシンガンを撃ってきた。とりあえず、応戦しようか。
「なんで?」
始業式が始まる前に、のんびりと廊下を歩いてたらいきなり変な放送。そして、閉まるシャッター。そして、目の前には黒タイツの変人さん。
もうすぐ終業式ってところで、なんでこんなことになったんだろう? チーちゃんは大丈夫かな? ショウくんやノーくんもどっか行っちゃったし。
「うひょ! うひょ! 女だ!」
……とりあえず、私の心配したほうがいいのかな?