表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHOT GUN!  作者: ヒッキー
特訓!!
100/109

99発目 最悪の悲しみ

「これ以上はやばいわね」


 休憩エリアで考えていた。今日はまだ食らってないけど、これまでのダメージがきている。たぶん、これ以上食らったら致命傷になる。


 ならどうするべきか。今まで私は戦うことに必死だった。相手を倒すことに必死だった。でも、やり方しだいでどうにでもなるんじゃないだろうか?


「来なさい!」


 拳銃を構えて全体に感覚を研ぎ澄ませる。なんとなくわかってきた。


 才能ってなんなのか考えてた。最初は力や技術の伸びやすさみたいなものだと思った。でも、それなら大和は努力で何とかしてる。つまり才能って、努力でどうにもならないことなんじゃ。


 だったら、技術でどうにかなる部分が才能。なら……


「これでどうよ」


 敵をしっかりとは見ない。感覚的に撃つ。そして、その間も銃弾が飛んできたら最小限の回避でかわす。これを繰り返す。ただ機械のように。確実に。


「お疲れ様」


 気付いたらゴールしていた。


「これって……」


「なんとなく気付いたみたいだな。さて、今日はちゃんと見れそうだな」


 大和は食事を用意してさっさとビデオまで用意した。


「この流れで行くと、今日は翔?」


「……そうだな」


 ? なんか大和の表情が暗かったような?


「始まるぞ」


 そう言われたので画面に目を向けた。


『これで終わり!』


 画面で少年が的に何かを撃った。軽い音だし、たぶんエアガンだ。


 画面に映っていた少年は茶髪に子供っぽい表情。間違いなく翔だ。何回かビデオでも出てたし。たぶん一番最初、小学校入試のころだろう。


『また翔かよ!』


『さすが、乍瀬小学校に入学決めただけあるな!』


『へへ。まぐれだよ。僕よりすごい人もいたし』


 ショウが話すことを興味深そうに周りの少年たちが聞いている。最初の映像でもわかってたけど、ショウはこのころから明るくて笑顔の多い少年だったみたいだ。


「わかっていると思うが、一応説明するとこれは乍瀬小学校の合格発表から1ヶ月後ぐらいの様子だ」


「ここって河原かどこか?」


「ああ。翔の周りにいるのは同じ保育園に通ってる友達。あいつの両親は共働きだったからな」


 ……あれ? なんか違和感があったような? 気のせい?


『じゃあね!』


 そんな確認をしてるうちにどうやら映像は夕方になっていたらしい。


『バイバーイ!』


 翔もみんなと別れて帰路についていた。子供1人というのは怖い気がするが、特に誘拐犯などの変な人間が現れることなく翔はある一軒家の前で止まった。きれいな2階建ての家。


 ピンポーン!


 この歳の少年が鍵なんて持たせてもらえるわけがなかったみたいで、ショウは自分の家らしき場所のインターホンを押した。


『……あれ?』


 ピンポンピンポンピンポン!!


 ショウはインターホンを連打したが誰も出てこない。ショウも不思議そうだ。


『おかしいなあ? ちゃんと約束の時間までには帰ってきたし、何も悪いことはしてない……はず。……もしかして、お父さんもお母さんも買い物に行っちゃってるのかな? ならどうしようかな? まさかカギが開いてる、ラッキーなんてこと……』


 ガチャッ!


『あれ?』


 ショウが扉に手をかけると普通に開いてしまった。


『まったく、お父さんもお母さんも開けっ放しで出て行っちゃたのかな? それとも寝てるとか? どっちにしても不用心だよ』


 そのまま扉を開けて靴を確認すると、そこには大人の靴らしきものが2足あった。


『お父さんもお母さんもいる。つまり寝てるのか』


 ショウは靴を脱いで中に入った。そして、両親の寝室を見た。


『……いない』


 寝室は電気も付いていなければ、中に人などいない。


 がたんっ!


 そんな事をしていると、奥から何か物音がした。


『リビングだ!』


 ショウはリビングに向かった。


『お父さん! お母さ……』


 そこには、確かにショウの父親らしき人も、母親らしき人もいた。そして2人とも寝ていた。


 真っ赤な血に染まりながら。


 そして、目の前にいたのはショウと同じくらいに見える少年。手には真っ赤に染まった日本刀を持っている。


『もしかして、息子さんかな? 息子さんがいたなんて聞いてなかったけど』


『……』


 ショウは何も言わない。それに対して、もう1人の少年は罪悪感も何もないように軽く話している。


『どうしようかな? 隊長はターゲット以外殺すのは怒るし』


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!』


 子供の頭でも分かったんだろう。あの少年が両親を殺したことを。殺そうとして殺したことを。


 ショウは子供とは思えない速さで、日本刀を持った少年に近付いていった。しかし、相手は日本刀。しかも、ショウの動きは直線的すぎる。これでは、単純に危ない!


『襲ってこられたらしょうがないよね』


 日本刀が降りあげられ、ショウにカウンターで振り下ろされる。


 キンッ!


 その刃はショウまで届かなかった。その日本刀をショウは持っていたエアガンで受け止めたのだ。


『えっ!』


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!』


 叫びながら振り上げたショウの足が、日本刀を持った少年の腹にクリーンヒットした。しかし、子供の攻撃だったからか大きなダメージを与えられなかったらしく、少年はすぐに立ち上がった。


『まさか、ぼくと同年代で攻撃、しかも近距離攻撃を食らうとは思わなかったよ。まあ、ちょっとは油断してたけど』


 そんなことを言ってるうちにショウは2撃目を狙って近づいていった。日本刀を持った少年は、同じようにカウンターを狙った。それはさっきと同じように止められた。……はずだった。


 キンッ!


 ショウの持っていた拳銃ははじかれた。


『握力はまだまだだね』


 ショウはお構いなしに蹴りを喰らわせようとしたが、それも今度は下がられて避けられた。


『さて、こいつも十分な危険因子……』


『どうかしたんですかー!?』


 ショウが大声で叫んで戦闘していた音に気付いて、外から誰かが声をかけてきた。


『……命拾いしたね』


 少年は閃光弾を爆発させた。光が消えたときには、もうその姿はなかった。


『……ねぇ、起きてよ』


 ショウは両親に近付いていく。


『今度、本物の拳銃をくれるって言ったでしょ、お父さん。入学祝いにおいしい物作ってくれるって言ったでしょ、お母さん』


 ショウが2人をゆするが、当然、反応はない。ショウの手に血が付くだけ。


『ねぇ、起きてよ。僕、おなかすいたよ。僕……』


 ショウの目から涙が流れてきた。そして、語尾がどんどん弱くなっていく。


 ショウは揺するのをやめた。


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ…………』


 そして叫んだ。目に涙を浮かべながら。壊れたように。






「……これでおしまいだ」


「……」


 私の過去は誰のよりも壮絶だったんじゃないかと思った時期もあった。しかし、ショウのは比べものにならない。


 目の前で両親を殺した犯人にあっているんだから。


「この後は近所の人間がさすがにおかしいと思って中に入ったらこうなってて、警察や救急車を呼んだが、翔の両親は即死。翔も身体ダメージと精神崩壊1ヶ月ぐらいの入院を余儀なくされた。そして、復帰した時の翔は死人みたいだった」


 これだけのことが、しかもまだ小学校に入学する前の子供が見たんだ。普通ならもっとひどい状態だったかもしれない。


「……今の翔からは想像もできないわ」


「俺らで戻したんだよ。最初のころ、翔は復讐のために強くなろうとしてた。それを小学校時代全部をかけて。もはや催眠レベルまでな」


「じゃあ、今は覚えてないの?」


「いや、覚えている。ただし、復讐の感情を封印させているから簡単に暴走したりはしないんだ」


 簡単に、と言われてこの前の翔が思い浮かんだ。京都の時のおかしかった翔。


「前の京都のは?」


「……簡単にとは言うが、所詮催眠だ。何かきっかけがあれば外れる。あいつの場合、誰か知り合いが死ぬことと、日本刀などが人に向けられること。一ノ瀬が4校大会の時に話してたこと覚えてるか?」


「翔があんたと望を除く3年生を全員倒したってやつ?」


「ああ。あれの原因は家から日本刀を持ってきたやつが、周りの生徒を切るふりをしたのが原因だった。その結果は聞いた通りだ。3年生は全員やられ、俺と沖川で強引に倒した」


 京都では大和が簡単に抑えていたように見えていたけど、もしかすると完全に覚醒したショウはあの2人よりもはるかに強いのかもしれない。


「でも、催眠って1回解けたらダメなんじゃないの?」


「翔にかけた催眠はどちらかって言うと理性に働きかけて、理性によって復讐という感情を抑えさせているんだ。つまり、ある程度落ち着いて理性が追いついたら治る」


 つまり、ショウは理性で復讐という感情をある程度抑えているってことだ。大和たちが催眠みたいなものをしているとはいえ、復讐という感情を抑えるというのはそう簡単じゃない。特に、目の前で両親が死んだとなれば。


「こんなときに悪いが、明日の予定だ。明日は特別メニューを用意しておく。卒業試験みたいなものだと思ってくれ」


 そういえば、私の特訓は明日で終わりになるんだ。


「明日失敗したらすべてダメになる。どういう気持ちだ?」


「そんなの決まってるじゃない」


 確認されなくても決まってる。


「今度こそ、本当の仲間になってやるわよ」


 私は啖呵を切った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ