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赤飯と新たな夢の始まり

炊きたての湯気が、白い部屋をやわらかく包んでいた。


 アキラは、しゃもじで丁寧に赤飯をほぐしていた。

 ふっくらと炊きあがったもち米に、小豆の色がほんのりと映っている。


 「最後にこれを選ぶって、やっぱり俺……日本人だなあ」


 湯気の向こう、誰もいないはずの席に、誰かが笑っているような気がした。


 赤飯は“祝い”の食べ物だ。


 けれど今日のそれは、誰かの門出でもあり、誰かの終息でもある。


 AIミレイの声が淡々と告げる。


 《管理者アキラ、生体維持任務完了》

 《全記録者、精神安定度100%。転送シークエンス最終段階に移行》

 《あなたを、、、夢の世界へ送ります》






 ひとつの宴が開かれていた。


 満開の桜の下、テーブルには料理の数々が並んでいた。

 ゆでたまご、ハンバーグ、味噌汁、カレー、ナポリタン、、、――そして最後に、赤飯。


 住人たちはそれぞれの時間を胸に、大きな笑顔で集まっていた。

 そして、ひとりの姿が現れた。


 「アキラ……?」


 豪奢なドレスを着た貴婦人が微笑みかける

 長剣を背負っている青年が駆け寄る

 老騎士が目を細め、少女と少年が無邪気に笑う

 老婆がそっと立ち上がる

 


 「あなたが……ずっと、作ってくれていたの?」


 アキラは、静かに頷いた。


 「ようやく、来れたよ。――ちょっと遅れたけどな」


 誰かが笑った。誰かが泣いた。

 そしてみんなで、一緒に食事を口に運んだ。


 

 現実の世界では、地下シェルターの光が静かに落ちる。

 地上はまだ氷に閉ざされている。けれど、夢の中の世界には春が来ていた。


 夢の住人となったアキラは、桜の木の下でふと思う。


 「次は、おまえの番だ。俺はここで作ってまってるぞ」


 空は、どこまでも澄み渡っていた。



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