悪役令嬢の前にヌゥと出てくるスパダリ
「エリザベート、サリーをいじめたな!」
「グスン、グスン」
「いえ、注意をしただけですわ!」
「毎日、注意するじゃない!」
突然、パーティーの最中、喧嘩が始まった。ここは学生の自治に任せよう。
私は、ファインツ、この国の王の歳の離れた弟にして、今は学園長をしている。
「学園長、止めなくて良いのですか?その私達教員では身分に差があり。止めたら・・」
「良い。甥のハーライフも王族の男子、そろそろ自覚を持たせなくてはならん。最後私が出る」
「はい」
私は26歳、エリザベートとは8歳差だ。もし、婚約が解消されたのなら・・エリザベートは公爵令嬢だ。他に婚姻相手は難しい。王妃教育も受けているし・・・
「エリザベート!お前とは・・婚約を破・・・ウグ、グハ」
バタン!
「殿下が倒れたー!」
「キャアアー、誰か、回復術士を呼んでーーー」
「「「はい」」」
エリザベートは回復術士を呼べと叫んだ後は、口を押さえてペタンと座り込んだ。切目がワナワナ震えている。
「な、何」
男爵令嬢、サリーが、王子の胸に耳を当てている。密着している・・・
「心肺が止っているのだからね!」
「「「キャアアーーー!」」」
な、何と、王子にまたがった。これは、閨の型に似ている・・・
そして、両手を組み、胸を押し出した。
「1,2,3,4・・・フフフフフンだからねっ!」
ハミングをしながら、一定のリズムで王子の胸を押している・・・
しばらく同じ動作をしたら、王子の首を持ち上げて、
「エリザベート様!支えてなのだからねっ!」
「はい」
「気道を確保だからねっ!」
「「「キャアアアアー」」」
「キス!キスだわ」
「み、皆様、お静かに!回復術士の方はまだ!」
エリザベートが皆を静めているが、サリーの行動が分からない。
キスをして、空気を吹き込んでいるようにも見える。
「プハ~!」
王子が目を覚ました。
「「「キャアアーー」」」
「サリー様、殿下は気がつきましたわ」
「良かったのだからね」
エリザベートとサリーはお互いの手のひらを合わせて、キャキャ喜んでいる。
「到着しました!殿下が倒れたと聞きましたが・・・」
「回復術士、こちらです。今、サリー様の奇妙な・・施術で目を覚ましましたわ」
「な、何と・・・」
それから、回復術士は王子を診察して・・・
「気が高まり過ぎましたのが原因でしょう。しかし、サリー様の処方は珍しい。詳しく教えてもらいたい」
「良いのだからね。心肺蘇生法だからね!」
「さあ、ハーライフ殿下、保健室に、しばらく安静に」
ここで私は思わず声をかけた・・・
「おい、婚約破棄は良いのか?」
と。
すると、皆はキョトンとしている。
「学園長様、その、今はそれどころではございませんわ」
「学園長、馬鹿?殿下は早く保健室にいかなきゃだからねっ。何で今、ぬうと出てくるのだからね!」
「ウウ、まあ、待て、伯父上、少し、話をしましょう」
・・・・・・・・・
話を聞いた。
エリザベートは、サリーを注意していたそうだ。
「サリー様は学園の秩序を壊します。授業をサボって、猫の集会に参加します。串焼きをくわえて廊下を走って・・・それに殿下に近いですわ」
「だって、殿下好きなのだからねっ!」
「でも、顔が良いだけの馬鹿ですわ。愛はこれから育めば良いと思っていましたわ。私も王妃の責は荷が重たいと思っていましたの。政略ですし・・」
「私は、理由はどうであれ、公然とキィスをされたのだ。責任を取らねばならん。サリーよ。もう、これで私以外と婚約できなくなったな」
「キャー!キャー!だからねっ」
「まあ、仕方ないですわね。私はお父様に言って身を引きますわ」
「ちょっと、待て!それで良いのか?!サリーに王妃が務まると思うのか?」
「「思わない」」
「出来るわけないじゃない!」
「そうだ。私は王宮を去る事になりそうだな」
その通りにならなかった。
「え、ハーライフは廃嫡にならないのですか?兄上」
「我が子だ。不行跡があったぐらいでそれは行きすぎだろう。そこまでの罪ではない。話会いの結果、婚約解消だ。公爵家の面子を立てたらそうなる。
エリザベート嬢のためでもあるのだ。ここでハーライフを厳罰にしたら、まるで、エリザベートに瑕疵がついたように見る勢力がある」
「ええ、そうよ。男爵令嬢に王妃が務まりませんわ。本人も王妃は無理と言っていますわ」
あの男爵令嬢、野望を持てよ!
「それでは王位は如何されるのですか?」
「ファインツ、お前がつなぎの王となれ」
「ええ、そうね。ファインツの子と公爵家の生まれてくる子と婚約させてもいいわ」
「それでは、私はエリザベートと・・・婚約?」
「「それはない」」
二人とも手を顔の前で振りやがる。
「何故?」
「何故も何もお前は公衆の面算でエリザベートが叱責されているときに、出てこなかったではないか?」
「しかし、義姉上、王妃教育を受けたのではないですか?」
「まだ、とっかかりよ」
何だと・・・・こういった場合、ヒーローは最後に出てくるものではないか?
それから、俺は王太子になった。婚約者は選定中だ。
ハーライフは、王宮で役職につくらしい。ワチャワチャしてやがる。
ハーライフとサリーは王族の一員として、民の前に出て、手を振る。
「「「「ワー!殿下!とピンク頭の王子妃」」」
「身分差の恋ね!小説みたいだわ!」
サリーは回復術士にあの救急蘇生法を教えている。その方法は前世の記憶とか不思議な事を言っているそうだ。だが、生意気にも評判だ。
ハーライフはこれから役職につくらしい。妙に気っ風が良いから、形だけの長に適任との評判だ。
私は・・・・それから学園の卒業式に参加をした。
☆学園卒業式
「キャサリヌ、私は真実の愛に目覚めた!真実の愛を邪魔するお前とは婚約を破棄する」
「左様ですか。なら・・・えっ、王太子殿下」
ドカッ!
「うわ!」
「キャアアアー」
私は浮気者の二人を蹴飛ばした。
「他でやれや!ボケ!カス!何で、私が来る時間と場所を選んで婚約破棄をするんだ!今日は私が来るって分かっているだろうが!」
「ヒィ」
婚約破棄を宣言された女子生徒も逃げ出した。慌ててスカートの裾を持たないで走ったので転んだ。
「キャア!」
「大丈夫か?」
誰か手を差し出した。あれは騎士科の学生ロバーツか。
「有難うございます。お優しいのですね」
「騎士として当然でございます」
おい、馬鹿女、騙されるな。騎士科の学生は決闘文化がある。私よりも粗雑だ。
騎士の妻は気が強い方が上手く行く。そういった気の強い階層があるのだ。
仕事以外で傅かれると思うなよ。
「さあ、こちらへ」
「有難うございます(ポッ)」
思ってやがる。
☆王宮
「ファインツ、侯爵家筆頭のグリュエール家のキャサリヌ嬢はどうか?」
「8歳差だわ。それほど歳の差はありませんわ」
「兄上、義姉上、断ります」
「「何故?」」
「それは、私が婚約破棄をする立ち位置になるからです」
「意味が分からない」
「つなぎの王と言ったのは謝るわ。知っているわよね。キャサリヌは婚約破棄されたのよ」
「だからです。私は・・・」
言語化できない。
婦女子を無条件で一方的に愛する存在になってはいけない。
行きすぎた愛は拘束、執着、女を虐待する・・・籠の鳥か。よほど優秀な女でなければ自滅するだろう。
‘‘スーパーダーリンだからねっ’’
耳に特徴的な語尾の声が聞こえた。
タタタタタ~
後ろ姿が見えた。王宮で走る令嬢、しかもピンク頭・・・サリーか。
スーパーダーリン、それは、本当は利己的で、計算高く、令嬢が虐げられてから出現し、一方的な溺愛を与えるおぞましい存在・・・
俺はスーパーダーリンになる所だったのか?
兄上に進言をした。
「普通に愛を育めて、お互いに支え合う令嬢と見合いをお願いします」
「そうか、断りを入れよう」
「そうね。なら、私の親戚の子を当たるわ。派閥的には不公平が出るかもね。それは貴方が何とかしなさい」
「はい、兄上、義姉上、有難うございます」
王位を継ぐのだからそれぐらいの希望は良いだろう。
最後までお読み頂き有難うございました。