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弐の巻「紫鬼」
どうやら麓の村では、俺のことは荒神だと伝わっているらしい。
この娘は、自分は生贄としてやって来たという。
やれやれ、人間の考える因習には呆れて物が言えない。
「この禍禍しい紫色の角を見れば分かるだろう? ここは廃寺で、俺は住職でもなんでもない」
「でも、村に厄を持ち込むから、家には帰れないんです……」
「……弱ったな」
ええい、学のない俺が座して黙考しても休むに似たりだ。
俺は僧房にある作務衣と草履を取ってくると、呆然と立ち尽くしている村娘に投げ渡した。
「ひとまず泊めてやるから、そこの講堂で着替えて来い」
「いいんですか。ありがとうございます」
今泣いた子が、もう笑う。
とりあえず飯を炊いてやるかと食堂に向かおうとした時、聞き慣れた嫌な声が耳に入った――