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壱の巻「村娘」
村長の娘として衣食住に困ったためしはありません。
それもこれも村外れの荒神様に奉げられるためでした。
「荒神様が鎮座なさる御社は、この石段を登った先だ。ゆめゆめ振り返るでないぞ」
「はい。行って参ります」
どれほどの時間が経ったでしょう。
正絹の着物にぽっくりを履いて石段を登るのは、なかなか骨が折れます。
足腰に疲れが溜まり、日も暮れ始めたころ、ようやく山門が見えてきました。
教わった通りに門戸を四度敲くと、少し間を置いて潜り戸の方が開きました。
小僧さんかしらと思って音のした方へ向くと、そこに立っていたのは――