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別視点があります。
「わけだ。……どうして暦は布団に潜っている? お化けの真似をしているのか?」
「恥ずかしいからに決まってるでしょ……。この場には逃げ込める暗闇がここにしかないの……」
「恥ずかしがることではないぞ。むしろいいことだ。メイプル王子と再会王子が暦を取りあって平和的決闘をしたんだ。これはある意味羨ましいシチュエーションだぞ暦」
「ええ……」
私は頭を抱えた。
「ひじのシルエットがよりお化け感をだしてるぞ」
「はあああ。もう私はこれからどう二人と接したらいいのよ~!」
「そう深く考えるな暦。それだけ二人も真剣だったということだ。それに、再会王子は昔のことを忘れてはいなかったぞ」
「……え? 翔子ちゃんどういうこと?」
私は布団から顔を出した。すると翔子ちゃんは立ち上がり、私に顔を近づけた。
「『暦、俺はあの時とは違う。今はもう君を守れるんだ』っていってたよ」
「ほえあ~!?」
私は布団に顔を落とした。
――夏月くん、やっぱり覚えてたんだ……。
「それじゃ、私は授業に戻るから。暦は気絶したんだから念のためにゆっくり休んでよ」
「うん、ありがとう翔子ちゃん」
保健室の扉が締まると、私は小さく息を吐いた。
私が気を失ってる間にそんなことが起きてたなんて……。
私は意識を失う直前のことを思い出す。清水くんが私に「愛してる」といわせた後、清水くんが「俺も」と返したあの出来事を。
「うう~もう……。清水くん、あんなことをしていったい何を考えてるんだろう……」
自分の中に抱く疑念が自然と口をついた。
「――聞きたいか?」
声がした。
「え……?」
「俺が何を考えているのか、聞きたいか?」
見ると保健室の扉は開いており、そこには清水くんが立っていた――。
◇
清水くんはそっと保健室の扉を閉める。
そしてかちゃりと鍵をかけた。
「お見舞いにきたよ、プリンセス」
「ちょっと、清水くん? 何してるの……?」
清水くんは黙ったままベットに腰かけると、身体を寄せて私のあごを指でなぞった。
「眠れる森の美女はキスで目覚める……」
「え? な、何?」
「だったら、目覚めたプリンセスにキスをするとどうなるのか、暦は知ってるかい?」
「何? どういうこと――」
と、いい終える前に口が遮られた。
――え、ちょ……ちょっと!
私はキスをされた。
だけど、それだけでは終わらなかった。
私はそのまま清水くんに押し倒されてベットへ倒れ込む。
「だめ! だめだって! ちょっと待って! 清水くん急に何するの!?」
私は清水くんの肩を押し上げる。だけど上手く力が入らない。
「ねえ、清水くん! だめだって! こんなところを保険室の先生に見られたら……」
「先生は来ない」
「え……?」
「先生は、しばらくは戻ってこないよ」
「ねえ、どういうこと……?」
しかし清水くんは答えてくれず、私の首元に顔を近づける。
「やっ! ちょ、ちょっと待ってってば! ほんとにどうしたの清水くん!?」
「暦は俺の気持ちを知りたいんじゃないのか?」
「知りたいよ! 何考えてるかわかんないもん! だけど……だけどもっと違うやり方もあるでしょ!?」
「俺は不器用だから、この方法しか知らない」
そういって清水くんは、私の唇をまた奪っていった――。
◇
<翔子視点>
チャイムが鳴って授業が終わる。
「さてと。暦の様子を見にいくか」
私は階段を下りると保険室の先生と出会った。
「あ、先生。暦の様子はどうですか?」
「こんにちは永瀬さん。一年さんがどうかしたの?」
「さっき体調不良で保健室まで案内したのですけど、見てないですか?」
「そうなの? いやごめんね。実はさっきまで体育館にいたのよ。二組の体育でちょっとした事故があってね」
「そうなのですね。先生も大変ですね」
「保健室を空けることはあまりないのだけどねえ。一年さんには悪いことをしちゃったわね。早く戻ってあげないと」
そういって保健室の先生は手に持っているものに視線を落とす。
「先生、それは何ですか?」
「これはね、さっき生徒さんを助けた時にお礼としてもらったものなの。先に職員室に持っていってから保健室に戻ろうと思ったのだけど、先に保健室にいったほうがよさそうね」
保険室の先生は私にそれを見せてくれた。
それは、新品のメイプルシロップだった。
私は何か嫌な予感がした。暦から聞いてたからだ。メイプル王子はメイプルシロップを持ち歩いていると。
「先生も早くきて」といい、私は保健室に急いだ。
◇
保健室の扉が勢いよく開いた。
「うわあ! びっくりした……」
「暦! 大丈夫?」
「え? ああうん。大丈夫だよ」
「そうか。……考えすぎだったか」
「どうしたの翔子ちゃん?」
「いや、何でもない。……六限目の授業は受けれそう?」
「うん! 受けるつもりだよ」
「そうか。なら一緒に教室に戻ろう」
翔子ちゃんは私に近づいてきた。
「待って翔子ちゃん!」
「ん? どうしたのだ」
「えっと……その……」
「うん」
「服……今は着てないの」
「服? もしかして寝る時は服を脱ぐ派なのか?」
「そ、そうだよ~。あは、あはは……」
そして私は制服を着直し、翔子ちゃんと保健室を出た。
◇