44.カズは無事なのですね!?-この人は! 私の事を知っている!?-
全47話です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
撤退を余儀なくされ、アルカテイル市からエルミダス基地に戻ってきたクリスたち、特にカズの機体は直ぐに整備に出された。と、同時にあらかじめ連絡を入れておいたせいだろう、基地の人間ではない外部の人が待機していた。
「カズは! カズは無事なのですね!?」
その中でも一人、目を血走らせている人物がいた。
――苦手な、男の人……。多分口調からすると研究所でも偉い人なんだろうな。
「はい、ですが治療が必要だと……」
クリスはゼロゼロとのやり取りをその人物に話すが、
「きみですか? 彼を守れなかったのは!」
相も変わらずまくし立てている。
クリスは、出来ればこういった状態の男性には近づきたくないと考えていた。彼女は男性というだけで恐怖心を抱いてしまうのに、この状態である。普通の人でもそれは同じだろう。誰だって怒鳴っている人の対応などしたくない。
だが、隊長が不在の今、次に立場が上なのはクリスなのである。当然、そういった対応も彼女の仕事になってくる。周りにいる皆に任せる訳にはいかない。
――嫌だな。
「先行を大尉がかって出たのですが、仕方なかったとはいえ自分たちも一緒に事態にあたった方が良かったと……」
とまで言って、クリスの体は飛ばされていた。相手が強烈なビンタをかましてきたのだ。
「いいですか、彼は! カズはあなたたちのような替えの利くような存在ではないのです! 彼の性格だ、きっときみらを置いて先行したのだろうが、それを止めるのもきみらの仕事でしょうが! それくらい分かるだろうが! だから女子供は嫌いなんだ! チトセだって! やっとカズを手に入れたのに! カズには言ったんだ、ワンワンをもう少しうまく使うように、と。アイシャ、ミーシャ!」
「はい、マスター」
そう呼ばれたので二人がその人物の前まで出ていく。
と、
「今、ここでカズに謝りなさい。[役に立たずに申し訳ありません]と。そんな無能がなぜ服を着ているんだ、直ぐに脱ぎなさい! そして、彼の運ばれた病室に向かって土下座をしなさい! おでこを擦り付けて!」
そう言われた二人は[申し訳ありませんでした、マスター]と口をそろえて言ったあと、一瞬の躊躇もせずにパイロットスーツを脱ぎ始めた。彼女たちに表情は全くない。その様は、しいて言えば人形に、アンドロイドに命令したような、そんな様子である。
――周りには他の人もいる。怖い、怖くて足が震える。でも止めないと。
クリスは頬の痛みも忘れ、震える声で、
「そんな事をしなくてもいいのではありませんか?」
と言って相手の顔を恐る恐る見る。と、相手はすごい形相のまま、
「きみも、彼を守れなかったのでしょう? 同罪だ、脱いで土下座をしなさい」
そう言われたのだ。普通ならこんな無茶な要求をしてくる輩というのはその表情が大体ニヤついているのだが、その人物は全くそんな事はないように見える。純粋に彼女たちに対して怒りをぶつけ、謝罪を要求しているのだ。
――そんな事出来ない。男の人ばかりいるのに、服を脱ぐなんて。
クリスの脳裏を、孤児院での身体検査の思い出がよぎる。何度も、何度も縛られ猿轡をされ涙とよだれを垂らし[オブジェ]になった記憶が。
「あぁ、そうか。きみはクリスですね? そうすると男が見ている方がいいのでしょう? もっと連れてこようか? さては[オブジェ]が好みかな?」
――この人は! 私の事を知っている!?
ここにいるのは、クリスたちレイドライバーのパイロットと今怒鳴っている人、研究所の職員と思われる人が二人、それから基地の警備員が二人である。もちろんパイロット以外は男性である。
「何でそうなるのよ! 直ぐ撤回して!」
見かねたのだろう、レイリアが声を上げる。
だが、その人物が手を挙げる前に研究所の職員が後ろ手に抑え込む。基地の職員はそんなやり取りを見てすごく気まずそうにしている。それはそうだ、自分たちはただ警備にあたっているだけなのだから。どちらかと言えば、大戦果を上げている彼女たちを守るべき存在なのだから。
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