28.私とカズくんのペアリングも-テストはしてもらえないかな?-
全47話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「千歳ちゃん、大丈夫なの?」
千歳がこの場所で研究をしているのは恵美も知っている。彼女もまた直ぐに現場に駆け付けようとしたが少し手間取ってしまい、着いた時には既に規制線が張られ、恵美はその現場に近づけないでいた。
そんな彼女の前に、当のカズが現れたのだ。当然、現況の確認をしたい、というのが人情というものだ。
ましてや、それが彼女の大切な友人である千歳が関わっている事なら。
対して、カズの表情は沈んだままだ。
そんなカズに、
「教えてくれないかな? 私にとっても大事な人なの」
その言葉に押されたのか、カズは恵美に今まであった出来事を順に話した。
「そんな、そんな……」
――何で、千歳ちゃんに限って、そんな……。
全部を聞き終えた後の恵美は手で口を押えていた。その声は少し震えていた。
「あぁ、俺も信じたくない事だけど、事実なんだ。千歳は被検体になる事を選んだ。そして、俺は彼女の命を使う事を選んだんだ。そして、所長をやりながらパイロットになる事を選んだんだ」
「他に道は……あれば選んでるよね、ゴメン。パイロットに、って事は例のペアリングは成功したんだね」
恵美は動揺が隠せなかったが、研究者としての興味か、それとも[不幸の中の幸い]を探す為か、そう聞いた。
「ああ、以前にもしかしたら子供が出来たときに、と思って。テストだけしてマッチングする事は確認してあるんだ」
「ねぇ、こんな時にこんな事を言うのは良くないかもしれない。良くないと思っているんだけど」
恵美は改まってそう言う。
「なんだろう?」
まだ千歳の事を引きずっているカズに、
「私とカズくんのペアリングもテストしてもらえないかな?」
そう言ったのだ。
「えっ? それは」
「自分でもいけない事を言ってる自覚はあるんだ。でも、どうしても自分を抑えられなくて。お願い、出来ないかな?」
この状況でペアリングを願い出る、というのはつまり、
「きみもロボットに乗るつもりなの!? それも……」
「ええ、生体コンピューターに、サブプロセッサーなって」
その言葉を聞いたカズは何も言えないでいた。
――貴方たちと一緒にいたい、私の願いはただ一つなの。和也くん、きみと……。
沈黙がしばらく続いた。
カズにしてみれば、死亡したわけではないが、事実上最愛の女性を失ったといってもいい状況なのだ。そこへの恵美の申し出、である。それは、さらにまた一人身近な人を失う事を意味している。
「形は変わるけど、三人で一緒にいられる、それに変わりはないわ。もちろん二人の間に割って入るのは良くない事だって、分かってる。ううん、分かってるつもりになってるの」
恵美は少し熱くなっていた。
恵美には分かっている、カズがそれを望まない事を。それでもカズのそばにいたい、その想いだけが彼女を突き動かしているのだ。
「襟坂さん、自分が何を言っているかは分かっているよね? 俺はこれ以上の人を、自分のそばにいる人を失いたくないんだ」
「うん、それは分かってる。それでも、ダメ、かな?」
――お願い、和也くん……。
カズはしばらく考えた様子だったが、
「やっぱり、俺はきみまで失いたくない。それじゃあダメかな」
そう、言ったのだ。それは常識的な判断だと言えよう。
「でもっ、マッチングテストはしてもらえないかな? 何があってもいいように」
恵美も食い下がる。
恵美は喉まで出かかっている言葉を飲み込むのに必至だ。自分でも[イケナイ事]を考えているのも分かっている。だが、今の恵美は千歳の事も相まって、いつもなら心に仕舞ってあるはずの心が動揺していた。
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