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16.千歳、きみを愛している-結婚しよう-

全47話予定です


 そして、


「千歳、きみを愛している。今までは[好き]だった。だけど今は[好き]っていう気持ちじゃあない。[愛して]いるんだ」


 とまで言ったあと、


「結婚しよう、千歳」


 カズは自分でも[このタイミングでこの言葉はズルいな]と思う。だが、この気持ちを伝えたい、こんな時だからこそ伝えておきたいとも思う。


 一番大きな気持ち、それは千歳の事を[愛して]いるという事なのだ。カズは自分でもこんなに[好き]と[愛して]いる気持ちに違いがあるなんて思いもしなかった。


 ――女性ひとを愛するのはこんな気持ちなのか、今まで知らなかった。


 そのカズの言葉に千歳は、


「あたしでいいの? 本当に?」


 千歳が改めて聞き返してくる。カズはそれに答える代わりに、彼女を抱きしめてまたキスをする。


「さっき[あたしの人生はきみのものでもある]ってきみは言ったけど[俺の人生も千歳のものでもある]と思っているよ」


 カズは千歳の事を本当にいとおしく思う。この人の為なら人生を委ねてもいい、恐らく彼女もまた同じ気持ちなのだろう。


 その証拠に、


「あたしでよければ、一緒になってください」


 と一筋の涙と共に返って来たのだから。


「こっちこそ、よろしく」


 お互いに笑顔になる。


 そんな、ひとしきり感情の波が収まったところで、


「ねぇ、カズ。それでこれからどうするの?」


 と改めて聞いて来る。その質問に対するカズの答えはあらかじめ決まっている。


「俺は[生体応用工学研究所]に入りたいと思っている。人体実験の事については、何と言うべきか……」


 カズも言いにくそうにしている。


 そんなカズを見て、千歳は、


「教えて、どんな事でもいいから。どんな事でもあたしの、きみに対する気持ちは変わらないから」


 その言葉をカズは信じた。そこで、自分の人に対する付き合い方から始まって、人へのものの見方や自分の価値観を伝えた。千歳とはずっと付き合ってはいたが、これは初めて話す内容である。


「それは……だいぶこじらせてるね。まぁ、あたしもあんまり人の事を言えたもんでもないんだけど」


 一通り聞き終わって千歳が素直な感想を漏らす。カズには以前に自分の境遇について話した事があるのだ。


「だけどね、他の人の前では言えないけど、あたしも似たような価値観は持っているよ。やっぱり、きみ、友達、知らない人、憎んでいる人ってランク付けしちゃうよ」


 千歳が前の話を出してきてそう言う。


「だからって訳じゃあないけど、俺は人体実験については否定はしない。もちろん、これは人前で言える事ではないけどね。必要な実験なら仕方ないとさえ思っている。それが自分に関係ない人、自分に危害を加えるような人なら尚更ね。でも、この価値観をきみに押し付けるつもりはないよ」


 そう言ったあと、千歳と目を合わせて、


「だけどさ、少しでもいい、そんな風に考えてみてもいいんじゃあないかな、そうする事でだいぶ楽になると思うよ」


 そう伝えたのだ。


 千歳は少し考えていたようだが、


「うん、きみがそう言ってくれるなら、その価値観を少し受け入れてみるよ。現実は変わらないんだし。そうなら、自分が変えていかないとね」


 と言ったのだ。


「それでさ、あの……」


 カズが言いにくそうに千歳に問いかける。


「なに? 何でも言って」


「実はさ、襟坂さんも入りたがっているんだ」


「えっ、恵美? 彼女もウチに来たいって言ってるの? そんな、友達を巻き込むなんて出来ないよ」


 当然の反応だ。恵美の事はなかなか言い出せずにいたのだから。


「黙っていてゴメン。ちなみに彼女からは何も聞いてないのか?」


 純粋な質問が口を衝く。


「就職してからはあまり連絡もしてなくて。ちょっと前にメールした時はそんな事は言っていなかったけど」


 恵美もまだ迷っているという事なのか、それとも千歳への負い目なのか。


 ――これは彼女にも何らかの方法で確認を取るべきか、取るべきだろうなぁ。この調子だと多分、就職してからでは絶対に辞めさせてくれないだろうし。


 そんな事を考えていたが、


「最終判断は彼女にしてもらうつもりだ。もちろん最低限の情報は教えるつもりでいるけど。もちろん千歳の名前は伏せるよ。実は、人体実験の話は業界では広まっている噂らしいんだ。俺も、その事はおやじから聞いていた。だから今まで考えていたんだ」


 その言葉に対して、


「ひとつね、一度就職したら応用研究に進むと離職は出来ないんだって。だからあたしはこのまま研究を続けなけりゃいけないんだ」


 やはりな答えが返って来る。


「それについては俺もある程度覚悟しているつもりだ。前に行ったかもしれないけど、俺は力が欲しい。その為なら軍に所属してもいいと思っている。千歳を守るための力が欲しいんだ。もちろん、襟坂さんも守るつもりでいる。それじゃあダメかな?」


 今の思いの丈が口からあふれて来る。


 千歳は少し考えていたが、


「じゃあ、恵美の事は任せてもいい?」


 そう口にした。


「ああ、明日にでも確認とってみるよ」


 そうは言ったものの、カズはどれが一番の正解なのか、まだ答えが出せないでいた。


全47話予定です



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