君は追放しないよ
「あ、あの、勇者様、私は追放処分になるのでしょうか」
小柄なユーリがたわわな胸をゆすらせながら、おずおずと尋ねてくる。
「ユーリ、君を追放することはないから安心してくれ」
「本当でしょうか」
少しだけ、顔を輝かせて喜ぶ
勇者のパーティ追放スキルによる追放は、対象者のパーティスキルをランダムに1つ永久に削除する。初等魔術学校卒業時の恩恵で得たスキル1つしかない彼女は追放されたら、スキルが無くなってしまうから切実だ。別パーティ加入時に潜在パーティスキルを1つ得られる可能性はあるが、ゴミスキルだったら目も当てられない。
「ああ、本当だよ」
穏やかにニッコリと微笑んで答える。
大体、パーティメンバーの能力を10%向上させる神スキルと行っても良いスキル【全能力中上昇】は王国勇者部隊の財産だ。俺の個人的感情でどうこうするのは勇者道に反する。まあ、自分優先で行動する貴族出身の勇者ならば、ぽいと捨てる可能性があるだろうが。
「君のスキルは誇ってよいし、アリアが何を言っても突っぱねる。だから心配せず、俺のパーティで力を奮ってほしい。期待しているぞ」
低レベルでは尖ったスキルには負けるが、高レベルパーティであれば本当に輝く。卒業時に神スキルを得た彼女が経験を積む中でさらなる神スキルを得る可能性が高いからな。将来の高物件を手放す気はないぞ。
「はい、ありがとうございます。勇者様、あなたのお役に立てるように頑張ることを誓いますわ」
笑顔でお礼と誓いを言ってきた。
「勇者様でなくグラーナーでいいよ」
「はい、グラーナーさん」
笑顔が眩しいな。
ふう、これで当面は大丈夫かな。今後、万一彼女がゴミスキルを大量に得た場合は、追放はあり得る。ゴミスキルを1つ削除できる可能性が高いからだ。そして、空いたスキル枠に神スキルを得る可能性もある。
冴えないメンバーが勇者パーティを追放された後に別パーティに加入して神スキルを得るというのはよく聞く話だしな。