勇者品評会
「ユーリ、君を俺の勇者パーティに迎え入れる」
12歳の小柄な少女に向かって、俺は勇者パーティへの招待宣言をする。これで彼女は俺のパーティに参加できた。
彼女のレベルは低いし実戦経験はないが、パーティのカタログスペックを見栄えよくさせるスキルがある。
勇者パーティ力というカタログスペックで競い合う勇者品評会が楽しみだ。
・・・
王国の正勇者4人、副勇者4人の定年退職に伴う、5年に一度の勇者大隊の入れ替え。
勇者達の昇進や解雇がいつになく激しいイベントだ。
中隊の正勇者・副勇者達は大隊長クラスに昇格するものもいれば、クビを言い渡されるものもいる。
小隊の正勇者・副勇者達は中隊長クラスに昇格するものもいれば、階級がそのままのものもいる。
小隊副勇者の俺は、勇者パーティ力を見定める勇者品評会で上位に入れば小隊正勇者に昇格できる。このチャンスを見逃せない俺はパーティの入れ替えをしたわけだ。
しかし、現実は非情だった。
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「勇者アレクサの勇者パーティ力362」
「勇者サンダルの勇者パーティ力382」
ふん、他の勇者候補のパーティ力の低さを嘲笑る俺。これなら、生き残るのは確実だな。
「勇者グラーナーの勇者パーティ力358」
え?俺のパーティの力は目算で400は超えるはず。これは不正があるとクレームを入れたら、案の定不正があった。俺以外の勇者は貴族勇者なので+100。俺の派閥の主が失脚したことで-50。うん、これは無理だ。
失意でうなだれた俺は家路に帰る。優勝すれば小隊正勇者に昇格できるラストチャンスの勇者昇格戦にかけるしかないな。
頭を切り替えた俺は来週開催の勇者昇格戦に思いを馳せる。最近、合うたびにすごい目付きで俺を睨みつけるアリアをパーティに迎えた連中と当たりませんようにと祈りながら。
その祈りは叶えられることなく、俺はアリアを迎え入れたパーティとの戦闘になった。