ありふれた追放
「アリア、君を勇者パーティから追放する」
俺はありふれた言葉で、幼馴染の恋人候補である魔術師を俺の勇者パーティから追放した。
何いってんだこいつ?という顔でその言葉を聞いていたアリアだったが、俺の言葉を理解した途端に真っ赤な顔で抗議する。
「なんでアタシが追放されなきゃならんの、ふざけんな、テメー殺すぞ!」
口の悪いアリアがドスの効いた声で俺を脅迫する。その剣幕に押されたが、決意の高い俺は再度同じ言葉を告げる。
それから10分ほど睨み合いが続いたが、俺の決意を知ったアリアは捨て台詞を吐いて踵を返す。
「夜道には気をつけなさいよね」
そう言ってアリアは去っていった。
王国第1勇者大隊第3中隊の第4小隊副勇者の俺は、来週の勇者品評会で合格しないとクビになる可能性があるので、この決断は揺るぎない。
アリアの魔法とスキルは惜しかったが、パーティメンバーの能力を10%向上させるスキルに目覚めた魔術師のユーリーを迎えるには仕方のないことだった。
勇者パーティメンバーは4人まで。それ以上は勇者スキル【メンバーの持つ能力のパーティ適用】が効かなくなる。アリアを捨てて最近希少スキルを得たユーリーを迎える。
アリアの能力は高いから、他の勇者パーティで拾われるだろう。パーティ外での恋愛もできるしな。そう考えた俺はアリアのことを忘れて、勇者品評会へ思いを馳せた。