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倒産っ!

会社が倒産しますっ!

竜が大空を翔び、島のごとき海亀が大海を泳ぎ、巨人が砂漠を渡り歩き・・アマラガルドは魔法に満ちた世界であった。

この世界には異界、チキュウからの来訪者も数多い。

チキュウにあるという、タイショウジダイ、ショウワジダイ、ヘイセイジダイ、レイワジダイという国からの来訪者が特に多かった。

その中には『勇者』や『魔人』と呼ばれる強い力を持った人々が希にいて、アマラガルドの歴史や文化に大きな影響を与えた。

勿論、生粋のアマラガルド由来の偉人や大悪党も数多くいた。ある者は国を興し、ある者は国を滅ぼし、あるいはある者は世界の真理の一端を解き明かした。

歴史には、そういった一癖二癖あるチートな人々が数多くいる。しかしっ!

大半の、99,9%以上のアマラガルド住人は特に歴史に影響を及ぼさないモブな生涯を送っていた。

そんな無数のモブ住人の中に、23歳にしてバツ1で、元妻との間に出来た息子の為に養育費を月6万ゼム送金することを法的に宿命付けられた極東系温帯種の人間族の男がいた。

彼の名はヒロシ・ドーガ・ヤクト。食品加工会社総務部の正社員である。金銭的事情で大学には通えなかったが高等学校卒で正社員にまで登り詰めた、それなりの猛者であった。

因みに初等学校時代のあだ名は『ひろっち』であるっ!



その朝、ひろっち、ことヒロシがオフィスの入った古びたビルの3階のフロアに出社すると、人集りの出来た鍵の掛かった会社の出入り口のそのドアに、共通語でこう貼り紙がしてあった。


『この会社は倒産しました。キャバクラ経営と株と穀類の先物取引の失敗と、私と私の親族が会社の資金で豪遊した為です。退職金は払えません。今月の給料も払えません。私達は既に出国したのでこの国の法律には従いません。新しい戸籍も買いました。探さないで下さい。敢えて、逆に、謝ることはしません。皆さんが、良い人生を送ることを願っています。ありがとう。 by社長』


「嘘だろ・・・」


背広で呆然と呟くヒロシ。オフィスも倉庫ももぬけの殻で、その日1日、社員達の怒号と嗚咽が貸ビルに響き渡った・・。



2ヶ月後、失業保険制度があまり発達していない国の労働者だったヒロシは、元妻からの「払いなさいよっ、払いなさいよっ! 払いなさいよぉーっ!!」という養育費支払いへの強力な圧を繰り返し受けた結果、半公社である冒険者ギルド学校戦士課への入校トライアウト会場にいた。

高等学校卒で職歴、警察への照合等の審査もパスしたヒロシは学課試験は免除となっており、このチキュウからもたらされた合理的基礎身体能力判定法、通称『サスケ式』をクリアすれ合格であった。

トライアウト会場には不正防止用にギルド側が用意したユニフォームに着替え、魔法発動抑制の腕輪を嵌めた参加者が二百数十名犇めき合っている。

全員ゼッケンも付けており、ヒロシ達が暮らすレーゲン大陸でのみ使われるレーゲン語の文字による5種の組分けと、チキュウからもたらされた『アラビア式』数字の表記がされていた。

ヒロシの組分けは『ニョ』の組。オールラウンドタイプの組だった。

サスケ式判定法は会場に張られた水の中に落ちることを避けつつ、様々な障害を越えて制限時間内にゴールするという物で、その基本ルールは参加者全員に当て嵌められるが、ゴール後の個別評価の基準は組分けごとに違う。

オールラウンドタイプの組は文字通り総合力と立ち回りのバランスの良さが評価の決め手になる。パワーだけ見せればいいという物ではなかった。

この為、ヒロシを含めたニョ組の参加者達は一様に、スタート地点から既に見えているサスケ式の会場に対してパズルか何かを解く様な、体力系試験らしからぬ困惑した表情をしていた。

不正防止の為、観客の来場は禁止されおり、森の中に設営されたサスケ式試験会場は静かで、木々が風にそよぐ音や、鳥の鳴き声しかしなかった。


「・・釣りでもしたい環境だ」


ヒロシは呟き、サスケ式の会場を見据えながら、念入りにストレッチをする。

父が早くに亡くなった為、中等学校時代は新聞配達、高等学校時代は運送会社の作業員としてアルバイトをしていた。

倒産した会社に入った時も最初は準社員として倉庫作業のパワーワークを担当。正社員になって背広を着て事務仕事をする様になったのは2年前だった。

その2年の間に体力はやはり落ちていたが、未だ恵まれた体格を持ち、会社が随分な形で倒産してからはまた学生の頃に世話になった運送会社でフルタイムでアルバイトをしていた。

冒険者ギルド試験にエントリーすると、運送作業に加え、帰宅後や休日に走り込みや筋トレをして身体を鍛え直した。

その間、もう10代ではないのに、離婚したとはいえ子供までいるのにムチャするな、と古い何人かの友人に諭され、自分でもそう思ったが、不思議とそれを上回る高揚感が湧き上がってきた。

思えば、亡くなった父も冒険者だった。

・・と、スタート地点近くの物見矢倉で鐘が鳴らされ、参加者達が注目した。

矢倉には鐘を叩いていた小柄だが骨太なドワーフ族の男と、魔力充填式の拡声タクトを握った、露出過多な格好をした角と牙を持つゴブリン族の女がいた。


「魔王もいないこんな平和な御時世にっ、冒険者になろう何て考えるビチグソどもっ! 私は冒険者ギルド学校戦士課っ、上級指導官バルバリ・ナッパ・ドズルだっ!! 今回の戦士課一般枠トライアウトを取り仕切るっ!! 改めて言っておくが、この戦士課の試験での魔法、魔法道具、その他異能の仕様は禁止であるっ!! ルールを破ったヤツは失格にはしないっ。破ったヤツは・・」


バルバリは玩具の様なナイフを1本キュポンっと鞘から抜くと、無造作に、全く見えない速度でシュっ! と一振りした。

途端、スパァアアアンッッ!!! と音を立てて斬撃が発生し、スタート地点近くに設置されていた『ようこそっ!! みんな友達っ、冒険者ギルドっ☆』と共通語で書かれていた大看板が斜めに両断された。


「・・割るぞ? 理解できたらイエッサーと言えっ! 他の返事は存在しないっ」


「イエッサーっ!!!」


ヒロシを含め、参加者二百数十名は直立不動で全力の返事をした。

・・それから約5分後、事前のくじ引きで決まった位置に参加者達は並び直していた。ヒロシはやや後列の右側。

サスケ式のコースは序盤左周りの傾向があった為、やや不利ではあったが、最初の団子状態での自滅の連鎖を静観し易い位置とも言えた。


「やるだけやってやるさ」


ヒロシは3日前に、運送会社に他の作業員への菓子折りを持って初めて顔を出した元妻から渡された、今年5歳になる息子が画用紙と金の色紙で作ってくれた『ごうかくです』と拙いレーゲン語で書かれた気の早いメッセージのメダルを、支給ユニフォームのファスナー付きポケットから出して微笑んで確認し、また大事にポケットにしまってファスナーを締めた。

池ポチャしたら息子のメダルが濡れてしまう。ヒロシの闘志に火が点いた。


「・・えー、進行のボルビです。試験の制限時間は25分。この後、鐘を鳴らすのでスタートして下さい」


バルバリの後ろに控えていたドワーフの中年男は拡声タクトでそう言ったすぐ後に激しく鐘を打ち鳴らし出したので、参加者達は慌ててスタートした。


「邪魔だっ!」


「どけっ!」


気の荒い参加者が他の参加者を押し退け様として早速走りながら小競り合いを始めたので、ヒロシは多少ロスがあってもその種の輩から距離を取って走った。

サスケ式の最初のコースは『三角台池ポチャゾーン』。傾斜のある台が池の中に交互に並ぶコースで、台が滑り易い材質な為、着地が甘いと脚力に関係無く足を取られる。

つまり第3者が小突いたり引っ張ったりすると簡単に落とせる仕様。これを利用し、積極的に他の参加者を池に落とそうする参加者も少なからずいた。

ヒロシはなるべくそれらしい参加者から離れる様にしていたがそれでもこのゾーンを抜けるまでに何度も絡まれた。

その度に躱し、払い、余りにしつこい場合は殴って昏倒させてやり過ごした。

体格と体力だけでなく、ヒロシは子供の頃に父から基礎的な武術を少し習っていたので完全な素人でもなかった。

次のコースは雲梯がテーマで、一気に3手に別れる。左手は持ち手の配置が複雑で、敏捷さや器用さを求めれる『フェザーゾーン』。

右手は雲梯の持ち手の間隔が遠く、パワーとタフネスが求められる『ヘビーゾーン』。

真ん中はフェザーゾーンとヘビーゾーンの中間的な仕様の『浮気者ゾーン』だった。

ヒロシは体格がいいといっても、種族としてパワーがある豚型亜人のオーク族やゴブリン族、ドワーフ族、各種パワー型の獣人族等と比べられると不利であり、人間族の中にもヒロシ以上の剛力は多数いた。

オールラウンドタイプ判定もされていたヒロシは迷わず『浮気者ゾーン』を選んだ。因みに元妻との離婚の理由は浮気ではない。


「・・もうちょっと減ってくれないかなぁ」


雲梯しながら思わず本音を呟くと、隣に青い髪の、ストレートの人間族なら二十歳前後くらいに見えるハーフエルフの青年が並んできた。

ヒロシより細身だが、引き締まった均整の取れた体型で、パワーが足りない分、雲梯の掴み方や身体の振り方の器用さと素早さでヒロシと同じ速度で攻略していた。


「同感だねっ! No.162さんっ。俺はニック・ポッキー・カールっ!!」


雲梯しながら突然名乗られ、ヒロシは少なからず面食らった。


「おおっ? ・・俺はヒロシ・ドーガ・ヤクトだっ」


ニックは屈託無く笑った。


「三角台の所からヒロシさんの後ろについてたんだよっ。大柄のなのにコース取りがクールだし、絡まれてもどんどん捌いてくれるから一番人が多くて面倒な段をすげぇ楽して抜けられたよっ、ありがとうっ!」


「・・そりゃどうも」


「いやぶっちゃけ、よっぽどアレな個人評価じゃない限り制限時間内にゴールしたら全員合格できんのに、潰し合う人達アホじゃないかな、って思ってたんだよぉっ!」


「ああ・・ん?」


雲梯しながら凄い話し掛けてくるな、とヒロシが正直困っていると後ろから、カンカンっ! と金属を素早く叩く音と、女が激しく言い争い、格闘する様な音が聴こえてきた。


「鬱陶しいっ! 関わるなっ」


「美人だと思って見下してんだろぉっ?!」


ヒロシとニックは雲梯しながら振り返った。


「何?」


「上だな」


「えっ?!」


雲梯の『上』を寒冷種の人間族の若い女と、地域種は不明だが30歳前後の人間族で太ってはいるが遠目でわかる程に筋肉が発達した女が罵り合い、殴り合い、蹴り合いながら走って来ていた。

いや、正確には若い方の女は身軽に捌いて殆んど打撃を受けていなかったが、何しろパワーがまるで違った。消耗度合いは同じ程度で、2人とも鼻血を出していた。


「予想の上をゆく、って正にこのことだな」


「なる程。じゃ、俺もパクっちゃおっ、お先っ!」


ニックは逆上がりの要領でクルッと一回りして雲梯の上に上がった。


「オイッ? いや、まだ結構雲梯あるな・・ふんっ!」


ヒロシはニック程軽快には上がれなかったが、シンプルに筋力で雲梯の上に上がると先行したニックの後に続いた。


「ヒロシさんっ、他の参加者も気付いて真似し出してるよ?!」


「最初にやったあの子達の個人評価が上がりそうだけど、凄い潰し合ってるなっ?」


ヒロシとニックは雲梯の上を走り抜けながら、やや呆れて改めて争う2人の女達を振り返った。

よく見ると、大柄な女の方は人間族ではなく、種族的には背が高過ぎるがハーフドワーフ。若い女の方はまだ10代後半といったところで、寒冷種とレーゲン大陸では多数派の西方系温帯種のハーフの様であった。


「生意気何だよっ!」


喚いた大柄な女にガードを破られて殴られる若い女。一瞬、そのまま雲梯から落下しそうになったが何とか踏みと止まり持ち直した。

ただ持ち直し、鼻血を拭った後、若い女の目が完全に据わっていた。


「あ、キレたね」


なぜか嬉しそうなニック。ヒロシが苦笑していると、若い女は大柄な女に引き続き殴られるのをガードしつつ、大きく息を吸い込んだ。そして、


「でぃやぁーーーーーっ!!!」


若い女は、気合いと共に身体を旋回しながら左脚の足刀側での回し蹴りの連打を大柄な女の顔面に放った。

打撃系格闘術の足技『旋風脚』だった。ほぼ喧嘩とはいえ、演舞ではない実戦で当てられるのは中々のセンスであった。


「あばぶばぱぱっ?!」


11連ヒットくらいさせて、大柄な女を雲梯から吹き飛ばし、池ポチャさせる若い女。


「あんたっ! それだけフィジカルあるんだったら私何て構わず来年また試験受けたらいいよっ?!」


池に落ちて失格した大柄な女にそう呼び掛けると、若い女はまだ池の中で喚いている大柄ね女にそれ以上は構わず、あっという間にヒロシ達に追い付いてきた。

が、すぐに立ち眩みがしたらしく駆ける速度を落とし、ヒロシ達と並ぶ形になった。


「君、大丈夫か?」


「うるさいっ、筋肉っ!」


「筋肉・・」


返しの厳しさに戸惑うヒロシ。


「No.041さんっ、凄い蹴りだったねっ! 俺はニック・ポッキー・カールっ!! 君の名前は何て言うの?」


「・・・キモいっ!」


生ゴミでも見るかの様な視線をニックに向ける若い女。


「え~っ?? キモいって言われたよっ?! ヒロシさんっ」


「いや、俺に言われても・・」


ニックはしかし食い下がった。


「ねぇ名前教えてよっ! 俺はニックっ。悪いニックじゃないよ? 良いニックだよ? ねぇっ! ねぇっ! ねぇっ! ねぇっ! ねぇっ?!」


若い女の我慢は限界を越えた。


「あーっ!!! 気が狂いそうっ。ちょっと筋肉っ! 私の名前はマチカ・ソチカ・ドチカっ!! 隣の青髪のチャラ男に伝えて黙らせてっ!!」


「お、おう・・ニック、マチカさんだってよ。あと俺は筋肉じゃなくてヒロシ・ドーガ・ヤクトな」


「どうでもいいっ!」


「だと思ったよっ」


「マチカちゃ~~~んっ! 可愛いお名前だねっ☆」


走りながらやたらマチカに接近するニック。


「キモいキモいキモいキモいキモぉ~~ーいっ!!! 2度と話し掛けないでっ!!!」


むしろ半泣きで言い放ち、マチカは再び走る速度を上げて先へ行ってしまった。


「・・ニック。わざとあのお嬢ちゃん煽ったろ?」


ニックは舌を出した。


「何かさ、脚力半端無い子だったけど、子供の頃からそういう環境で鍛えてました、って感じでもなかったよね? 骨格とか。手何かもボロボロになるまで鍛えてたけど作りは華奢だし、何か理由がある子なんだよ、あの必死さからしても」


「かもなぁ」


さっきやたら近付いたのは手の様子等をよく確認するつもりだったのか、と思い至って、何のつもりか? と、ヒロシはやや反応に困った。


「ちょっと羨ましいよね。俺何か暇潰しで試験受けてみただけだし」


ポロリと言ったニックに、ヒロシは驚いた。


「マジかっ! そっちの方が羨ましいぞっ? 俺何て会社倒産して養育費払うのしんどくなって応募してんだぜ?!」


「重っ?! ヒロシさん、重たいわぁ・・」


ニックにドン引きされるヒロシだった。

暫くそのまま走ると、浮気者ゾーンの終わりが見えてきた。

フェザーゾーンとヘビーゾーンと雲梯の終わりも合流しており、そこからの進路の先はスモークに包まれ二手に別れていた。ゾーンの中央に置かれた魔法道具のオーブでスモークはキープされているらしい。

煙に包まれていても入り口とそこに立てられた看板くらいは見通せる。

どちらのコースも回転するローラーの足場と不規則に配置された木製の円柱が吊るされた障害物で公正されたコースだった。スモークで難度を上げている。

雲梯コースと違い、円柱を吊るす構造物は道になる用な形には配置されていない上に構造物の頂点自体が高過ぎ、マチカ達が発見した雲梯のショートカット法は使えそうになかった。

右手のコースはローラーの足場の高低差や間隔は甘い配置だが、吊るされた円柱の頻度が高く、円柱の大きさも極太な『ゴリラゾーン』。

左手のコースはローラーの高低差や間隔は厳しく配置されているが、円柱の配置数は少なく、円柱自体が細くて激突リスクは低い『コヨーテゾーン』。


「ヒロシさん、俺はコヨーテゾーン行きますよっ!」


「俺はまぁ、ゴリラゾーンだなっ」


「じゃっ、またっ!」


「おうっ!」


ヒロシとニックは左右に別れ、雲梯から飛び降り、スモークに覆われたそれぞれのゾーンに走り込んでいった・・。



それからヒロシは時々他の参加者に妨害されつつも、黙々とサスケ式の攻略を続け、コース全体の後半までは、たまにお喋りなニックと並走する形となったり、コースの前方にチラリとマチカの姿を見たりしていた。

だが、コース後半に入ると、マチカはスタミナ切れと大柄な女に小突き回されたダメージの影響で露骨にペースを落とした。

マチカはニックに「おんぶしようか?」等と冷やかされながらヒロシ達の後ろを走る様になり、やがて姿を確認するのが難しい程ヒロシ達に引き離されて息も絶え絶え走る様になっていた。

・・最終コースは池にそそり立つ壁登りだった。多数掛けてある梯子て登り切ればゴール。

墜落時の強い激突を避ける為、5本ある壁への通路の頭上には低い位置にしか梯子が無かった。梯子の種類は3種。

梯子は真っ直ぐかほぼ直角だが縦移動の持ち手の間隔が広く筋力を求められる『弾丸梯子』、持ち手の間隔は程好いが梯子自体が曲がりくねっている『スネーク梯子』、その中間程度の仕様の『日和見梯子』の3種。

それだけならこれまでのコースと変わらないタイプ別のルート設定だったが、壁の周囲の中空には風の精霊シルフが4体放たれており、そのシルフ達が気紛れに参加者達に烈風の息を吹き掛け妨害した。

バラバラに上ると集中攻撃される。参加者達はある程度人数が溜まるのを待って即席のグループで上っていっていた。

ヒロシとニックは何となく集まった他の参加者5名程と梯子の下に固まり、ポロポロと運の悪い参加者がシルフによって池に落とされてゆく様子を見上げていた。


「ヤバいな、こうなるとリスクの低い日和見梯子に人が集まり過ぎてシルフに狙われ易い。あれじゃただの運試しだ」


「まだ10分以上あるけど、もう後ろにはあまり人が残ってなさそうだよ? 上に人が残ってる内に行った方がいいんじゃないかな?」


ヒロシは後方を確認したが、まだマチカの姿は見えなかった。仲間という程の関わりは無いが、状況の不利を理由に、自分より余程特別な事情のありそうなあの娘が落ちるのは忍びない気はした。

だが、こうなると、ヒロシ単独で動いて良いワケではなかった。


「・・全員で、風を受け逃し易いだろうから菱形の形になる様にしてスネーク梯子で行ってみようか?」


ヒロシの提案はニックと偶然集まった参加者に承認された。

一同はなるべく菱形陣形で慎重に梯子を上り始めた。タイム的には多少ロスが出ても間に合うはずだった。


「来たぞっ!」


シルフの1体がヒロシ達の一団の方に笑いながら飛来し、烈風の息を拭き掛けてきた。


「ぐぅっ・・皆、姿勢を低くっ! だが、進行は続けようっ。ジリ貧になるっ!!」


「ヒロシさんっ、ポジティブだねぇっ!」


「サラリーマン経験生かすぜっ?! 仕事はぁっ、勝っても負けてもっ、毎日続く物さぁっ!!」


ヒロシは先頭を切って烈風の中、梯子を上り、シルフがヒロシに気を取られてる内に、他のメンバーも進んだ。

暫くそうして風を吹くシルフとヒロシ達の攻防は続いたが、しまいにシルフは息を吹き尽くして風を止めてしまい、悔しがって中空でジタバタしていたが、やがてプイっと顔を背け、他の対応が甘い参加者にちょっかいを掛けに行った。


「やったーっ!! 勝ったよ? ヒロシさんっ!」


「あー、疲れた。風呂入ってビール飲みたい・・」


ヒロシ達の一団は喜びも束の間、他のシルフ達に絡まれない内に大急ぎで梯子を上り進めた。

と、下方に、ただ1人壁まで遅れてたどり着いたマチカが、迷わず弾丸梯子に取り付いて素早く上り始めた。

弾丸梯子は体力負荷は大きいが最短で上れる。既に肩で息をしているマチカだったが、鬼の形相で梯子を上る。


「ありゃあ私怨だろな・・我が身を省みてない」


ヒロシでもニックでもない、ヒロシ達の一団の1人のホブゴブリン族の男がポツリと呟いた。隣のオーク族の男も頷いていた。ヒロシとニックはチラリと顔を見合わせた。

たった1人の蛮勇を見せたマチカに、シルフ達は間を置かずに気付き、面白がって4体中、3体がマチカに殺到した。

ヒロシとニック以外のまだ上り切っていない参加者達は好機とばかりに上る速度を上げた。

マチカは3体掛かりで烈風を吹き付けられ、落下しそうになる、というよりどこかへ吹き飛ばされそうになって進めなくなっていた。泣きながら歯を食いしばって梯子にしがみ付いている。


「わぁああーーーっ!!! クソぉーーっ!! 絶対負けないっ! 絶対負けないっ!!」


叫ぶマチカ。


「・・ヒロシさん、俺達大人だからお節介と現実の兼ね合いは考えようね?」


「わかった。あと3メートル上ったらやってみよう」


ヒロシとニックは大体の感覚で3メートル程上ると、当然の様に履いていたギルドから配給されたブーツの靴紐を梯子に掴まったまま解いて1つ脱ぎ、それを口に咥え、もう片方のブーツも脱ぎ、両方を片手で持って構えた。


「途中でぶつかって無駄にしたら間抜けだから、俺から先に投げるぜっ?!」


「どうぞどうぞ」


「・・フンっ!」


ヒロシは振りかぶった2つのブーツを全力で、中空で3体固まって、夢中で笑いなが口から吹いたり、手に持った小さな扇子を扇いだり、抱えた袋から風を出したりして起こした烈風をマチカに吹き付けていたシルフ達に投げ付けた。

2つのヒロシのブーツは豪速球の勢いで2体のシルフに掠る様にヒットしたが、パワーが尋常ではなく一撃で昏倒させ、ブーツと共に池に落とした。

残る1体は驚きつつ、ヒロシに怒りの表情を向けたが、ニックが続けて放ったブーツが2個とも正確にヒットして昏倒させられ、これもブーツと共に池に落ちていった。


「安心しろっ! 水虫は2年前に完治したっ」


「マチカちゃ~んっ! 早く上がってきなぁっ!!」


「・・・余計なお世話っ!!!」


マチカは半泣きのままそう叫び返してきたが、少しの笑みを隠せないまま、素晴らしい速さで梯子を上り始めた。


「よし、じゃあ俺達も・・ヤベっ!」


「えっ?」


残る1体のシルフが殺気に満ちた顔でヒロシとニックに迫ってきた。先程撃退したシルフだった。

2人は最大の速さで梯子上ったが、あと一息、というところでシルフに追い付かれた。


「っ?!」


ヒロシよりニックの方がシルフに近かったが、シルフはニックを素通りして、人形の様に小さな拳で思い切りヒロシの頬にストレートパンチをお見舞いしてきた。


「あ痛っ?!」


そこからキック、パンチ、肘、膝、頭突きによる猛烈なラッシュ攻撃をヒロシに放つヒロシの顔より小さいシルフ。


「痛タタタタっ?!」


「ヒロシさんっ?! ぶはははっ! ちょっとシュール、というか何で物理でいくかな? この子っ」


ウケるニック。


「笑いごとじゃないがっ、ややこしいから先ゴールしといてくれっ。痛いって君っ!」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


サクっと上り終えるニック。続いて、


「ヒロシっ! 何やってんの?!」


追い付いてきたマチカにも呆れられた。


「問題無いっ、先にっ! 俺も上れてはいるっ」


「まぁいいけど・・さっきのは貸しだからねっ」


マチカもゴールし、ヒロシも最終的にシルフに耳を噛られながら、制限時間ギリギリで壁を上り切り、ゴールできた。



試験に合格できたのは二百数十名の内、ヒロシ達を入れて73名だった。

合格者達はそのまま壁の上の高台で待機を命じられ、全員に水分補給を兼ねた体力回復薬のポーションと破傷風予防の殺菌解毒効果のクリアウォーターが配られた。

試験は潰し合いも多かった為、合格者達はそれぞれ微妙に距離を置いて座っていたが、ヒロシとニックとマチカは比較的近い場所に座っていた。

と言ってもマチカはやや離れており、特にニックからは距離を置いていたが。

 ヒロシとニックは裸足のままでもあった。

 ヒロシは息子から貰った折り紙のメダルを眺めたりしていた。

合格者全員が信じ難い程不味いポーションとクリアウォーターを飲み終わり人心地つく頃、高台の一角で何やら騒ぎが起こり、合格者達がそちらを向くと銃声が鳴り響いた。


「No.041の女ぁーーっ!!! 出てきなぁっ?!!」


雲梯ゾーンでマチカに池に落とされた大柄なハーフドワーフの女だった。

右手に持った古めかしい3連式ラッパ型拳銃を空に向けて1発撃ったらしい。左手には戦斧を持っていた。

合格者達は全員それなりの者達で、ヒロシとニックを含め、全員片膝の姿勢等のいつでも動ける体勢を取り直した。

全員の視線がハーフドワーフの女とマチカに集まる。マチカは立ち上がってハーフドワーフの女を睨み付けた。


「バカっ」


ニックが焦ったが、止める間がなかった。


「何あんた? まだ何かあんの?!」


「大有りだねっ! あたしはこれでもノビラ街道じゃちょっとは名の知れた野党団の頭でねっ、仕事で必要だから試験を受けにきただけさ。わざわざ戸籍も偽造してねっ」


「あ、そう。じゃあ失敗させてよかったわっ! あんたの下らない悪事に利用されなくてっ」


マチカは丸腰のままファイティングポーズを取った。ハーフドワーフの女は薄笑いで、マチカに銃口を向けた。

ヒロシは旧式の拳銃から放たれる銃弾の威力と自分の頑丈さや回復力や運、元妻や息子の顔、母や妹、亡くなったまだ若い頃の姿のままの記憶の父の顔等を浮かべてから、行動に移すタイミングを伺い、少し腰を浮かせた。


「この業界、素人に舐められたら御仕舞い何だよ。まずはそのすばしっこい脚を・・」


ハーフドワーフの女は銃口をマチカの胸から右足に向け直した。その時、


ドォオオオゥウウッッッッ!!!!


砲撃の勢いで飛び込んできたバルバリの右の掌底がハーフドワーフの女の鳩尾に打ち込まれ轟音を響かせ、バルバリはそのまま右手1本でハーフドワーフの女を軽々と抱え上げた。

 ただ殴ったというより衝撃が全身に拡がったようにも見えた。

ハーフドワーフの女は白眼を剥いて痙攣し、バルバリの左手にはいつの間にか奪った3連式ラッパ型拳銃が握られていた。

撥ね飛ばされていた戦斧は旋回してバルバリの近くの地面に落下して刺さった。


「私に感謝しろっ!! お前は不合格だがギルドスクールの特別指導室に連れて行ってやるっ! このバルバリがなっ!!!」


バルバリはマチカを振り返り、ニッと笑うと思い切り高台の地面を踏み締めてヒビを入れた。ギョッとするマチカと合格者達。


「ビチグソどもっ!! 合格おめでとうっ! 抱き締めて肋を残らず折ってやりたい気分だっ!!!」


マチカは震え上がり、マチカ以外の全員は低い姿勢のままジリジリと後退してバルバリから距離を取った。


「入校は予定通り5日後だっ! 今期、戦士課を卒業してギルドで採用するのは33名っ! 特別枠の合格者達もお前達に合流するっ。授業で死人が出る年もあるっ! ストレスで頭の病院に入るヤツもいるっ! 受講者に犯罪者等が紛れ込むこともしばしばあるっ! スパイシーだろっ?! お前達・・・スクールライフを楽しめぇいっ!! 返事っ!!!」


「イエッサーッ!!!!」


こうして、今期の冒険者ギルド学校戦士課一般枠トライアウトは無事? 終了したのだった。



・・・翌日、ポーション1本だけでは回復し切れず、湿布だらけになったヒロシは曖昧な短期契約で働かせてもらっていた運送会社で退職の手続きをして、その足で役場で必要な手続きも済ませ、一旦家に帰って花屋に寄ってから、約束していた街の噴水の所で待っていた。

時間より10分程前になると、小柄だがスタイルの良い褐色の肌の東方熱帯種のハーフホビットの女性と小さな男の子が手を繋いで現れた。ヒロシの元妻と息子だった。


「あ、お父さんだっ。久し振りぃっ!!」


「・・・」


幼い息子に『久し振り』と言われる悲しみ。


「お父さーんっ! わっ、湿布の臭いするっ! くさ~いっ」


駆けてきて飛び付いてきた息子が湿布臭のカウンターを食らっていた。


「ははっ、ごめんな。タツオ」


 頭を撫でてやるヒロシ。息子に会うのは約3ヶ月ぶりだった。元妻が仕事がハッキリしない内に会って、卑屈な顔をしたヒロシを見せない方がいいと、決して認めなかった。


「何か、男の子みたいな顔になったね、ヒロシ。ふふっ」


「リュッテ、やめてくれっ」


ヒロシは元妻、リュッテ・コパ・ムーンライトに照れ臭そうに返した。


「あ、これ」


ヒロシは小さな花束をリュッテに渡した。


「あらありがとう」


花の匂いを嗅ぐリュッテ。


「お母さん、お花、綺麗だね」


「そうね。でも退職の時、運送会社でもらったヤツじゃないでしょうね?」


「いや違うってっ。1回家に帰ったし、花屋で買ったよ」


三日月のピアスをしたリュッテは、今はよろず屋で働いていて、仕事では控えめな暗色系のワンピースを主に着ていた。

この間運送会社に仕事の合間に来た時も、ワンピースの上にカーディガンを羽織った格好だった。

だが、今日はデニムにノースリーブシャツにパーカー。 シャツの胸元はざっくり開けていて豊満な胸が解放されていた。

リュッテの私服は大体こんな物だった。


「近くのグルメバーガーショップだろ? 三輪借りて、もうちょっとちゃんとしたレストランに行ってもよかったけどな」


ヒロシは失職してからすぐに自前で持っていた三輪石油自動車を処分していたが、運転できなくなったワケではない。


「入校決まっただけで、大きなこと言わないの。それにタツオもハンバーガー好きだもんね」


「好きー」


リュッテに頬を優しく摘ままれてニッコリ笑うタツオ。


「ならいいや、行こう」


「お店、私が予約したんだけど?」


「とにかく行こうっ!」


「お父さん肩車してっ」


「よしっ! タツオ、合格メダルありがとな! 本当になったぞ?!」


ヒロシはタツオを肩車してキャッキャッと喜ばせつつ、リュッテと共に近くのグルメバーガーショップに向かった。


「・・この店、『さんふらんしすこ』スタイルなのか?」


メニューを広げながら、やや古いダイナー風だが妙に小洒落た感じもして、やたら港関連の雑貨が多い内装を見回すヒロシ。


「店長が来訪者らしいよ? まぁ店長自身は『さんふらんしすこ』に行ったこと無いみたいだけど」


「何だそりゃ?」


「チキュウからの来訪者の人達って、そういうとこあるじゃない?」


「夢見がちだなチキュウ人達は」


「お母さん、ボク、ピクルス抜きでいい?」


「好き嫌いはダメ~っ」


「えーっ?!」


「リュッテもレタス食べられないだろ?」


「大人は手遅れだからいいんですっ」


「ズルい~っ」


「タツオ、男は引き際が肝心だぞ?」


「何それぇ??」


ヒロシ達は久し振りの会食を楽しんだ。

30分程して、ヒロシにチップを持たせてもらったタツオは店のバニーガールとバニーボーイに、店のフロアの端にコーナーが作られていた輪投げの指南を受けていた。

ヒロシとリュッテはシナモンとジンジャーが強め効いたアップルパイをシェアしながら、ヒロシはミントコーラ。リュッテはライムソーダを飲んでいた。


「ホントに冒険者で良かったのか? 学生の頃と違って車両の免許も持ってるし、事務もできる。身体がキツいから定年までは無理かもしれないが、タツオが就職するまでくらいなら運送会社でも俺は良かったけどな」


養育費を払えて連呼した割には冒険者学校のテキスト等をドサドサと買ってきて入校を促したのはリュッテだった。


「高等学校の頃、ちょいちょい冒険者関連の雑誌とか読んでたし、映画もそういうの好きだったでしょ?」


「いやっ、ちょっ? 学生の、10代の頃だよ? 勘弁してくれっ」


赤面するヒロシ。


「お父さんに憧れてたんでしょ?」


「別に・・」


タツオがまだ輪投げしているのを確認してから紙の煙草を取り出してマッチで火を点けるヒロシ。

店の外の道路をヒロシがアルバイトしていた運送会社の三輪石油自動車が走り抜けていった。一瞬、自分が乗っていた様な錯覚が見えて、煙草のフィルターを噛みそうになった。


「煙、こっちに吹かないでね」


「わかってる」


リュッテは10代頃、酷い男に引っ掛かったことがあり、その男はリュッテを殴った後に煙草の煙を吹き付ける悪癖があったらしい。ヒロシは今でもその男をハンバーガーのパテみたいになるまで殴ってやりたい衝動があった。

テーブルの下で、リュッテが低いヒールの靴の爪先でヒロシの脛を軽く突ついてきた。


「子供が出来たから就職したんでしょ?」


「違う」


言い方が尖っていると思ったが既に言い終わっていた。リュッテは小さく溜め息を吐いた。


「私、今のよろず屋の仕事合ってるみたいだから、ヒロシが三十路になる頃にはあの店の店長になってやろうと思ってんのよ?」


「リュッテならどこでもやっていけるさ」


「知ってる。貴方より3歳年上だしね」


ライムソーダを1口飲むリュッテ。


「ヒロシ、貴方まだ23歳だよ? 小さく纏まらないで。若さを感じて好きにしたらいいよ。貴方がどこかで死んでも私とタツオは大丈夫。ただ貴方の言い訳のダシにはされたくない。見くびらないでね?」


「・・・」


ヒロシは店員が余分に出してくれた椅子に置かれたリュッテに買った花を見た。


「リュッテは厳しいよな」


「貴方を監督しているから」


「参った参った」


ヒロシは自分の皿の食べ掛けのアップルパイを手で掴んで丸ごと口に入れてモシャモシャ噛んで飲み下した。煙草とアップルパイは全く合わない。ミントコーラで流し込んだ。


「・・ところで、今の彼氏君とはどんな調子だ?」


「自分より年下だからって『君』付けしてマウント取るの格好悪いよ?」


「マウント取ってないっ、というか大学生の坊っちゃんだろ? グレイゾーンだぞホント。その内捕まるからなっ。前は不動産屋、その前は吟遊詩人、その前は森で暮らしてるエルフっ! これはもう、捕まる前に刺されちゃうなっ。気を付けた方がいいぜ? リュッテ・コパ・ムーンライトさんっ!」


「ふふふっ、ヒロシ。いい加減、貴方は理解した方がいいよ? 私が凄くモテる、ってことをね?」


リュッテは重量感ある胸を寄せて、挑発してきた。


「あー、はいはいっ」


ヒロシは冷や汗をかいて視線を逸らし、明後日の方に煙草の煙を吹いた。

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