スライムの表情がわかりません
――~~♪ ~~♪
パスがつながってしっかりと認識できるようになったスライムの核を魔力の手を使って撫でてみたら喜ばれた。くすぐったいとか気持ちいいとかそんな感覚らしい。
この核を潰されるとスライムは死んでしまうのだが、そういう危機感みたいなものはないようでのん気にもっと触って~と思念を飛ばしてくる。どうやらこのスライムは非常にお気楽な性格か、あるいはそれだけ俺のことを信頼しているようだ。両方かもしれない。
しばらく撫でました後にスライムに命令をしてみた。両手を少し広げて片方の手の上にスライムを置く。そしてその状態からもう片方の手にジャンプするように言ってみた。
ピョンと軽やかにジャンプしたスライムだったが手にかかる衝撃は少ない。そういえば意外と軽いな。水球みたいな見た目だが体重はもっと軽くて片手で持っても苦にならない重さだ。
――~~♪ ~~♪
重さを確かめるように片手で上下に跳ねさせてみたら新しい遊びと思ったのか、また楽し気な思念がスライムから送られてきた。孤児院のシスターがやっていたようにお手玉してやるとぷるんぷるんと震えながら喜びの思念が感じられた。
「……ソラくんが笑ってる……」
「珍しいものを見たな……」
しばらくそうやってスライムとスキンシップをとっていたところ、左右の席から妙なことを言われた。今までの生活でも普通に笑ったりしていたはずなんだが?
「えっと……いつもと違って、無邪気な笑顔っていうか……」
「いつもはもっと大人っぽいのに、さっきのは子供っぽかった」
子供っぽいって言われても実際に子供なんだが? お前らと同じ十歳だよ?
◆
「ようやく契約できたよぉ~疲れたぁ~」
ミーファがぐでーっと机の上に体を投げ出した。だいぶ苦戦していた何とか契約に成功したらしい。
「こっちもようやく終わった。なんでソラはそんな簡単に契約できてるんだよ……」
何匹もスライムを殺してしまってようやく契約に成功したシドが納得いかなそうな顔を向けてきた。そんな目をされてもシドの魔力操作が不器用なのが主な原因なのでどうしようもない。シドは細かい調整が苦手なのだ。
そんな二人の手の中で従魔契約を結んだばかりのスライムがプルプル震えている。
パッと見ただけでは他のスライムとの違いなんてわからない。俺の目で観察してもただの普通のスライムにしか見えない。
だが、スライムにはスライムのことがよくわかるだろう。魔力をパスを通じて俺のスライムが感じた印象が届けられた。
ミーファの契約したスライムは大量の魔力を食べてご機嫌のようで、ミーファのことも主人ではなく餌係とか美味しいご飯(魔力)をくれる人と認識しているようだ。つまりミーファはスライムからなめられているのだ。
シドの方は逆で、契約の為に一度に大量に送られてきた魔力に当てられてぐったりしている。このまま死んだりはしないだろうが、それでも大分弱弱しく、シドのことを非常に恐れているようだ。今もシドの手の中で必死に縮こまって恐怖に震えているらしい。
うちののん気なスライムとは大違いだな。従魔契約は終わったけれどこれから先がちょっと不安だ。まあ、魔力のパスはもう繋がっているみたいだし、時間をかければ仲良くなれるだろう。
魔力のパスがなかったらスライムの感情とか意志なんて絶対に理解できなかっただろうと考えると、従魔術というのは地味だけど本当にすごい魔法だと思う。
――とまあ、こんな感じで他のクラスメイトたちも多少悪戦苦闘したりながら、無事に全員がスライムと従魔契約を結ぶことができた。
スライムを睨めつけながら難しい顔をしている生徒や、魔力切れを起こしかけて疲れ果てた顔をしている生徒もいたが、ほとんどの生徒は初めての従魔を手に入れた喜びに顔をほころばせていた。