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Twitterでテーマを募集して短編小説を書こう!企画(仮)

踏切と彼女

作者: ミズアメ

こちらはTwitterで短編小説のテーマを募集した際に頂いたテーマをもとに書いた作品です。

グロ要素が少しあるので苦手な方はご注意ください。

ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

これはむせ返るような暑い暑い夏のお話。

汗が雫になって地面に落ちては消えていく。

いつもの帰り道、耳が割れそうなほどに鳴り響く蝉の声と、どこかの家からか聞こえてくる今日が今年の最高気温だと伝えるラジオDJの声に「うるせーなー」と悪態をつく。

暑さでイライラしているのかもしれない。

暑さのせいで目の前の景色が歪んで見えるのが陽炎か幻覚かもわからない。

踏切が見えてきた。あの踏切を渡って右に曲がればすぐに家だ。

「ふぅ…」解放された気分になった。

踏切まであと少し…!

――――――カンカンカンカン

踏切が鳴った。「くっそ…!」

らしくもない。こんなこと学校のみんなに聞かれてたら終わるなぁ、と思ってもいないことを考える。

踏切を待つのは4人。

こちら側には自分と見たこともない制服の女子高生が1人。同い年くらいだろうか。

向こう側にはスーツの男とおばあちゃん。

電車が横切る寸前、今までは微動だにしなかった女子高生がフッと前に倒れる。

「おいおいまじかよ」と、声に出ていたかどうかもわからない。

ただあの女子高生を救わないと……。そのことだけが体を、全身を動かしていた。

電車と女子高生の距離と自分の手と女子高生の距離が同じくらいになった頃、時間が止まったような感覚になった。蝉の音、無機質に鳴り続ける踏切の音、いつの間にかラジオの音は聞こえなくなっていたんだなと思えるくらいに時間が流れた気がした。

キキーーーッ!と爆音が周囲に鳴り響いた。周囲の家の人間が次々に顔を出す。

スーツの男とおばあちゃんが驚いた顔で一瞬固まったあと、すぐに駆け寄ってくる。

「大丈夫!?」と自分も女子高生に聞く。意識はある。幸い外傷はこめかみの辺りをかすった程度だろうか。命に別状はないだろう。女子高生は答えない。

「何やってんの!バカ!」

心配の次に「なぜこんなことをしたのか」という怒りが湧き上がる。この言葉を投げることが正解かどうかはわからない。

ただどんな理由であれ、自分と同じくまだ十数年しか生きていない人が自ら命を絶っていいはずがない。

「別に……」女子高生が初めて声を発する。

その凛とした声に思わず意外だなぁと思ってしまう。

「はぁ、おいで。」

この場合、救急車でも何でも使って病院に直行するのが正解だろう。

だが、私は知っている。

猛スピードで迫ってくる物体に身を投げるほどの覚悟がある人間は病院に行ったって治るものなんてないことを。だって、私がそうだから。


必死に逃げようする彼女の手が離れないように、ぎゅっと握ってもと来た道を走った。

大きな大きな病院へ。いや、広い広いあの景色のもとへ。

病院の階段を登る途中、ようやく彼女が口を開いた。

「何なんですか。どこへ連れて行こうっていうんですか」

「いいからいいから」

ようやく階段を登り終えた。

その先には、赤く染まるさっきまでいた住宅街、その奥に見えるビル群。反対を向けば山まで見える。ついさっきまで青かったはずの世界が、燃えるように真っ赤になっている。

本当にきれいな眺めだ。

彼女も息を呑む。

やはり彼女をここに連れてきてよかった。そう強く思った。

「君さ、いじめられてるんでしょ?」

彼女は一瞬言葉を発しようとしたが、それが私の耳に届くことはなかった。代わりに、

「なんですか。こんなところまで連れてきて、自殺を止めようとしてるんですか」

「違うよ。あなたは1本筋が通っている。そんな声、仕草をしている。だからこそ、学校という同調しか生まない集団生活に適応できなかった。そうでしょ?」

彼女はこくりと頷く。

「学校に行ったら辛いし、親が学校を休むことを許してくれないから家にいることもできない。だからもう疲れちゃったんですよ」

「ほんとに?」

「どうして嘘をつかないといけないんですか」

「もっと辛い、自ら命を絶ちたくなるようなきっかけがあったんじゃないの?」

彼女の口から息が漏れる。

「あなたと話していると何もかも素直に口から出てしまいます」

作戦成功だ。これでようやく本当の理由を聞ける。

「で、理由は?」

「クラスから孤立したとき、最初にされたのは無視。次は水をかけたり、間接的に暴力をふるってきました。ここまではまだ良かったんですよ。あいつらね、普段勉強できないくせにこういうことになると勤勉なんですよ。1番痛いところを的確に殴ってくるんです。1回意識が飛んで、数日分の記憶もなくなったことあるんですよ」

あー…。どこかで聞いたような話だ。

私の、すぐ近くで、、、

「けど、1番の理由はそこじゃないんです」

「へぇ、何?」

「痛みを感じなくなったんですよ。身体的にも、精神的にも。殴られたって痛くないし、辛いとも思わない。殴っても痛そうにしないことにイライラしてまた殴られ。もう死んでるんですよ。私は」

あぁ。この子も私と一緒だ。私と、あの子と……。

「私の話も聞いてくれる?」

「えぇ構いませんよ。時間はあと70年くらいありますから」

「私の親友はね、自殺したの」

そう言うと、彼女の顔に驚きが浮かぶ。

何か言おうとしているが、それを遮って話を進める。

「理由は君と同じさ。いじめられて、影でこっそり私に相談してきたけど、助けると次は私の番だって怖くなって、私は自分でなんとかしなよ、としか言えなかったんだ。その次の日に学校の屋上から飛び降りて死んだの。彼女の最後のL○NEは、「相談乗ってくれてありがとう。自分でなんとかしてみるよ」だよ?なんとかした結果が自殺。私のせいなんだ」

ここまで一気に言って彼女の反応を待つ。

「あなたのせいじゃないですよ…」

「いや、私のせいだよ。その後もそのいじめた奴らは何も変わらなかった。私も、そいつらに同調しては時々反抗して殴られ、これの繰り返し。そんなことをしてたら精神がボロボロになって病院にブチ込まれちゃった。えへへ」

「えへへじゃないですよ。それで、何が言いたかったんですか」

私は息を吸って人生最大の決断をする。

「まぁすなわち、君が自殺をやめたところで社会は何も変わらず君を攻撃する。だから、自殺するの、止めないよ。けど条件がある」

「なんですか」

これでいいのか、なんて思っている時間なんてない。もう戻れない。これでもう、


終わりだ。


「私と一緒に自殺しよ?」

彼女の感情が間違いなく1番はっきりと顔に出た瞬間だった。

これで全員幸せの大ハッピーエンドだ。

「2人とも、この世界にはうんざりしてたし一緒に死んで、新しい、1人1人の存在意義がある世界に行こう」

彼女から、驚きが消え、なんとも言えなそうな表情になる。

「本当にそれでいいんですか?」

私はニコッと笑って言う。

「自殺未遂の君がそれ言う?さて、そろそろ日が落ちるし、自殺には最高のロケーションだよ!私はもう行けるけど準備はいい?やめるなら今だよ?」

彼女は首を横に振る。

「準備なんてとっくにできてるんですよあなたこそ、直前で怖気づかないでくださいよ」

「大丈夫大丈夫。さぁ、改めて準備はいい?行くよ!!」

今度は彼女は首を縦に振る。

2人で手を繋いで病院の屋上の隅っこに立つ。

下を見ると怖くなるから見ないように。

2人で顔を見合わせて、

息を大きく吸って

「せーの!」

って言って足を宙に投げ出した。


暑い暑い夏の、空が真っ赤に染まる頃、2人の少女が世界を見限った。

新しい世界に希望を抱いて。

2人の少女は落ちていった。

いかがでしたでしょうか。


私自身が受験生なので、自由作文が出たときのための練習兼ストレス発散として作った作品でもあります。

こんな作品を作っておいてなんですが何はともあれ自殺はだめです。絶対。

なんとなくですが作りたかった作品の形が作れた気がします。

もはや短編小説といえるかもわからないボリュームなのに最後まで読んでくださってありがとうございました!


この小説は「踏切」というテーマで作ったものなので「踏切」というテーマにしたいのは山々なんですが、他の方の作品とテーマが重複しているようなので、別のテーマの「彼女」をタイトルに追加しました。

彼女をテーマにまた書こうと思っているのでまた読んでいただけると嬉しいです。


テーマはまだまだたくさん残っています。


また読んでくださると嬉しいです。

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