第1話:天羽学園・入学式
その昔、神様が人類に力を与えた。数百万人に一人の割合で発現するその力は『エーレ』と呼ばれた。
島国日本。この国は小国ながら『エーレ』発現率が非常に高く、現存発現者のうち、その6割がこの国から生まれている。ともなれば当然、国を挙げて『エーレ』発展には大きな力が注がれていた。
都心に設立された天羽学園。
『エーレ』発現者のみが入学を許される学園であり、日本国の『エーレ』発展において中核を成す機関と言える。
在学生徒数は約400名。驚くべきは16学年制という、超一貫校という点である。
当然、発現時期には個人差があるため、
学年によっては生徒が1人もいないということも往々にしてあるのだ。
新暦531年4月ーー。
天羽学園にも入学式の季節がやってきた。
うららかな日差しの中、不安と期待を携えて新入生達は学園の門をくぐる。
天羽学園の入学式における、新入生代表の挨拶は、入学者の中で一番年長の者が行うという慣習があり、選ばれた少年はあらかじめ用意してきたスピーチを携えて登壇する。
その少年をそわそわと見つめている「棗 ユノ」がいた。ユノは登壇した少年、「栢谷 零司」の幼馴染であり、レイジがちゃんと挨拶できるか心配で仕方がない。
そんな心配を他所に、レイジは何食わぬ顔で淡々と挨拶を進めていく。
無事にスピーチがおわると、ユノはホッと息をつく。
「とりあえず、よかったー。自分でスピーチするなんかより、よっぽど緊張しちゃった…。」
その後も滞りなく、入学式は進み、
新入生達はそのまま新入するクラスへと向かうこととなった。
ユノの学年、第10学年は3つのクラスに別れており、各クラス30名、総勢90名という大所帯である。日本国の発現率が高いことが前提とはいえ、これほどの発現者が集うことは非常に稀であり、世間では『ゴールデンエイジ』などと呼ばれていたりする。
この年における第10学年の新入生は、ユノを含めて6名。各クラスに2名ずつ割り振られることとなっている。
「レイジと同じクラスになれるといいなー。
どうなんだろうなー?」
そう言いながら横に立つ幼馴染の顔を上目遣いで覗き込む。
レイジは、少しだけ照れたように笑った。
「まぁ…。大丈夫だよ。そう決まってるし。」
「おーっ!レイジがそう言うなら、そうなんだね。やった!」
レイジの言葉を聞いて、ユノは小さくガッツポーズをした。
「僕も、うれしいよ。ユノはひとりにすると危なっかしいし。」
レイジが先程とは違うニュアンスの微笑みを投げかける。
「いつまでも子供扱いするなーっ!ばかーっ!」
「子供じゃん。」
そうこうしているうちに、教師らしき人物がこちらに向かってくる。
年齢は三十を少し過ぎた辺りだろうか、
天然物であろう無造作ヘアーに薄めの無精髭を生やして、白衣を着た男だ。
白衣には天羽学園の校章が縫い付けられており、右手には出席名簿らしきものを抱えている。
「おーぅ。青春してるなぁ。若者どもよ。第1クラスの担任をしてる、榊原 嘉門だ。よろしく。乳繰り合ってるところ、わりぃーんだが、俺のクラスに割り振られた生徒を迎えに来たぜー。」
周りの新入生がクスクスと笑い、ユノは顔を赤らめる。
続けて、榊原は名簿をパラパラめくりながら気怠そうに名前を呼ぶ。
「えー、っと。棗と栢谷。挙手。」
「はい。」
レイジが食い気味に挙手する。
「はーい…。」
ユノは少しバツが悪そうに。
「ハハ、なんだお前らか。じゃあついてこーぃ。」
歩き出す榊原の後ろをそそっと付いていくユノの後ろ姿を見てレイジは小さな声で呟く。
「毎回思うけど、ユノって意外と恥ずかしがりなんだよなぁ…。」
こうして、天羽学園での学生生活が始まることとなった。
初作品として投稿していきます。
拙い文章になるかと思いますが、何卒宜しくお願い致します。