表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/468

お友達と五姫の試合

 早速お友達をお城へと招き、普段憩いの場として使用している庭園へと案内しました。ミアさんとエルノーラさんが大変興味深げに周囲を見回しながら私の隣を歩いております。


「ここがミズキ様の国、アクアリースなのですね。大変素敵な城内庭園ですわ」

「ふふ、そう言って頂けるとミズファ母様が喜びます」

「あのミズキ様、本来でしたら直ぐにでも王女様の下へご挨拶にお伺いしなければならないと思うのですけど、ここでゆっくりしていて本当に宜しいのでしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 ミアさんが先程、ミズファ母様への謁見許可を私に求めてきていたのですけれど、その必要はありませんよと言ってあります。ミズファ母様はその様な建前は余り好みませんし、姫である私が直接対応していますからね。


 程無くして庭園に備え付けられている休息兼お茶会用のテーブル席へと着き、お友達に座る様に促します。今ここにいらっしゃるのは私とミアさんとエルノーラさんだけです。


 クリスティアさんはお仕事に戻り、クリムさんはヤヨイさんと共にこの大陸の視察へ出かけていきました。そしてお友達のお二人とは違い、この国に仕えているエイルさんとメイニーさんは近況のご報告などの為、ミズファ母様の所にいらっしゃいます。


「大陸が違っても、木や花は帝国と一緒なんだね。何だか不思議」


 テーブル席へと座りながら、手入れされた近くの花々を見ているエルノーラさん。


「私とエイルさんも、帝国に転移した当時はエルノーラさんと同じ様に思いましたよ」


 私達が住むこの大陸は魔族が新たに作り出した物だそうですから、帝国の自然物をそのままこの大陸に反映したのかもしれませんね。


「後ね、この国の空気はとっても澄んでるみたい。もしかすると、メイニーの力もほんの少しでいいかもしれない」

「本当ですか?」

「うん、転移門を通った時に直ぐに感じたよ」

「何が理由なんでしょうね。海に隔てられているとはいえ、帝国もこの大陸も空気は一緒だと思うのですけれど」

「私にもよくわかんない」


 首を傾げる私とエルノーラさんをクスクスと笑いながら見ているミアさん。


「でしたらエルノーラちゃん、ゆくゆくは此方の大陸に住んでは如何でしょう?」


 ミアさんの言葉に私は直ぐに笑顔になりました。エルノーラさんが此方に住んで頂けると皆さん大変喜びます。主に私が。


「あの、もし此方の大陸に住むのでしたら、是非このお城に!」

「ん~……」


 この様子だとエルノーラさんも直ぐに頷いて下さると思ったのですけれど、そうでも無いようです。


「私もミズキお姉ちゃんがいるこの大陸に住んでみたいけど、帝国に罪滅ぼしをしなくちゃいけないから」

「え……そんな、エルノーラさんには何の罪もありませんよ? 誰がそんな事を!」


 エルノーラさんはずっと慕っていた親に見捨てられ、まさに死の淵まで落ちかけていたのですよ? 何処のどなたでしょうか。心身ともにボロボロになったこの子に罪を償わせるなどと戯言を言った方は。


 ……絶対に許しませんよ?


 怒りを内心に留めていたつもりでしたけれど、殺意が滲み出てしまったようです。エルノーラさんが小さな悲鳴をあげてしまいました。


「あ、ご、御免なさいエルノーラさん」

「あ……ううん。あのねミズキお姉ちゃん。別に誰かに言われた訳じゃ無いよ」

「……え?」

「私が勝手にしてる事なの。父様に苦しめられた人達に比べたら、私の辛さなんて些細な物だもん。だからね、せめてクラウスお兄ちゃんが皇帝の間は、帝国の為に出来る事をするって決めたの」

「……」


 見た目は本当に幼い少女ですのに……なんて優しい子なのでしょうか。だからこそ不憫に思えて仕方ありません。エルノーラさんにはこの先ずっと笑顔で居て欲しいですもの。


「エルノーラちゃんったら皇帝陛下にも同じ様に言っていたんですよ。そんな必要は無いと陛下は咎めていましたけど、最後にはエルノーラちゃんの頑固さに折れてしまった様ですわ」

「そうだったのですか……」

「その後はエルノーラちゃんも魔法学院で鍛錬を積んでいます。帝国の為になる方法は一つしかありませんから」

「強くなって魔物を討てる力をつける、ですよね」

「はい」


 エルノーラさんと帝国で別れてからそこまで月日は経っておりませんけれど、この子は短期間で急激な心の成長を果たしたようです。一度全てを失いかけたからこそ……なのかもしれませんね。


「あのね、ミズキお姉ちゃん」

「はい」

「私、いつか必ずこの大陸に来るね」

「……はい。いつまでもお待ちしていますね」


 私が微笑みかけながら応えますと、エルノーラさんが約束、と指切りをしてきました。そんな様子の私達を、ミアさんも微笑みながら見ておりました。


 -------


 転移門からお友達が来訪した日から二日後。


 南方聖都セレスまでシャウラ母様とミカエラさんをお迎えに行き、その後獣人の街にある闘技場の中心まで転移しました。今日は五姫と旧五姫の皆様による試合が行われる日なのです。


 暫くお仕事で中々会えなかったシルフィさんも合流し、旧五姫の皆様も全員が揃っています。そして観客席には三人の母様やミツキさんなどの高官に当る方が談笑などをしつつ試合の開始を待っていました。


「ようやくこの日が来たねぇ。あたし待ちくたびれてお腹すいちゃったよぉ」


 これから試合だと言うのに、エリーナさんが脱力したような姿でそう言いました。


「講師、先程昼食を食べたばかりでは無いですか……」

「あたしは永遠の育ち盛りだからねぇ」


 レイシアさんの言う通り、先程九尾さんのお屋敷で大変賑やかな昼食を頂いてきた所なのです。食事の席でエリーナさんの食欲を見た旧五姫が少々引き気味でした……。


「ふん、炎姫の食い意地だけは五姫最強じゃな」

「エリーナお姉様は髪を下ろせばとてもお淑やかな淑女であらせられますのに……」

「今は髪を結っています、ね……」

「つまり、今は駄目な講師の方ですね」


 エリーナさんは普段長く綺麗な黒髪を後ろで結っているのですけれど、たまに髪を下ろしている時があります。その時はまるで、貴族のお嬢様の様な優雅な物腰へと性格が変貌します。大変不思議な方です……。


「皆酷いなぁ、髪を結ってる時も下ろしてる時もあたしはあたしだよぉ」

「何方でも良いですけれど。エリーナお姉様、試合はしっかりなさって下さいまし」

「ん、解ってるよぉ。あたしだってこの日を楽しみにしてたんだからねぇ。ブラドイリアより以前に栄えていた今は無き国の英雄、炎姫メルローゼと戦えるんだからね」


 粛々とメイド作業に従事していて、大変失礼ながらたまに存在を忘れかけてしまう旧炎姫メルローゼさん。彼女はアクアリースが建国されるより前にこの地に栄えていた国の出身で、雪龍と呼ばれる過去の国家指定級を倒した英雄なのだそうです。


「メルローゼちゃん、今日は宜しくねぇ」

「はい、宜しくお願いします」


 深々とエリーナさんに向けてお辞儀をするメルローゼさんの性格は至って普通です。何といいますか……現五姫も旧五姫も大変個性的な方ばかりですので、ある意味大変希少な存在ですね。


「で、童の相手なのじゃが。何なのじゃこいつは……」


 エリーナさん達の横で、ツバキさんの腕にメイニーさんが寄り添っています。相変わらず不可解な方です。


「ふ、私の相手はゴシック和ゴスか、なの」

「……離れてくれんかの」

「もう戦いは始まっているなの。好感度上げは地道な作業なの」

「……」


 あ、ツバキさんが疲れたような顔をして私に助けを求めています。残念ながら見捨てるしかありません……。早々に助けようかどうかの判断を捨てる私。


「おーーーほっほっほ!! レイシア、しっかり準備は出来ていて?」

「ええ、勿論です。お手合わせ、宜しくお願い致しますね」

「宜しくってよ。おーーーーほっほっほっほ!!」

「ミカエラ様、御指南お願い致します、ね」

「私すっごく疲れてるのよね~。ミルリアが肩揉んでくれたら考えなくもないわよー」

「わ、解りました」

「あ、その後足もお願いね~」

「は、はい」


 レイシアさんとティニーさんは比較的まともですが、相変わらずミカエラさんはミカエラさんですね……。あ、シャウラ母様があからさまに苛立ってます。


 エイルさんとシルフィさん、そして観戦に来ているミアさんとエルノーラさんが周囲のやる気があるのか無いのか良く解らない状況に引き気味でした……。あの、私も引く側ですからね?


 審判役の九尾さんが少し遅れると言っておりましたし、試合……私が始めてしまってもいいでしょうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ