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精霊との再会

 驚く帝さんは取りあえず他の皆様にお任せして。


 久しぶりの北方聖都エウラスにある大噴水広場へと転移した私。手前の囲いに駆け寄って水面を覗き込みますと。直ぐに私に気づいたのでしょう、水の精霊さんが水の中から顔を出して下さいました。


 そして手を差し出していますので、両手で包む様に触りました。こうすれば私の頭の中に直接水の精霊さんの声が聞こえてくるのです。私も声に出さず心の中で語り掛けます。


「水の精霊さんお久しぶりです!」

「ミズキ良く来て下さいました。大怪我を負って消息を絶ったと聞き及んでいましたが、無事で何よりです」

「あの、はい。この通り私は元気です」

「本当に心配したのですよ? 巫女姫も特殊能力者達を探索に出させていた様ですし。一クオル前にミズキの存在を感じる様にはなっていましたが、やはり直に見るまでは安心できませんからね」

「そ、そうだったのですか……。ご心配をおかけして申し訳ございません。巫女姫さんにも後ほどお礼に参りませんと」


 この分ですと、シャイアの王女様も私を探して下さっていた可能性があります。その辺りの事は誰も教えて下さらなかったので全く念頭にありませんでした……。何れにしてもまた会いに行くと言っておりましたので、シャイアに出向くには丁度良い頃合いでしょう。


「あのそれでですね、水の精霊さん」

「慌てずとも既に解っていますよ」

「あ、私の考えを読み取ったのですね」

「成程……精霊が限られた者だけに祝福を授けている可能性、ですか」


 詳しく話さずとも水の精霊さんには私の考えが筒抜けですので、事情を直ぐに理解して下さいます。私の中を覗かれるのは恥ずかしいですけれど、こういった際は迅速に相手に物事を伝えられて大変便利なのです。


「あの、それでその祝福の効果についてはどうなのでしょうか」

「祝福の効果を限定的にする事は可能です。ただしその分、祝福効果の範囲が非常に限られますから、大多数が恩恵を受けられなくなります。解りやすく言えば、枯れた大地の中心に花畑が出来ている様な物ですね」 

「それは困りますね……」


 とは言え、精霊さんの力にも限界はありますので、どうしても恩恵を受けられない人達はいるのですけれども。


「他の精霊は私とは違い、一定の期間毎に国を転々としていますので 極端に偏る事はありませんけどね」


 考えを読まれました……。つまり、水の精霊さんが住んでいるこの場所は水の都になるべくしてなった訳です。水の精霊さんがとても清浄な水を絶えず供給しているのですからね。


 結果として神都は国の特色としては他国より特出しておりますが、恩恵に寄って他の国との差があるかと言えば全然ありません。


「もともとこの地は地下水が豊富だった地域ですから、その分私の恩恵を授けやすかったのです。事情が違えば水の都となったのは別の国だったかもしれませんよ」


 それはそれで少し興味のあるお話です。アクアリースがもし水の都でしたら、私のお部屋の中にも水が流れていたかもしれませんね。あ、いけませんいけません余計な事を考え始めてしまいました。


「ミズキのお部屋は可愛らしいですね。お部屋の中に水が流れている場面が見えました」


 遅かったのです……。私の想像した場面が水の精霊さんに筒抜けでした。


「あう~……恥ずかしい」

「文字通り水に流して差し上げましょう。さて、倭国で起きた出来事についてですが、精霊が関与しているかどうかを知りたいのでしたね」

「はい……。それでどうなのでしょうか」

「確実ではありませんが、恐らく倭国には大地の精霊が滞在していると思います。ここから一番遠い場所に居るのが大地の精霊の様ですので。そして、大地の精霊が与えられる祝福には生産物の上質化があります」

「え……という事は」

「関与している可能性は十分にあるでしょう」


 やはり精霊さんが関与していたと考えてよさそうですね。では、どうして呉服屋だけに祝福を与えているのでしょうか。精霊さんが何処で何に祝福を与えていたとしてもそれは自由ですけれど、恩恵を与える対象が人間となりますと話は別です。


 今回の件は呉服屋が儲かっているだけですので被害は他の衣装店程度の物でしょうけれど、もし一国の王にのみ恩恵を与えようものなら、瞬く間に他国との格差が生じてしまうでしょう。そうなる事を防ぐ為に人に関わらない様にしていると水の精霊さんが以前言っていました。


 ここは大地の精霊さんに直接会ってお話を聞いてみるしかないでしょうか。


「あの大地の精霊さんってどの様な方なのですか?」

「あの子は……そうですね。人間に例えていえば幼い少女のような姿をしています。ほぼ人間と変わらぬ容姿を取り、黒いドレスを見に纏っています」

「……」


 ドレスの幼女……。アビスさんとかエルノーラさんの様な感じでしょうか。


「背に翼がある少女が見えましたが……成程、別の大陸にはこの様な子がいるのですね」

「はい、天翼人と呼ばれる種族で、元々は異世界に居た方々の子供です」

「ええ、私にも解ります。そしてまさに世界その物が危機的状況にあった事も、無事解決した事も。私からもお礼を言わせてください」

「いえ、私なんてミズファ母様に比べたら何もしていない位で」

「ミズキ、貴女に精霊の祝福があらん事を」


 そう言って微笑んで下さる水の精霊さん。精霊さんから直々に祝福の祝詞を頂ける何て……。私はとっても幸せ者なのです。


「ミズキ、私の力を貴女の手に宿しておきます。この手に魔力を注げば大地の精霊の居場所が解るでしょう」

「本当ですか!?」

「あの子は以前から人間の世界に憧れを持っていました。今回の出来事はいつ起きてもおかしくなかったのかもしれません」

「そうですか……解りました。大地の精霊さんに会ってみます」

「さぁ、そろそろ貴女の母親に会いに行ってあげてください」

「水の精霊さんは……いえ、あの。有難うございました!」


 私はそう言って微笑みました。水の精霊さんはシャウラ母様を許して下さいますかと聞こうとしましたが、それは必要のない事だと感じたからです。


 私は噴水から顔を覗かせている水の精霊さんに向けてお辞儀をした後、水鏡を呼び出して転移しました。場所は中央都ミカエラです。


 ほぼすべての建物が崩壊した筈の街を見回した私は……純粋に驚きました。


「凄い……もうこんなに元通りに」


 作り直された商業区には以前の様に沢山の酒場が建ち並び、以前ほどでは無いですけれど、人々がお店の商品を求めて行き交っていて活気があります。


 神都エウラスには他国から移住を希望している方が多いそうですので、今回の件で移り住んで来た方も沢山いらっしゃる様です。ここまで迅速に復興できたのは、他の国々が尽力して下さった結果だと聞き及んでいます。


「中央都の復興は大分進んでいる様ですね。では、次に南方の巫女さんのお屋敷に行きますか」


 再び水鏡を呼び出して、次は南方聖都セレスへと向かいました。鏡を通った先は街の中心にある広場です。アビスさんと初めて出会った場所ですね。


 この広場は各地区に架かる橋が六つあり、その中から南方の巫女さんが住むお屋敷に通じる橋へと向かいます。この橋の先は本当に巫女さんが住むお屋敷しかありませんので、用事の無い方は先ず通らない為に他の橋と比べて渡っている人は殆どいません。


 間も無くお屋敷の島に渡り切ろうかと言う所で、橋の上から運河を見ている人がいました。どうやらミカエラさんのようですが……見るからに落ち込んでいる様子が伺えます。


「ミカエラさん?」

「ん、あれミズキじゃない。何よぅここには来ないでってシャウラが言ってたじゃないの」

「はい、着いて来るなって言われていました。でも、私が何でも言う事を聞くと思ったら大間違いなのです」

「はぁ……まぁミズキがお人好しなのは今に始まった事じゃ無いし、怒られるのは貴女だから別にいいけど」

「ミカエラさんはここで何をしていたんですか?」

「ベ、別に何もしてないわよ?」


 見た所、買い物籠らしきものを手に持っている様子です。確かシャウラ母様とミカエラさんはここで南方の巫女さん付のメイドをなさっている筈ですが……。


「さぼりですか」

「ち、違うわよ! 買い物に行く前にちょっとだけ休憩してただけよぉ!」

「そうですか。まぁ、怒られるのはミカエラさんなので別に良いのですけれど」

「ぐぬぬ……」


 貴女後で覚えてなさいよぉ! と言い残して橋の先へと駆けて行くミカエラさん。これで少しは気を紛らわす事ができたでしょうか。


 もう人としての感情が戻っているミカエラさんはここに来る前、とっても元気がありませんでした。故郷の街に対する後ろめたさ等がある為でしょう。


 結局、償いに来たシャウラ母様とミカエラさんに対してエウラスからの処罰はありませんでした。そして中央都ミカエラを崩壊させた水晶は討ち取られたとしてこの件は処理されています。


 つまる所、中央都が崩壊した理由は巫女姫さんと近しい者しか知らないからです。公にすればかえって混乱を招くだけだと巫女姫さんが言っておりました。


 勿論、それでシャウラ母様が納得する筈も無く。自ら進んで暫くの間、この街の巫女さんの所で罪を償っているのです。南方のお屋敷は一番人手が足りていないとの事でしたので。


 シャウラ母様がエウラスに向けて出発する際、着いて来るなときつく言われていましたけれど、私にだって一部責任はあります。あるったらあるのです。


 まぁ、今は倭国の件もありますから、南方の巫女さんにご挨拶をして早々に帝さん達の所へ戻りましょう。申し訳ないですが、巫女姫さんへの感謝はその後にしておきます。


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