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転移門

「成程……ユイシィスはその様な物を作り上げていたのか」

「はい、古代鍵(エンシェントキー)を流用すれば、私達の大陸と交易を繋ぐ事も可能です。是非、クラウスさんに転移門の作成をお願いしたいのです」


 数日後、クラウスさんに古代鍵(エンシェントキー)についてお話をしにお城へと来た私は、早速大陸間を繋ぐ建造物の作成をお願いしました。


 色々考えた結果、大陸の中央と沿岸都市アルテナの海域に門を作る案を挙げました。お互いの大陸を行商人が行き交い易くする事と、船で交易を行える様にする事で、同盟国としてより一層の発展を築き上げていけると考えたからです。


「先ずはその未完成品のデータを調べん事には返答は出来ぬが……まぁ期待しておけ。我が帝国の技術力は天翼人共にも劣らぬ。粗方、天空城からは調査対象となり得る物は既に回収済みだからな。古代鍵(エンシェントキー)については直ぐにでも解析に取り掛かる」

「本当ですか!?」

「貴様らには返しきれん恩義があるが、誇り高き我が帝国がいつまでも借りを作ったままでは民に示しがつかんからな。それだけだ」

「あの、有難うございます」


 深々とお辞儀をする私。本来はミズファ母様も交えて行うべき外交案件ですけれど、事後報告とします。娘の我儘を聞くのも親の役目なのですよ。


「何より、転移門が完成すれば、俺のストレスも解消出来るだろう」

「……はい?」

「今回起きた一連の騒動に置いて、貴様らの功績は余りにも大きい。この俺から皇帝の座を奪い取れる程にな。それに比べ、我が帝国の位階者(スペルム)共の不甲斐なさには呆れて物も言えん」

「そ、それは……仕方ないのではないでしょうか……」

「仕方ないでは済まされんのだ。魔道帝国・位階者(ラグナ・スペルム)はこの国の剣であり盾となるべき民の象徴だ。だが、多くの民を救ったのは帝国の象徴では無く、他国の者達だ。余りにもたるんでいる」


 その様に言って憤るクラウスさんですけれども……。アクアリースの面々は常軌を逸した存在ばかりですので、人間である位階者(スペルム)の皆様とは根本からして在り方が違い過ぎるのです。


 ユイシィスさんの手によって現れた魔物の相手にも、決して魔道帝国・位階者(ラグナ・スペルム)の皆様は後れを取ってはいませんでした。ただ、比較対象が余りにも高位なのです。クラウスさん自身もヤヨイさんと同等の強さは持っている方ですから、その辺りが理解出来ないとは思えないのですけれど。


「そこで、転移門が完成した暁には。貴様らの国との親善試合を行いたいと考えている」

「親善試合……ですか?」

「そうだ。アクアリースの高官は一人で万にも届く軍隊と渡り合えると聞く。その様な者が相手であれば、我が位階者(スペルム)共の鍛錬にはうってつけだ」

「あ……そう言う事でしたか。鍛錬の一環と言う事でしたら、ミズファ母様も反対はなさらないでしょう。強い方と戦える機会は中々ありませんから、むしろ大歓迎されると思います」


 クラウスさんは十分にアクアリースの強さを理解した上で、親善試合という形で位階者(スペルム)の強化試合を行いたい様です。私達アクアリース側は鍛錬するにも程よい相手に恵まれませんからね……。ですので、ヤヨイさんやミアさんの様な強い方との再戦が叶うなら、むしろ私の方からお願いしたいです。


「あの、クラウスさん。その親善試合で一つお願いがあるのですけれど」

「何だ、言ってみるがよい」

「エーテルナ魔道学院に魔道帝国・位階者(ラグナ・スペルム)にも引けを取らないご令嬢がお一人いらっしゃるのですが、是非その方も親善試合に加えて頂きたいのです」

「ほぉ、位階者(スペルム)百一位にも劣らぬ者となると、相当な実力が必要だが……その者の名は何と言う?」

「ミア・エインフェルトさんと言う方で、私のお友達でもあります」

「エインフェルト家の娘か。成程……それならば納得も良く」


 クラウスさんが納得される程という事でしたら、ミアさんの家系は相当な実力を持つ御家柄なのでしょうね。


「良いだろう、貴様の立っての願いだ。無下には出来ん」

「有難うございます!」

「だが、然るべき時に実力は見させて貰うぞ。名立たる支配層の娘と言えど、俺が気に入らなければそれまでだ」

「はい、構いません。ミアさんでしたら、必ずクラウスさんをご満足させられると確信してますもの」

「ふん、どうだかな……。大分話が逸れたが、転移門の作成は任せて置け」

「はい、良しくお願い致しますね」


 無事、転移門の作成を行って頂けそうで良かったです。でもまだ一つ懸念点があります。


「あの、その上で一つだけ」

「何だ」

「先程の親善試合は転移門が早期に作成される事を前提としていると思うのですけれど、まだ手付かずの状態でその様なお約束をされて良いのでしょうか」

「我が帝国が、たかがデータ流用物に無駄な時間を費やすとでも思っているのか? 貴様は何も心配する必要など無い。進捗があり次第連絡を入れてやる。貴様らが船で帰国するまでには必ずな」

「……はい!」


 クラウスさんの言葉は自信に溢れているのが見て取れました。恐らく転移門の作成にはそれ程の時間はかからないでしょう。これで私の願いだった大陸間移動の実現に一つ前進しました。


 -------


 クラウスさんとの謁見後の夜。


 お屋敷にミズファ母様とプリシラ母様がお泊りに来ています。寝間着姿で私のお部屋に集まっており、転移門と親善試合についてお二人にお話ししました。お部屋にはシャウラ母様とヤヨイさん、クリスティアさんもいらっしゃいます。クリムさんもいらっしゃいますが、お話し中に私のベッドで眠ってしまいました。


「ふむふむ、転移門に親善試合ですかー。うんいいんじゃないですか、僕も賛成です!」


 一通りお話しした結果、ミズファ母様が迷わず賛成して下さいました。次にプリシラ母様にもご意見を伺います。


「プリシラ母様は大陸間の転移と帝国との親善試合について、思う所は御座いますか?」

「特に無いわね。転移門はむしろ、アクアリースにとって大きな有益を産むのだから是非もないわよ。親善試合についても特に問題は無いわ。帝国にも中々の手練れが揃っているし、五姫達の鍛錬にもなるでしょうし。何より、私もヤヨイと戦ってみたいと思っていたのよね」


 寝巻姿でゆらゆらと体を揺らしながら嬉しそうにベッドに座ってお話を聞いているヤヨイさんが、「ヤヨイで宜しければいつでもお相手仕ります!」と元気に応えております。


「しかしじゃ、転移門なぞ本当に作れるのかのぅ」

「私も少し疑問ね。不特定多数の人間を通行可能とする転移門なんて、古代魔法具の領域すら超越しているわよ」


 転移門の作成は古代魔法具の申し子のお二人ですら疑問に思わせる程の物の様です。転移能力には必ず何かしらの魔力的制限が付き物ですが、古代鍵(エンシェントキー)にはそういった制限がないのです。恐るべきはユイシィスさんの技術力です。


 ただし一度転移場所を定めてしまうと、そこにしか移動できないという制約はありますけれどもね。


「私はクラウスさんとこの国の技術力を信頼しておりますよ」

「ミズキは随分とクラウスとこの国を気に入った様じゃな」

「はい、クラウスさんはこの大陸に来たばかりの私達を不審者扱いせずにお城に住まわせて下さいましたし、学院にも入れて下さいました。ユイシィスさんの計画を止めるにはこの国の皆様のご協力が無ければ成功しませんでした。もう、とってもとっても信頼しています」

「ミズキはほんとーに純粋ですねー」


 ミズファ母様が「そこが可愛いんですけど!」と言いつつ、私を抱き寄せて頭をなでてくださいます。


「後は、クラウス陛下からのお返事待ちね。理想は船で帰国する前に転移門が完成する事だけれど」

「そのような美味い話がある筈が無かろう。船を転移させる門となると、どれ程の人員と労力と魔道技術者が必要になるか見当がつかぬ。気長に待つしか無いじゃろ」

「ですよねー……。それでも僕はちょっと期待してたりするんですけどね」

「帰国準備が終わるまでまだ少しかかりそうだから、期待しても良いのでは無いかしら。食料が次々に大陸中から送られて来ているから搬入が終わらないのよ。……大体はミズファの収納魔法と私の血術空間(ブラッドスペース)に入れて置けるから、食料は貰い過ぎて困る事もないのだけれど」


 それに帰りは私も居ますから、大量の食料を新鮮なまま保管して置けます。一応保管領域にも限界はありますけれど、血術空間(ブラッドスペース)に入りきれなくなる事態は一生無いと思います。


 後はエルノーラさんやクオリアさん達を向こうの大陸に連れて行くお話もしておきませんと。メイニーさんを置いていく訳にはいきませんからね。この辺りは転移門次第となりますけれど。


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