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侵入者との面会

ディーレア王を先頭に全員は聖樹イレーヌの根の近くに入口がある地下牢へ向かう。


途中人目を避けるために色々な迂回路を周り、直線距離にすればそれほどでもない距離を20分かけて歩く。


私たちは聖樹が近づくたびに少し心配になり、何度もポケット内にある赤い大樹、もとい聖樹の子を確認する。


詳しい話はまだ聞かせてもらっていないが、ディーレア王が零した言葉から察するに、この大樹は目の前にある天を突かんばかりの巨大な聖樹の子株のようなものではないかと考えている。


何か凄い力を持っていそうなレアっぽい木だとは思っていたけれど、まさか神様が関係するような神聖なものだとは思はなかった。レア中のレアというやつだ。


ただ、大当たりかどうかはまだわからない。というより今は確実に大ハズレだ。私たちだけならまだしもディランたちを巻き込んでいる時点でハズレでしかない。


何もないことを祈りつつ、何やら厳重そうな扉が目に入ってきたので気持ちを切り替える。


「ここからは魔法の類が効力を激減させる領域に入る。問題ないかね?」


ディーレア王は特に私たちに目を向けてそう説明する。


やはりかなり警戒はしているのだろう。だが罠にはめるつもりも向こうにはないらしい。そうでなければあらかじめ説明しておく必要もないだろうし。どちらかというとこちらの出方を伺っているようにも思える。ここで引いて仕舞えば一気に信用を失うことになるだろう。


「大丈夫だと思います。私は特性上、魔法にて視覚を得ています。だからそれが失われる可能性もありますが、それでもルーナがいますので。」


そう言ってルーナに目を向ける。ルーナも小さく頷き、ディーレア王に視線を向ける。


「私が責任を持ってライムを支えます。」


「わかった。それでは急ぐとしよう。状況は芳しくないわけであるしな。」


ディーレア王はそう言うとすぐに門番に鍵を開けさせ、地下牢へと入っていく。


王に続いて中に入ると、切るのを忘れていた嗅覚に強烈な異臭が突き抜ける。カビ臭さだけではなく、汚物と血の匂いも混じっており、躊躇いもなく王が入って言ったことが信じられないくらいだった。


嗅覚の感度は切っていなかったと言ってもかなり弱くしていたのは確かで、普通のトイレくらいの臭いなら殆ど感じないほどの弱さだった。


つまりそれでもなお鼻がもげそうなほどの異臭を放つ場所に王という身分に着くものが易々と入って行ったということである。


ディランたちは流石に少しえずくくらいはしたものの、どうにか堪えてディーレア王とその付き人の後に続く。


私たちには耐えられないので嗅覚を完全にオフにし、ルーナの手を取ってついて行った。


地下牢の扉をくぐった瞬間、視界が妙に狭まるような感覚が襲う。


視界だけではない。触覚さえも鈍感になってしまったのかルーナの手の感触がよくわからない。


それほどでもない段差の階段。しかし私たちは一段降りた瞬間に小さくよろめいてしまった。


ひどく目眩がする。こんなことはこの世界に来て初めての経験だ。


「大丈夫ですか?」


ルーナは心配そうに声をかけてくれる。よろめく私たちの体をしっかりと抱きとめて。


(のーちゃん。これ、吐きそう。)


(胃がないから吐けないけど・・・確かに気持ち悪い。)


頭の中をじっくりかき混ぜられているような、不快な音をずっと聴き続けさせられているような。とにかく気持ち悪い。


「だ・・大丈夫・・・ではないです。けど・・行きます。」


嘘はつけない。というよりついても意味がないほどに体に現れている。しかしそれでも一緒に行きたい。エレアナと同じものを見ていたい。


「わかりました。しっかりつかまっていてください。」


ルーナが私たちの思いを汲み取るように、私たちの体が倒れないように掴んでいてくれる。


私たちもルーナに寄りかかるようにしながら、それでも自分の足でゆっくりと階段を降りていく。


下ではすでに階段を降り切ったものたちが待っていてくれている。申し訳なさが込み上げてくる。


やっと最後の段を降りる頃には少しましになってきた。


「お待たせして申し訳ありませんでした。もうすぐ慣れてくると思いますので、ここからは気にせずお進みください。」


「いや、勝手を起こされては困るからな。ゆっくりと進んでいくことにしよう。もっとも、ライム殿が何かすることはないかもしれないが。」


ディーレア王は少し安堵したような表情を浮かべている気がした。警戒したままであるのには変わりないが、それが幾分軽くなっているように思える。


やはり試していたということなのだろうか。


「この奥に件の侵入者がいる。10人ほど捕らえたうちの3人を尋問部屋に通してあるから、そのものたちと面会するがいい。」


そうしてやっと地下牢の奥にある小さな部屋に私たちは足を踏み入れたのだった。


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