嫌いなところ
(のーちゃんってさ。結構甘々だよね。)
レーンから離れた直後、急に美景がそんなことを言い出した。
(どういう意味?)
(友達。のーちゃんはさ、昔からすぐに友達作るなって話。)
いつもならすぐに核心を突く癖に、今回はかなりもったいぶった含みのある返事をする。
(結局何が言いたいの?)
(のーちゃんは私と友達になったときもそうだけど、小学校でも中学校でも高校でも、すぐにいろいろな友達を作ってたよね。)
(それがどうしたの?)
(のーちゃんはね、全く知らない人のところにもすぐに飛び込んでくるし、それが嫌だと思っていた人もすぐにそれになじんじゃう。本当にすごいと思うよ。)
なにか、イラつかせるような、あおるような言い方をしてくる。
こういう時はたいてい怒っているか拗ねているときだ。
素直じゃない。面と向かって言わない。でも陰湿とも思えるほどにしつこい。
(のーちゃんは知ってる?のーちゃんはね、結構モテてたんだよ。)
(何言ってんの?私なんか全然モテないヲタクだたんだけど。)
(・・・気づいてた?私がふった男の子、だいたい全員がのーちゃんに慰められてたの。)
(いや、そりゃ親友にスッパリふられた相手を同情はしてたけど。)
(のーちゃんはね、恋愛対象とか関係なく、男の子が接する唯一の女の子だったの。)
(それって失礼じゃない?)
(別に魅力がないって意味じゃないよ。でもそういうのじゃなくて、もっと違う何かを感じてたんだと思うよ。男子だけじゃない。女子だってみんなのーちゃんの事が好きだった。)
(なんだかむず痒いこと言ってるけど、それがさっきのレーンとの話に何が関係あるの?)
(すぐに人の心に踏み入って、そして相手を理解した気になって、すぐに友達って言って。そういうのやめた方がいいよ。)
やっと、美景のドロッとした感情の一部を読み取れた気がする。
そう、これはたぶん嫉妬だ。いや、違うのかな。駄々っ子のわがままのような、そんなかわいらしいものだ。
さすがに子供のような甘いものではないけれど、その分質の悪い感情を私に向けているのだ。
(美景のそういうところ、私は嫌いだよ。)
(私も、のーちゃんのそういうところが大っ嫌い。)
美景の事は好きだ。唯一何もかもを話すことができる親友だ。
けれど彼女のこういうところはどうにも好きになれない。
(でも、私はのーちゃんが大好きだから。のーちゃんのやること、話すことを邪魔しないよ。全力でサポートもするし、こちらからいい案を考えもする。けどね、忠告はする。のーちゃんは絶対にいつか、そういう考え方をしていた自分に後悔するよ。)
冷たい、温度のないその言葉は、私の心を突き刺す鋭い刃で。それでも私は頑固だから、美景の言い分を肯定できなかった。
(レーンの本音は聞けた。どうしたいのかも聞いた。どうすべきなのかも考えた。だから私は後悔なんてしないよ。)
私は暗い感情をはねのけるように、力強く一歩を踏み出し、そのままの勢いで孤児院の中に入った。
もうすぐディラン達が帰ってくる。そしてレーンを痛めつけた犯人を見つけることになるかもしれない。
けどきっとレーンに私の言いたかったことが伝わるはず。復讐なんてしても、きっといいことなんてないって、その先はないって伝えられるはずだから。




