これが私たちの真の力よ!
通路は人ひとりで入る分には広くも狭くもないといった感じの洞穴で、採掘場のように木で地盤を支えているようないかにもな造りの通路だった。
しばらく階段を下っていくと、私たちが教えた通りの頑丈そうな木の扉が道をふさいでおり、上と真ん中と下のほうにこれまた頑丈で重そうな鋼鉄の錠がかけられていた。
当然鍵もかけられていて、これを開けないことには先に進めないようになっていた。
ちなみに隙間もなく、鍵穴から向こう側を調べられないかなと触手を入れてみたけれど、貫通しているわけではないらしくて向こう側の調査はできていない。
つまりここから先は未知の領域。
こうなってしまったら私たちの出番はなく、ディランたち冒険者の出番となる。
そしてこの錠にトラップがないかを調べて開ける役割はポートにあるらしい。
ポートが慎重に扉に触れて、何もないことを確かめると今度は扉に耳を当てて音を探る。
中から音がしないことを確認した後は錠に手を触れ、まず罠がないかどうかを目視だけで判断。見当たらなかったところで今度は専用のツールを取り出して、錠の中を調べる。
「こりゃ相当古いもんだな。現存してる錠の構成とは全く違う複雑な造りだ。中身に期待してもいいかもしれないな。」
ポートは感心したような闘志が沸き立つような非常にいい笑顔でそう言うと、めったに見ないような嬉々とした手つきで開錠作業を行う。
ポートのこの言葉と態度にみんなの顔にも期待による笑顔が表れ、ポートが扉を開けるのを今か今かと待っている。
ディランでさえワクワクして少年のような瞳をしてキラキラと輝いている。
いつにも見ない年相応な表情を垣間見てほっこりする私たちも、内心ドキドキしていた。
この世界にきてはじめての冒険。
モンスターに襲われたり落盤して溶岩煮えたぎる危険地帯に落っこちたりしたけど、今ではそれもいい思い出。
今目の前の扉が開き、中にあるものが期待通りのものであったとき、私たちのこの初めての冒険はハッピーエンドに終わる予感さえする。
世のトレジャーハンターはこのひと時を体感するために日夜世界中を飛び回っているに違いない。
そうしてみんなが期待に胸を膨らませ、いよいよ最高潮に達しようとしたとき、ポートが最後の鍵を開錠果たした。
「開いたぜ。開けた途端にトラップが発動するかもしれねえから、少し下がっておいてくれ。あと魔法で防御も頼む。」
「わかりました。」
ポートを残して少し下がり、続いてルーナがポートと私たちの周りに障壁を展開させる。
それを確認したポートは慎重に扉を開いていく。
無事扉を全開することができた後は、恐る恐るポートが先行して中に入り、様子を確認する。
しばらくポートが出てくるのを待っていたディランたちだが、ポートが中から出てきてサインを出すのを見て緊張の糸を緩める。
「何もトラップはなかった。大方この場所に来れるやつがそうそういないのをいいことに三重の鍵だけで大丈夫だと思ったんだろうな。」
ポートが妙ににやにやした表情でそういうと、そそくさと部屋の中に入って行ってしまった。
いったい何があったのか気になったみんなはすぐに扉をくぐり、真っ暗な部屋にルーナの魔法で光をともす。
周囲が照らし出された瞬間。私たちは目を覆ってしまいそうになるくらいのまばゆい反射光を浴びて、一斉に歓声を上げた。
部屋の中にあるそれはよくある金銀財宝を溢れさせた宝箱を筆頭に、ありとあらゆる工芸品や美術品が飾られており、装飾過多な宝剣や、名匠が作ったと思われる武具防具の数々。ほかにも様々な財宝が所狭しと部屋中に置かれ、並べられ、積み重ねられていたのだ。
それこそ山のように存在するそれらを眺め、みんな呆然となりながらも沸き立つ心に身を任せて思い思いにお宝を手に取って眺める。
みんな元貴族なのに、お宝とかそういうのに心沸き立つものなのか。
こんなものなら王族であるディランなら見慣れているとばかり思っていたのに、今も宝剣を眺めて目を輝かせている。
ルーナはちょっとほかのみんなとは違って古い本を夢中で読んでいるけど、レナもポートもお宝に夢中だ。
そしてしばらく興奮したみんなの様子を微笑ましく見ていると、だんだんと熱が収まってきたのかみんなお宝をどうやってどれくらい持ち出そうか検討しだした。
「リングルイのみんなにもおすそ分けしなきゃだしね。」
「けどあんまり持ちすぎると動けなくなっちまうしな~。」
「この武器や防具なんかは是非とも持ち帰りたいものだがな。今の剣はボルカヌアとの戦闘で少し欠けてしまったしな。」
「この書物たちは全部読み終わるまで、いえ、読み終わっても持ち帰りたいです。」
みんなが相談している間に私たちはひたすら財宝をポケットに入れていく。どうせいずれは気づくことだし構いはしない。
しばらく2人でせっせと収納していると、ようやくみんなが私たちの行動に気づいたようで、みんなひらめいたとばかりに私たちの周りに駆け寄ってくる。
「もしかして全部持って帰れる?」
レナの期待のこもった言葉にグーサインを出して答えると、みんなはこれ幸いと奥のほうから順にお宝を持ってき出した。
みんなが私たちの周りにお宝を持ってきてくれるもんだから予定よりも随分と早くすべてのお宝を収納し終え、今に至るということだ。
「ライムのおかげで歴史的財産を全て保護することができました。ありがとうございます。」
ルーナは今宝部屋から持ち出した本を読んで至福顔となっている。幸せそうで何よりです。
ディランは同じく部屋から頂いた名匠の一品であろう赤い刀身の片手剣の手入れをしている。
ポートは様々な種類の金貨や宝石を眺めて金勘定をしているし、レナは料理をしながらたまに胸元に光る緑色の宝石をあしらったネックレスを見てニコニコしている。
本当に貴族かこの人たちは。
いや、でも小さいころから冒険者をしていたっていうし、金銭感覚はむしろ平民並みなのかも。
それにただの宝物じゃなくて私たちが必死に頑張った結果として得られた物っていうこともあるし、そういう思い出価格てきなものがあるのかもしれない。
私たちはそもそもお金を持っていたって仕方のない状態なので、それほど感動することはなかった。
どちらかというと、やっとみんなのために活躍できたと感じて胸をなでおろしているような感じだ。
私たちの場合はどれだけ物を収納しても重くならないし、移動にも支障はない。
それはつまり小山ほどの金銀財宝を軽々と一度に持ち運ぶことができるというみんなからしたらチートもいいところな能力なので、私たちはみんなのカバン的なポジションが一番活躍できるのではないだろうか。
移動できて、癒しにもなって、時には戦ったり、ベッドになったりする大量に物が入るカバン。
何それ私もほしい!
(前世でそれ持ってたら一人で貿易できるね。)
(それって普通に考えてすご過ぎるね。)
大きな貨物船が必要な貿易を一匹の小さなスライムが可能とするとか儲けが半端じゃないだろう。
それも貨物船一隻よりもはるかに速く、大量に持ち運べるのだからもはや国際会議ものだろう。




