秘儀!ウォーターベッド!
ボルカヌアとの死闘を終えた私たちはひとまずこの最奥から抜け出ることができる最有力候補の洞窟へと向かって歩き出すことになった。
ただ、ディランだけは普通に歩くことすら困難なほど疲労がたまっており、ポートが肩を貸してルーナが魔法で補助する形で歩かせている。
先ほどの光の剣の一撃は相当に体力を消費する技のようで、一撃必殺の状態でなければ使用してはいけないほどの大技らしい。
ただボルカヌア相手であれば溜める時間と命中させられる状況を作り出すだけで仕留められるほどの威力なんだとか。
実際に全く無傷だった首を一刀両断したのだからその威力にもうなずける。
そんなわけで初めてディランが疲れた表情を見たことで、この人も同じ人間なんだなと思いつつカバンで揺られ、ようやく目的の洞窟までこれた。
「やっと一息つくことができますね。」
「魔法を解除してもそれほど熱くないし、ディランの調子が戻るまでここで休むとしようぜ。」
「つかれた~。早くお風呂入りたいよ~。」
みんなも溶岩に落ちる心配から解放されて一気に疲れがあらわになったようだ。
熱風が来ない少し広い空間まで進んだルーナたちはみんな荷物を降ろして倒れるように寝転がり、思い思いに言葉を漏らす。
(みんなお疲れだね。)
(私たちは全く疲れないけどね。)
あれほどの緊張の場面の連続で唯一疲れていない私たちは、この一体感を感じることができないさみしさを感じていた。
疲れないということは生死をかけた場面ではメリットがとてつもなく大きく、旅に出るという意味では歓迎すべきものではある。
しかし、何かをやり遂げたときの脱力感や疲労感を感じることができないということは、すなわち共にした人たちと共感できないということでもある。
それはとても寂しいことであり、せっかくの冒険に水を差されたような感じがした。
(疲れているみんなに何かしてあげられないかな?)
(う~ん。地面に寝転がってたらあんまり疲れが取れないと思うし、私たちが下になってあげるとかは?)
(それはいいね!)
美景の提案により、私たちはみんなの体の下に薄く伸ばした体を滑り込ませていき、みんなの体が全部乗ったところを見計らって徐々に厚みを持たせていく。
(これぞ秘伝!ライム式ウォーターベッド!)
みんなの体が地面から完全に離れるほど厚みを持たせてから形状を固定して反応を見てみることにする。
「すご~い。気持ちいい!」
「これはなんか今までにない寝心地だけど、悪くはなねえな。」
「心配をかけたな。ありがとうライム。」
「ありがとうございますライム。とても寝心地がいいですよ。」
みんなの反応は上々だ。
全員気持ちよさそうな表情をして私たちに体を預けてくれる。
みんなが眠ってしまっても大丈夫なように、今度は触手をこの先の通路に向けて這わせ、自作センサーを設置しておく。
何の変哲もない体を張ったセンサーなので何度でも使えるのがいいところだ。体の一部が持ってかれるかもしれないけど。
そうしてしばらくみんなの休憩に付き合うこと数十分。何もセンサーに引っかかることなく休憩を終えたディランたちは私たちに礼を言ってからベッドから降りた。
「よし。ライムのおかげでだいぶ疲れがとれたし、一気に外に出るとするか。」
「「「おう!」」」
こうして調子を取り戻したディランを先頭に、洞窟からの脱出を再開するのだった。




